2025/09/12

【読んでおきたい日本のミステリー小説42選】ドラマ化や映画化も多い人気ジャンルのおすすめをチェック!

謎解きが魅力のミステリー小説。日本でも人気のジャンルのひとつです。謎を解き、犯人を見つけ、事件を解決!これがミステリー小説の楽しみですが、それだけでないのもミステリー小説の魅力。凝ったトリックにハッとするのも、犯行動機につい感情移入してしまうのも、ミステリー小説の醍醐味です。

日本のミステリー小説の魅力とは?

ページを捲るたびにドキドキ・ワクワクが加速していくミステリー小説。日本のミステリー小説はドラマや映画など、実写化作品も多い人気のジャンルです。ミステリー小説は犯人探しや事件解決に至るまでの謎解きが魅力ですが、凝ったトリック、人間ドラマ、お馴染みの名探偵や刑事や弁護士が活躍するシリーズものや、結末にゾクっとするどんでん返しや、スカッとする幕引きなど、さまざまな楽しみ方ができるジャンルです。実は驚くほど種類が多いミステリー小説の世界から読んでおきたいおすすめの“日本”のミステリー小説をご紹介します!

読んでおきたい日本のミステリー小説42選

『爆弾』

呉勝浩(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

自称・スズキタゴサク。取調室に捕らわれた冴えない男が、突如「十時に爆発があります」と予言した。直後、秋葉原の廃ビルが爆発。爆破は三度、続くと言う。ただの“霊感”だと嘯くタゴサクに、警視庁特殊犯係の類家は情報を引き出すべく知能戦を挑む。炎上する東京。拡散する悪意を前に、正義は守れるか。

「このミステリーがすごい! 2023年版」(宝島社)、「ミステリが読みたい! 2023年版」(ハヤカワミステリマガジン2023年1月号)国内篇2冠の第167回直木賞候補作。読み進めるにつれ、自称・スズキタゴサクの謎が深まり、ページをどんどん捲りたくなる一冊。ピンと張り詰めた緊張感に包まれながら堪能したい物語です。山田裕貴主演、伊藤沙莉、染谷将太、佐藤二朗共演で実写映画化。2025年10月31日公開。

『盤上の向日葵(上)』

柚月裕子(著)
出版社(レーベル):中公文庫

平成六年、夏。埼玉県の山中で白骨死体が発見された。遺留品は、名匠の将棋駒。叩き上げの刑事・石破と、かつてプロ棋士を志した新米刑事の佐野は、駒の足取りを追って日本各地へと飛ぶ。折しも将棋界では、実業界から転身した異端の天才棋士・上条桂介が、世紀の一戦に挑もうとしていた――。

殺人事件のキーワードは将棋の駒。将棋の知識があればより楽しめる作品ですが、将棋の知識がなくてもグイグイとミステリー展開に引き込まれていきます。事件を追う刑事の一人がプロ棋士を断念しているという点も将棋の世界の理解度を高めてくれる一因に。辛い境遇ながら将棋にのめり込む少年と老人の物語も胸を打つ!2019年9月には連続ドラマ化され、2025年10月31日より映画版が公開。

『火喰鳥を、喰う』

原浩(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川ホラー文庫

信州で暮らす久喜雄司に起きた二つの出来事。ひとつは久喜家代々の墓石が、何者かによって破壊されたこと。もうひとつは、死者の日記が届いたことだった。久喜家に届けられた日記は、太平洋戦争末期に戦死した雄司の大伯父・久喜貞市の遺品で、そこには異様なほどの生への執着が記されていた。そして日記が届いた日を境に、久喜家の周辺では不可解な出来事が起こり始める――。

2020年、『火喰鳥』で第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞・大賞を受賞した原浩が同作を改題した本作でデビュー。ホラー×ミステリーの融合が素晴らしいと評される本作には、サスペンス、SF、ファンタジー要素もあり。読みながら映像が浮かびゾクゾク感が味わえます。水上恒司×山下美月×宮舘涼太(Snow Man)競演の実写映画は2025年10月3日公開。

