2024/03/31

【影響力ハンパない!】エドガー・アラン・ポーってどんな人?おすすめ小説もご紹介

19世紀前半のアメリカで活躍した小説家で詩人のエドガー・アラン・ポー。世界初の推理小説を書いた人として知られているポーですが、活動は多岐に及び、後世に様々な影響を与えています。あまりにも有名な作家の作品は“知った気”になり実は読んでいない、というケースも意外とありますよね。ポーが残した小説をチェックしながら、ポーの世界に浸ってみませんか。ミステリー小説の世界に大きな影響を与えたエドガー・アラン・ポーの作品たちを紹介します。

エドガー・アラン・ポーの“世界初”

『モルグ街の殺人・黄金虫―ポー短編集』
エドガー・アラン・ポー(著) 巽孝之(訳)
出版社(レーベル):新潮文庫

日本の人気推理作家の江戸川乱歩の名前の由来であることはよく知られています。“推理小説の父”と呼ばれ、世界で初めての推理小説『モルグ街の殺人』を書いたポーは、『黄金虫』で世界初の暗号小説を書いたとも言われています。ポーが描く世界はダークでちょっと不気味で耽美的。類稀な想像力に満ちさまざまなジャンルを切り開いてきたポーの作品は、現在に至るまで多くの人たちに愛され読み継がれています。 小説家としてだけでなく詩人としても活躍。編集者の才能も発揮もあり、書評などを手掛けるという一面も。とても才能に満ちた19世紀を代表する作家のポー。肖像写真で見るポーはボサボサの髪でちょっぴり暗くくぼんだ目をしていますが、さまざまな才能を秘めた深い知性が感じ取れます。

東野圭吾もノミネート!「エドガー賞」

人気作家の名前を冠した賞は日本国内にもたくさんあります。現代の日本のミステリー界には欠かせない東野圭吾は、ポーがペンネームの由来とされている江戸川乱歩賞を受賞し作家デビューを果たしています。さらに、米国で発表されたミステリー作品を対象にアメリカ探偵作家クラブ(MWA)が主催する文学賞「エドガー賞」では「ベストノベル」部門にノミネートという快挙も達成。候補作となった『容疑者Xの献身』もあわせてチェックしてみてはいかがでしょうか。

ジャンルでチェック!エドガー・アラン・ポーが残した小説たち

『黒猫・アッシャー家の崩壊 ポー短編集 I ゴシック編』
エドガー・アラン・ポー(著) 巽孝之(訳)
出版社(レーベル):新潮文庫

死がテーマのゴシック・ホラー小説

『アッシャー家の崩壊』『黒猫』『ライジーア』『赤き死の仮面』『ウィリアム・ウィルソン』など。 『黒猫』は猫を飼っていたポーが描く黒猫の物語。アルコール中毒の「私」が語り手となる本作は、細かい描写にゾクゾクと悍ましさを感じつつも、なぜ本作を描いているのか。その真意が知りたくなりページをめくる手が止まりません。『ライジーア』では薬物中毒の語り手となり、死んだ前妻が後妻の体を乗っ取って蘇る物語を紡ぎます。『ウィリアム・ウィルソン』の語り手はドッペルゲンガーに嫉妬する人物。しかしそれは鏡に映った自分自身の姿で…などその発言を心からは信頼できない語り手が物語をリードします。時には読者に嘘をつくことも。叙述トリックにより作品の世界に誘う手法で読み手を楽しませてくれます。

ユーモア小説

『メッツェンガーシュタイン』『オムレット公爵』『ボンボン』『息の喪失』『Xだらけの社説』など。 デビュー作の『メッツェンガーシュタイン』は副題に「ドイツ人に倣びて」という副題がつけられていたことからも分かるように、ゴシック小説の“パロディ”として書かれたもの。さまざまなジャンルを手掛けているポーですが、意外にもデビュー作はユーモア小説というのも、どこかポーの魅力を引き立てます。『Xだらけの社説』では歪み合う新聞社同士の奇妙な論争をブラックユーモアたっぷりに描きます。

推理小説

『モルグ街の殺人』『マリー・ロジェの謎』『盗まれた手紙』『黄金虫』『お前が犯人だ』など。推理小説の基本形を作り上げた傑作『モルグ街の殺人』は1841年に発表されたもの。天才的な名探偵がさまざまな証拠をもとに犯人やトリックを“論理的”に導き出す、推理小説の基礎を生み出しました。その後発表された『マリー・ロジェの謎』では現実の殺人事件をモデルにした初の推理小説と言われています。批評家でもあるポーが自身の最高傑作の推理小説と評したのが『盗まれた手紙』。これらの小説に登場するのが名探偵C・オギュースト・デュパン。名探偵の代名詞、シャーロック・ホームズやエルキュール・ポアロなどに多大な影響を与えたとされるキャラクターです。