『宝島(上)』

真藤順丈(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

しのびこんだ米軍基地で突然の銃撃。混乱の中、故郷(シマ)いちばんの英雄が消えた。英雄の帰還を待ち望みながら沖縄(ふるさと)を取り戻すため立ち上がる、グスク、ヤマコ、レイ。警官、教師、テロリストとなった幼馴染たちは、米軍統治下の時代のうねりに抗い、したたかに生き抜こうとする。

圧倒的熱量を浴びながら読み進められる本作は、第160回直木賞、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞の三冠を達成。なぜみんなの英雄・オンちゃんは姿を消さなければならなかったのか。沖縄特有の言い回しに慣れるまで少し時間はかかるかもですが、真相を探るべく読み進めたくなる一冊。フィクションでありながらも知ることの大切さを考えさせられます。妻夫木聡主演、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太共演で実写映画化。2025年9月19日公開。

『夜の道標』

芦沢央(著)
出版社(レーベル):中公文庫

一九九六年、横浜市内で塾経営者が殺害された。事件発生から二年、被疑者である元教え子の足取りは今もつかめていない。殺人犯を匿う女、窓際に追いやられながら捜査を続ける刑事、そして、父親から虐待を受けている少年。それぞれの守りたいものが絡み合い、事態は思いもよらぬ展開を迎える。

第76回日本推理作家協会賞受賞作。登場人物の描写がとても丁寧で読み応えを感じながら物語に誘われていきます。人は見えている一面では理解できない多面性を持つことを痛感させられます。ドラマティックにせず、どちらかといえば地味な雰囲気を漂わせながらの展開、まるでパズルのように殺人の動機が解き明かされていく過程に引き込まれます。

『最後の鑑定人』

岩井圭也(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫

かつて科捜研のエースとして「彼に鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できない」と言わしめ、「最後の鑑定人」として名を轟かせた土門誠はある事件をきっかけに、科捜研を辞職。新たに民間鑑定所を立ち上げた土門のもとには次々と不可解な事件が持ち込まれる。いつも同じ服、要件しか話さないという一風変わった合理主義者でありながら、その類まれなる能力で、難事件を次々と解決に導いていく――。

孤高の天才鑑定人・土門誠の華麗なる事件簿。依頼人のバリエーションが豊富で土門の天才ぶりがより際立ちます。「科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間です」のセリフがとても印象的。分析方法についても説明もあるのでより理解が高まるのもGOOD!藤木直人主演の連続ドラマは2025年7月に放送。

『朽ちないサクラ』

柚月裕子(著)
出版社(レーベル):徳間文庫

米崎県警平井中央署生活安全課が被害届の受理を引き延ばし、慰安旅行に出かけた末に、ストーカー殺人を未然に防げなかったと、新聞にスクープされた。県警広報広聴課で働いて4年、森口泉は、嫌な予感が頭から離れない。親友の新聞記者、千佳が漏らしたのか。「お願い、信じて」そして、千佳は殺された――。県警広報課事務の私に、何ができる?

「孤狼の血」シリーズを手がけた作家・柚月裕子の警察ミステリー小説。主人公の森口泉は刑事ではないため、なかなか事件が解決する感じが目に見えてこない部分はありますが、中盤以降、スピード感が徐々に出てきて犯人に迫っていく展開にワクワク期待が高まります。スッキリ解決!といった結末でないところに闇深さとリアルを感じます。2024年、主演・杉咲花、萩原利久共演で実写映画化。

『法廷遊戯』

五十嵐律人(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

法曹の道を目指してロースクールに通う、久我清義と織本美鈴。二人の過去を告発する差出人不明の手紙をきっかけに不可解な事件が続く。清義が相談を持ち掛けたのは、異端の天才ロースクール生・結城馨。真相を追う三人だったが、それぞれの道は思わぬ方向に分岐して……。

メフィスト賞受賞の現役弁護士が描くリーガルミステリー。リアルな法律描写、審査手続きや休廷中の様子までをリアルに知ることができます。そこに「むこゲーム」という私的制裁を行うゲームといったキーワードがプラスされ、一気にエンタメ性を増します。共感できる登場人物を探せるかどうかもポイントかも。2023年永瀬廉主演、杉咲花、北村匠海共演で実写映画化。

『ハヤブサ消防団』

池井戸潤(著)
出版社(レーベル):集英社文庫

東京での暮らしに見切りをつけ、亡き父の故郷であるハヤブサ地区に移り住んだミステリ作家の三馬太郎。地元の人の誘いで居酒屋を訪れた太郎は、消防団に勧誘される。迷った末に入団を決意した太郎だったが、やがてのどかな集落でひそかに進行していた事件の存在を知る。果たして連続放火事件に隠された真実とは?

第36回柴田錬三郎賞受賞作。池井戸作品初の“田園”小説として、「小説すばる」連載中から話題に。スピーディーな展開に惹き込まれ、気づけば池井戸ワールドの中へ。のどかな田舎で巻き起こるミステリー。田舎ならではの人間関係が絡み、怪しさが増します。2023年、中村倫也主演で連続ドラマ化。

『シャイロックの子供たち』

池井戸潤(著)
出版社(レーベル):文春文庫

とある銀行の支店で起きた現金紛失事件。女子行員に疑いがかかるが、別の男が失踪!?“叩き上げ”の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、上がらない成績……事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤。銀行という組織を通して、普通に働き、普通に暮らすことの幸福と困難さを鮮烈に描いた傑作群像劇!

こんな銀行(会社)では働きたくないなぁなどと人間関係や業務内容を見ながら読み進めていくと後半に一転二転三転といった展開が待ち受けています。そしてラストは読者に委ねるようなミステリアスな結末で締めくくる感じもよき。阿部サダヲ主演、上戸彩、玉森裕太共演で2023年に実写映画化。

『ガラパゴス(上)』

相場英雄(著)
出版社(レーベル):小学館文庫

警視庁捜査一課継続捜査担当の田川信一は、メモ魔の窓際刑事。同期の木幡祐司に依頼され、身元不明相談室に所蔵されている死者のリストに目を通すうち、自殺として処理された案件を他殺と看破する。不明者リスト902の男の発見現場である都内竹の塚の団地を訪れた田川と木幡は、室内の浴槽と受け皿のわずかな隙間からとあるメモを発見する。入念な聞き込みにより不明者リスト902の男は沖縄県宮古島出身の派遣労働者・仲野定文と判明。田川は、犯人逮捕の手掛かりを得るため、宮古島へ飛ぶ。

食品偽装に迫った『震える牛』の続編となる本作では、派遣労働者の闇に迫る物語が展開。SNSでの情報収集の描かれ方もとても興味深い社会派ミステリー。足を使った聞き込みでグイグイと真相に迫っていく田川警部の捜査方法は臨場感ありで引き込まれます。2022年、織田裕二主演でドラマ化。

『新参者』

東野圭吾(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

日本橋の片隅で一人の女性が絞殺された。着任したばかりの刑事・加賀恭一郎の前に立ちはだかるのは、人情という名の謎。手掛かりをくれるのは江戸情緒残る街に暮らす普通の人びと。「事件で傷ついた人がいるなら、救い出すのも私の仕事です」。大切な人を守るために生まれた謎が、犯人へと繋がっていく。

殺人事件を軸にした連作短編のような構成で、まるで日常ミステリーのようにサクサク読み進められるのもポイント。徐々に明らかになっていく殺人事件の背景にゾクゾク。人情ものというベースがありつつも、やっぱりしっかりミステリーなのはさすが!2010年、阿部寛主演で連続ドラマ化。

『容疑者Xの献身』

東野圭吾(著)
出版社(レーベル):文春文庫

天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、2人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。

ガリレオシリーズ初の長篇で直木賞受賞作。最後の最後までトリックが分からず、物語にどんどん引き込まれていきます。湯川がその才能を認めた石神。天才物理学者と天才数学者の知恵比べに興奮しつつ、石神の無償の愛の形に涙が止まりません。主演の福山雅治が通称”ガリレオ”こと湯川学を演じる人気シリーズで2008年に実写映画化。共演は柴咲コウ、堤真一、松雪泰子。

『名探偵の掟』

東野圭吾(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

完全密室、時刻表トリック、バラバラ死体に童謡殺人。フーダニットからハウダニットまで、12の難事件に挑む名探偵・天下一大五郎。すべてのトリックを鮮やかに解き明かした名探偵が辿り着いた、恐るべき「ミステリ界の謎」とは?