冒険小説

『大渦巻への落下・灯台 ポー短編集 III SF&ファンタジー編』
エドガー・アラン・ポー(著) 巽孝之(訳)
出版社(レーベル):新潮文庫

『ナンタケット島のアーサー・ゴードン・ピムの物語』『ハンス・プファアルの無類の冒険』など。 「小説は短編に限る」と言っていたポーの唯一の長編小説と言われる『アーサー・ゴードン・ピムの物語』。冒険小説ではありますが、ポーらしい仕掛けが散りばめられているのもポイントです。唐突に終わる物語として知られています。これがポーの意図したものなのかどうなのか、そんな謎に包まれています。ペンギンの生態の解説から始まり、不思議な生き物との出会いなどが描かれるなど、海洋冒険物語らしい描写もありますが、どこかポーらしさを感じる1冊。いくつかポーの作品に触れたあとに読むと、「なにかあるのではないか」という深読みも楽しめます。

詩集

『ポー詩集』
エドガー・アラン・ポー(著) 阿部保(訳)
出版社(レーベル):新潮文庫

『大鴉』『ヘレンに』『アナベル・リイ』など。 詩人としても活躍したポーの詩は悲哀と憂愁と幻想に彩られ、ボードレールのフランス語訳によってフランス象徴主義の詩人たちに深い影響を与えたことはよく知られています。ポーの作品を並べると時代を超え、ジャンルを超え、そして国境を超えて多大な影響を与えている存在であることを改めて実感します。 1845年に発表した『大鴉』は、ポー自身が『詩の原理』の中で創作過程を明かした有名な物語詩です。恋人を失い悲しみに暮れる主人公の若者のもとにやってきたのは人間の言葉を話せるカラス。作中に繰り返し登場する“Nevermore(二度とない)”という言葉が悲しみを煽ります。

【おまけ】こちらもチェック!映画『推理作家ポー 最期の5日間』

推理作家エドガー・アラン・ポーの最期の日々を“史実”と“フィクション”を交えながら描くミステリーサスペンス。1849年、アメリカ・ボルティモアで起きた猟奇的殺人事件。現場に駆けつけたエメット刑事は、この事件が作家エドガー・アラン・ポーの小説『モルグ街の殺人』に酷似していることに気づきます。警察は、酒びたりで荒んだ生活を送るポーを有力な容疑者として捜査を進めるのですが、ポーの作品を模した第2、第3の殺人が発生。著作を汚されたポー自身も捜査に乗り出します。ジョン・キューザックがポーを演じ、推理作家VS連続殺人鬼、命をかけた頭脳バトルが展開! ポーの謎の最期から想像を膨らませて描くミステリーサスペンス。小説とあわせてポーの人生堪能してみては?

最後に

再婚を目前にした1849年。泥酔状態で意識不明になっているところを発見され、40歳の若さでこの世を去ったポー。アルコール依存症の原因は母と最初の妻を病気で亡くした悲しみから逃れるためとも言われています。辛口批評でも知られるポーは、アメリカの文壇からはあまり好かれておらず、高い評価のほとんどがポーの死後のもの。後世に多大な影響を与え、今もなお読み継がれているポーの世界を作品で振り返ることで、ポーの創作の源を探るという楽しみ方も面白いかもしれません。

ミステリードラマもチェック!

ミステリーチャンネルでは、アガサ・クリスティーが生み出した名探偵「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」や、「シャーロック・ホームズの冒険」など英国の本格ミステリーをはじめ、「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」などのヨーロッパの話題作や「刑事コロンボ」といった名作、人気小説が原作の日本のミステリーまで、選りすぐりのミステリードラマを放送しています。
4月のおすすめ番組はこちら

特集ページ”ミステリーチャンネル × 早川書房・東京創元社・扶桑社「特集 もっと楽しむ ミステリー」”にて、エドガー・アラン・ポーから始まったミステリーの歴史解説を公開中!

ミステリーチャンネルと早川書房・東京創元社・扶桑社が共同で、ミステリーの魅力を発信! ミステリーファンの皆様にお楽しみいただける読み物コンテンツやプレゼント企画などをお届けしています。
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第1回目の記事は、「ミステリーの基本の“き“~ミステリーを楽しむために知っておきたい歴史について【早川書房解説】」をお届けしています。

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タナカシノブ
紹介文:2015年9月よりフリーライターとして活動中。映画、ライブ、歌舞伎、落語、美術館にふらりと行くのが好き。