本格推理の様々な“お約束”を破った、痛快傑作ミステリー。”お約束”を茶化しながら事件を解決していく様子に最初は戸惑うものの、様々な種類の本格ミステリーがネタになっているところに、ツッコミを入れつつ楽しめるように変化していきます。ボケとツッコミのような名探偵・天下一と大河原警部のコンビもクセになる?!2009年、松田翔太主演で連続ドラマ化。

『模倣犯(一)』

宮部みゆき(著)
出版社(レーベル):新潮文庫

墨田区・大川公園で若い女性の右腕とハンドバッグが発見された。やがてバッグの持主は、三ヵ月前に失踪した古川鞠子と判明。「犯人」は「右腕は鞠子のものじゃない」という電話をテレビ局にかけたうえに、鞠子の祖父・有馬義男にも接触をはかった。ほどなく鞠子は白骨死体となって見つかる――。

未曾有の連続誘拐殺人事件を重層的に描いた現代ミステリーの金字塔。シリーズ作品ということもあり、1巻からとても丁寧に物語が進んでいく印象があるので、世界観をしっかり理解し、ハマっていくことができます。真相に近づきそうで先は長い。犯人の狙いにはまっていく刑事たちが踊らされていく様子に犯人の手強さを感じます。2002年に森田芳光監督で映画化、2016年にドラマ化。

『怒り(上)』

吉田修一(著)
出版社(レーベル):中公文庫

若い夫婦が自宅で惨殺され、現場には「怒」という血文字が残されていた。犯人は山神一也、二十七歳と判明。しかし、その行方は杳として知れず捜査は難航していた。事件から一年後の夏――。千葉の港町で働く槙洋平・愛子親子、東京の大手企業に勤めるゲイの藤田優馬、沖縄の離島で母と暮らす小宮山泉の前に、身元不詳の三人の男が現れた。

ミステリーとしての面白さにプラスして、様々な社会の問題について深く考えさせられる一冊。すべての登場人物が怪しく感じてしまう描写にハラハラ。やりきれない描写もありますが、目を背けてはいけないという気持ちで向き合いたくなる物語。”怒り”という感情の持つエネルギーの高さ、それが向けられる先などグルグルと考えながらどんどん読み進めてしまいます。2016年、李相日監督が映画化。主演は渡辺謙、共演には森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮﨑あおい、妻夫木聡らが集結。

『ジョーカー・ゲーム』

柳広司(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫

”魔王”――結城中佐の発案で、陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ養成学校”D機関”。その異能の精鋭達が、緊迫の諜報戦を繰り広げる!

吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞受賞のスパイミステリー。異能というだけあって、登場人物が超人的なところにどっぷりと世界観にハマれる要素あり。スパイものは派手なアクションなども多いですが、本作は静かに佇む感じがとてもスマート。といいつつ、しっかりアグレッシブなシーンも出てくるのでギャップも楽しめます。2009年、亀梨和也×深田恭子×伊勢谷友介共演で実写映画化。

『黄金を抱いて翔べ』

髙村薫(著)
出版社(レーベル):新潮文庫

銀行本店の地下深く眠る6トンの金塊を奪取せよ! 大阪の街でしたたかに生きる6人の男たちが企んだ、大胆不敵な金塊強奪計画。ハイテクを駆使した鉄壁の防御システムは、果して突破可能か?変電所が炎に包まれ、制御室は爆破され、世紀の奪取作戦の火蓋が切って落とされた。

著者・髙村薫のデビュー作で日本推理サスペンス大賞受賞作。ハードボイルド要素強めながらもちょっぴりロマンチックな雰囲気も漂う一冊。描写がとにかく丁寧で細かいので、小説でも地下に潜り込み金塊を強奪しようとする映像が浮かびやすい。2012年、主演・妻夫木聡、浅野忠信、チャンミン(東方神起)共演で実写映画化。

刑事 雪平夏見シリーズ『推理小説』

秦建日子(著)
出版社(レーベル):河出文庫

会社員、高校生、編集者……面識のない人々が相次いで惨殺された。事件を繋ぐのは「アンフェアなのは、誰か」と書かれた本の栞のみ。そんな中、出版社に届けられた原稿には事件の詳細と殺人予告、そして「事件を防ぎたければ、この小説の続きを落札せよ」という要求が書かれていた……。

「刑事・雪平夏見シリーズ」の第1作目。テンポよく進んでいく物語と雪平のカッコよさと登場人物のユニークな個性にどんどん吸い込まれていきます。テレビドラマ、映画化された「アンフェア」シリーズで、本作は篠原涼子主演、瑛太(現・永山瑛太)共演で連続ドラマ化(ただし、第5話以降はドラマ・映画オリジナルのシナリオ)。

『ロートレック荘事件』

筒井康隆(著)
出版社(レーベル):新潮文庫

夏の終わり、郊外の瀟洒な洋館に将来を約束された青年たちと美貌の娘たちが集まった。ロートレックの作品に彩られ、優雅な数日間のバカンスが始まったかに見えたのだが……。二発の銃声が惨劇の始まりを告げる。一人また一人、美女が殺される。邸内の人間の犯行なのか?アリバイを持たぬ者は?動機は何?

トリックの解説付きなので、最後まで読み進めた後に、伏線などの細かな答え合わせもできるため、初心者にもおすすめです。挿絵も入り、楽しく読み進められます。

『異邦の騎士 改訂完全版』

島田荘司(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

失われた過去の記憶が浮かび上がり、男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか。やっと手にした幸せな生活に忍び寄る新たな魔手。名探偵・御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリーを著者が精魂こめて全面加筆した改訂完全版です。

国内だけでなくアジアを中心に海外でも作品の多くが翻訳されベストセラーになっている島田荘司が描く名探偵・御手洗潔シリーズです。御手洗潔の最初の事件を描いているのでここから読んでもよい?とも思ってしまいますが、シリーズとしては発売順に読むのがおすすめです。

『すべてがFになる THE PERFECT INSIDER』

森博嗣(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む!

タイトルの意味を知りたくなり読み進める1冊。論文っぽい感じの構成も読みやすくてGOOD!密室トリックもあり、犀川博士&萌絵のコンビっぷりも楽しく、理系っぽさを感じる物語ですが、没入感もあって科学への興味も湧きまくります。

『アヒルと鴨のコインロッカー』

伊坂幸太郎(著)
出版社(レーベル):東京創元社

大学入学のため引っ越してきたアパートで、最初に出会ったのは黒猫、次が悪魔めいた長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。標的はたった一冊の広辞苑だった――。

現在と2年前に起きたペット惨殺事件がリンクしていく物語。次第に謎が解けていく様子にページを捲る手が止まりません。そして終盤に待つどんでん返し。伊坂幸太郎ワールドにハマれる一冊は、2007年に濱田岳&瑛太(現:永山瑛太)主演で映画化されています。

『探偵ガリレオ』

東野圭吾(著)
出版社(レーベル):文春文庫

突然、燃え上がった若者の頭、心臓だけ腐った男の死体、池に浮んだデスマスク、幽体離脱した少年……。警視庁捜査一課の草薙俊平が、説明のつかない難事件にぶつかったとき、必ず訪ねる友人がいる。帝都大学理工学部物理学科助教授・湯川学、常識を超えた犯罪と謎に天才科学者が挑む。

人気ミステリーシリーズの記念すべき第1作目。ガリレオこと湯川教授の初登場作は短編集になっていて読みやすさも魅力。短編でも物理学による鮮やかな謎解きをしっかりと堪能できます。湯川教授の論理的思考とひねくれた性格のコンビネーションに笑えます。

『迷路館の殺人』

綾辻行人(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

奇妙奇天烈な地下の館、迷路館。招かれた4人の作家たちは莫大な“賞金”をかけて、この館を舞台にした推理小説の競作を始めるが、それは恐るべき連続殺人劇の開幕でもあった――。

周到な企みと徹底的な遊び心でミステリファンの心を掴んだシリーズ第3作の新装改訂版です。館シリーズはどんでん返しと舞台となる印象的な“館”でお馴染み。本作に登場する館は地下にある館。作家が集まり“作中作”も描かれ、ミステリー好きを楽しませてくれます。騙されるのって気持ちいい!と思わずニヤリとしてしまいます。

『ハサミ男』

殊能将之(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる……。

犯人推理をしながらどんどん読み進められます。このハラハラドキドキの高揚感がミステリー小説の醍醐味!と再確認させられる一冊。読み終わり、騙されたー!とある種の爽快感を味わった後、またすぐに読み返したくなってしまいます。2007年に豊川悦司&麻生久美子主演で映画化。

『葉桜の季節に君を想うということ』

歌野晶午(著)
出版社(レーベル):文春文庫

かつては探偵事務所で働き、いまは「何でもやってやろう屋」を自称して気ままな生活を送る「俺」成瀬将虎。ある日、高校の後輩のキヨシの頼みで、彼が密かに惚れている久高愛子の祖父の不審死と、高額で布団や健康食品を売りつける蓬莱倶楽部の調査を引き受ける。そして同日、駅のホームで飛び込み自殺しようとした女・麻宮さくらを助けたことで、運命の歯車が回り始める――。

日本推理作家協会賞、本格ミステリ大賞ダブル受賞&「このミステリーがすごい!」「本格ミステリベスト10」で第1位という人気作なので、結末だけは知っている……という方も意外と多いかも。可能な限り、情報を入れずに一気に読み進めるのがおすすめ。人の思い込みについて考えさせられます。

『儚い羊たちの祝宴』

米澤穂信(著)
出版社(レーベル):新潮文庫

夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件が描かれる短編集。

まず特徴的なのは飄々とした語り口。ちょっとブラックな雰囲気が漂い、ゾクゾク、ゾワゾワな気分にしてくれます。優雅なのに邪悪で悪趣味。最後に明かされる残酷な真実。ゾッとするオチ。だけどなぜか美しいとも思ってしまう、さまざまな感情が入り混じる物語です。

『告白』

湊かなえ(著)
出版社(レーベル):双葉文庫
(C) 湊かなえ/双葉社

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく――。

衝撃なラストを巡り物議を醸した湊かなえのデビュー作。人間の心理を深く描いたミステリー小説で、最後のどんでん返しは鳥肌もの。世の中で一番怖いのって人間なのかもと考えさせられます。2010年、松たか子主演で映画化。

『双頭の悪魔』

有栖川有栖(著)
出版社(レーベル):東京創元社

四国山中に孤立する芸術家の村へ行ったまま戻らないマリア。英都大学推理研の一行は大雨のなか村への潜入を図るが、ほどなく橋が濁流に呑まれて交通が途絶。川の両側に分断された江神・マリアと、望月・織田・アリス。双方が殺人事件に巻き込まれ、各々の真相究明が始まる。

学生アリスシリーズ第3弾となる本作には700Pに及ぶ長編の中に、3回の読者への挑戦状が組み込まれています。挑戦状が出てきたところで物語の世界観からちょっと抜け出しひと息。もちろん、挑戦状に頭を使うのですが、リフレッシュして再び物語に没頭できるのもポイント。

『リラ荘殺人事件』

鮎川哲也(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫

リラ荘を七人の芸大生が訪れた翌日から、殺人鬼の活動は始まった。老人が殺され、死体の横には学生のコートと、スペードのAが。それを機に別荘で次々と起こる殺人、凶悪無残な殺人鬼の正体とは?

ケータイがない時代のミステリーなので、現代の感覚で読むとツッコミどころもなきにしもあらずですが、殺人現場に残されたトランプ、トリック、アリバイなど完成度の高さはミステリー好きの心をくすぐります。探偵来た!と思ったらまさかの展開もあるのも興味深いです。タイトルからクローズドサークルものを想像する人も多い作品です。

『姑獲鳥の夏』

京極夏彦(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

東京・雑司ヶ谷(ぞうしがや)の医院に奇怪な噂が流れる。娘は20箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。文士・関口や探偵・榎木津(えのきづ)らの推理を超え噂は意外な結末へ――。

「この世には不思議なことなど何もないのだよ」。古本屋にして陰陽師(おんみょうじ)が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第1弾。京極堂のまわりくどい話がクセになる!何度読んでも初めて読むような新鮮味が味わえるのも魅力です。映像化不可能といわれた原作は2005年に京極堂役に堤真一を迎えて映画化されています。

『名探偵に薔薇を』

城平京(著)
出版社(レーベル):東京創元社

始まりは、各種メディアに届いた『メルヘン小人地獄』だった。それは、途方もない毒薬をつくった博士と毒薬の材料にされた小人たちの因果を綴る童話。やがて童話をなぞるような惨事が出来し、世間の耳目を集めることに。膠着する捜査を後目に、招請に応じた名探偵の推理は?

2部構成で紡ぐミステリー小説。第1部と第2部でガラリとテイストが変わるのが注目ポイント。謎はスッキリと解決されますが、ラストには哀しさと切なさ、虚無感を覚えます。名探偵の孤独感、宿命について考えてしまう一冊です。

『新装版 殺しの双曲線』

西村京太郎(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

差出人不詳の、東北の山荘への招待状が、六名の男女に届けられた。しかし、深い雪に囲まれた山荘は、彼らの到着後、交通も連絡手段も途絶した陸の孤島と化す。そして、そこで巻き起こる連続殺人。アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』に挑戦した、本格ミステリー!

西村京太郎の初期作品でも屈指の名作、鮮やかなプロットと称賛されています。冒頭に注意書きがあるにもかかわらず、見事にやられてしまいます。1971年の作品ですが、今でも十分通じるトリックにワクワク。そしてやっぱりアガサ・クリスティの魅力を再認識せずにはいられません。

『青の炎』

貴志祐介(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫

櫛森秀一は湘南の高校に通う17歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との3人暮らし。その平和な家庭に、母が10年前に別れた男、曾根が現れた。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、母の体のみならず妹にまで手を出そうとする。警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意した。自らの手で曾根を葬り去ることを……。

完全犯罪に挑む少年の孤独な戦い、その哀切な心象風景を精妙な筆致で描き上げた感動のミステリー。いつしか主人公に感情移入してしまう自分がいながらも、理由があれば犯罪は許されるのか。そんなことを考えながら読み進める一冊。2003年に二宮和也主演で映画化。

『獄門島』

横溝正史(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫

獄門島。江戸三百年を通じて流刑の地とされてきたこの島へ金田一耕助が渡ったのは、復員船の中で死んだ戦友、鬼頭千万太に遺言を託されたためであった。「三人の妹たちが殺される……おれの代わりに獄門島へ行ってくれ……」瀬戸内海に浮かぶ小島で網元として君臨する鬼頭家を訪れた金田一は、美しいが、どこか尋常でない三姉妹に会った。だが、その後、遺言通り悪夢のような連続殺人事件が起きる……。

後世の推理作家に多大な影響を与え続けているミステリーの金字塔。横溝正史らしいおどろおどろしい雰囲気が漂うも同時に美しさを感じる物語です。金田一が島にやってくるシーンとラストで島を去るシーンがとても印象的。なんともいえない風情と余韻が堪能できます。

『盤上の敵 新装版』

北村薫(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

猟銃を持った殺人犯(黒のキング)が、妻・友貴子(白のクイーン)を人質に我が家に立てこもる。末永純一(白のキング)は警察を出し抜き、犯人と交渉を始める。警察とテレビカメラに包囲される中、周到に準備を進める純一が秘す慟哭の真実とは。

スピーディーな展開で読み手を物語に引き込んでいきます。事件パートに挟まれる白のクイーン・友貴子の生い立ちは重く、暗く、残酷でずっしりとのしかかってきます。モヤモヤ感もありながら読み進めていくと最後に驚きのどんでん返しが待っています。仕掛けや構成はさすが北村作品と楽しめるのですが、注意書きはあったのですが、重くて辛い内容に心がしばらく沈みます。

『火車』

宮部みゆき(著)
出版社(レーベル):新潮文庫

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――。なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか?

重厚感のある社会派ミステリーですが、読みやすい文章なのでサクサク読み進められます。終盤の臨場感に「読んでよかった!」としみじみしてしまいます。最後にすべてを解き明かさずに終わる余韻の残し方も美しくてよき!

『三毛猫ホームズの推理』

赤川次郎(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫

体つきは優雅で上品、きりっとした顔立ちの三毛猫。手術で子宮をとったせいか、時々“物思い”にふける癖がある。だがひとたび事件がおこると、ユニークな推理と鋭い冴えで人間どもを翻弄する。その名も“ホームズ”。そして、コンビの片山は、血を見るのは大きらい、アルコールはダメ、女性恐怖症と三拍子そろった独身男性。“一応”刑事だ。売春、密室殺人、女子大生連続殺人事件と二人(?)のまわりには事件がいっぱい。ノッポで童顔の片山と名探偵ホームズのスリリングな活躍を描く!

ベストセラー「三毛猫ホームズ」シリーズの第1弾。続くシリーズを読む予定なら、片山刑事、晴美、猫のホームズの出会いをここでしっかりチェックしておくべし。密室トリックと意外な犯人、ユーモアも盛り沢山なミステリーの名作です。書影もかわいい!

『砂の器 上』

松本清張(著)
出版社(レーベル):新潮文庫

東京・蒲田駅の操車場で男の扼殺死体が発見された。被害者の東北訛りと“カメダ”という言葉を唯一つの手がかりとした必死の捜査も空しく捜査本部は解散するが、老練刑事の今西は他の事件の合間をぬって執拗に事件を追う。今西の寝食を忘れた捜査によって断片的だが貴重な事実が判明し始める。だが彼の努力を嘲笑するかのように第二、第三の殺人事件が発生する。

何度もテレビドラマ化され、映画もヒットした名作です。昭和の小説ですが、古さはまったく感じません。今西刑事が事件を追う様子が、じわりじわりと伝わってくる感じがたまりません。ゆっくりと真実に向かっていく感覚が味わえます。

『黒猫館の殺人 新装改訂版』

綾辻行人(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

大いなる謎を秘めた館、黒猫館。火災で重傷を負い、記憶を失った老人・鮎田冬馬(あゆた・とうま)の奇妙な依頼を受け、推理作家・鹿谷門実(ししやかどみ)と江南孝明(かわみなみ・たかあき)は、東京から札幌、そして阿寒へと向かう。深い森の中に建つその館で待ち受ける、“世界”が揺らぐような真実とは。

館シリーズ第6弾。一冊の手記をもとに繰り広げられるミステリー。ラストで明かさせるトリックに驚いた後は、館シリーズを読み返したくなる衝動に駆られます。他のシリーズでさらっと触れられている人とのつながりが、今回の事件の鍵になっているというシリーズファンにはたまらない仕掛けが楽しめます。

『ライオンの棲む街』

東川篤哉(著)
出版社(レーベル):祥伝社文庫

都会で夢破れ、故郷・平塚に帰ってきた元OLの川島美伽は、高校時代の旧友・生野エルザと再会する。“雌ライオン”の異名を持つエルザは、地元の刑事も一目置く名(?)探偵に成長していた……。強引に助手にされた美伽はエルザと共に、厄介な依頼人が持ち込む奇妙な事件の調査を始める。

海と祭りの街を舞台に最強の美女探偵コンビの名推理が炸裂します。ミステリー小説ではバディものは特に人気。最近は女性同士のバディの海外ミステリードラマも多いので、日本でも女性バディものの新たな名作ドラマが誕生することを期待しながら読み進めたい!

最後に

人気シリーズものもたくさんある日本のミステリー小説。驚きのトリックやどんでん返し、人間ドラマや個性的なキャラクターも堪能できる読むエンターテインメントの世界を存分に味わってみて!

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ライター/タナカシノブ
2015年9月よりフリーライターとして活動中。映画、ライブ、歌舞伎、落語、美術館にふらりと行くのが好き。