2025/07/01

【ブルターニュ地方の魅力】知ればドラマがもっと楽しくなる!『パリジャン刑事デュパン〜ブルターニュの事件簿』の舞台を深掘り!

ドイツ人作家ジャン=リュック・バナレックのベストセラー小説を基に制作されたミステリードラマ『パリジャン刑事デュパン〜ブルターニュの事件簿』。原作者が惚れ込んだというフランスのブルターニュ地方が舞台となり、風景や町並みを見ることができるのも、本作の魅力です。当番組がきっかけとなって、ドイツ人観光客が大幅に増えたともいわれるブルターニュ地方、いったいどんなところなのでしょう。その魅力を探ってみましょう!

ブルターニュってどこ?

 六角形をしているため「ヘキサゴン」とも呼ばれるフランス。その西端、半島のように突き出た部分がブルターニュ地方です。北はイギリス海峡、南は大西洋に面し、美しくも少し複雑な海岸線に囲まれています。一方内陸部にはアーサー王の物語が息づく森や丘陵地が広がり、幻想的な風景に想像力が刺激されます。先史時代の巨石群や中世の趣を残す小さな村もあり、変化に富んだ風景を楽しめます。ドラマでは、ブルターニュ地方のさまざまな場所が登場し、主人公とともに旅をしているような気分になることでしょう。
 中心都市のレンヌへは、高速列車TGVを使えばパリから2時間ほど。比較的アクセスのよい地方ですが、ここでは大都会パリとはまったく異なる、ゆったりとした時間が流れています。そんなブルターニュ地方の小さな港町コンカルノーに、パリから転勤となった主人公デュパン警部が赴任します。強気で頑固、ときには周囲への忖度なしに突っ走ってしまうデュパン。当初、保守的な人たちから不信感をもたれますが、優れた洞察力と持ち前の行動力で難事件を次々と解決、信頼を得ていきます。人気の観光地が殺人現場になっていたり、さりげなくブルターニュの名物が登場したりと、旅の要素もたっぷり盛り込まれた本作。ドラマをより深く楽しめるよう、ブルターニュ地方の特色、ロケ地となった場所や名産物について、ご紹介しましょう。

木骨組みの家が並ぶレンヌの旧市街

誇り高きブルターニュ人

「私はブルトン(ブルターニュ人)です」
ブルターニュで生まれ育った人に「どちらの国の方ですか?」と聞くと、「フランス人」ではなくこう答えることが多いとか。ドラマでは、パリからやって来たばかりのデュパンに、地元の人がブルターニュ人のアイデンティティをはっきりと示す場面があります。古代ケルト人にルーツをもつブルターニュでは、フランスのほかの地方とはまったく異なる文化、伝統が育まれてきたのです。
 独自の言語ブルトン語もあり、今も一部の学校で教えられています。フランス語とブルトン語が併記された通り名プレートを見かけることも多く、ブルトン人であることを誰もが誇りに思っていることを強く感じます。
 第4話は、民族衣装をまとった女性たちが踊る場面から始まりますが、祭事の伝統も各地で受け継がれています。なかでも8月にロリアンという町で開催される「ケルト民族フェスティバル」は、国際的なアーティストが集う大規模なイベントとして広く知られています。バグパイクの演奏隊とともに通りを練り歩くパレードやケルト音楽のコンサートなどが行われ、国内外から多くの人が訪れます。

宗教的な祭事「パルドン祭」でも知られる中世の村ロクロナン

牡蠣をはじめとする海の幸が豊富

 海に囲まれたブルターニュは海の幸の宝庫。第4話では牡蠣の養殖場が事件の現場となることでもわかるように、牡蠣はブルターニュの名産物のひとつです。ロケ地とは異なりますが、歴代のフランス王からも愛された牡蠣の名産地カンカルでは、養殖場を見下ろす海辺に市が立ち、その場で味わうことができます。潮風を受けながらいただく剥きたての牡蠣は最高! ちなみにフランスでは牡蠣といえば、殻付きを生で食べるのがお約束。剥き身をぎゅうぎゅうに詰め込んだパックなんて、どこにも売っていません。
 さて、デュパン警部も本場で海の恵みを堪能……と思いきや、彼はまさかの魚アレルギー! せっかく殻を開けて勧められた生牡蠣も、大皿からあふれそうな海の幸の盛り合わせも、口にすることができません。なんとももったいない。警部には早く苦手意識を克服してもらいたいものです。

カンカルの牡蠣市

城壁の町、コンカルノーとサン・マロ

 デュパン警部の赴任先となったコンカルノーは、フィニステール県にある小さな港町です。ドラマの冒頭などで空撮された町の全景が映ることがあり、島のように見える一角に気づくことでしょう。これは「ヴィル・クローズ」と呼ばれる、城壁に囲まれた旧市街です。もともと要塞として築かれたもので、中世の雰囲気が残る城壁内を散策するのも楽しいものです。デュパン警部行きつけのレストラン「アミラル」も、実際に営業しています。
 第9話に登場するサン・マロも、城壁に囲まれた町として知られます。旧市街をぐるりと囲む城壁の上は歩くことができ、エメラルド色の海を見渡すことができます。16〜17世紀には、敵国の船を襲うことを認可された、合法的な海賊「コルセール」の拠点として栄えましたが、第2次世界大戦時に攻撃を受け、町は壊滅的な状態に。しかし、崩れ落ちた石を一つひとつ積み上げて再建し、かつての家並みを蘇らせました。魚介類の缶詰専門店やバターの名店もあり、散策が楽しい町です。
 サン・マロ周辺の海は、潮の干満差が激しいことで知られます。大潮のときには、城壁を乗り越えるほどの大波が押し寄せることも。潮流が速いことで遺体が遠くに流されてしまう可能性に言及するなど、ブルターニュの自然の特徴が、ドラマのなかにもさりげなく織り込まれています。

城壁で囲まれた歴史の町サン・マロ

ゴーギャンが描いたブルターニュ

 第1話で登場するのは、画家ポール・ゴーギャンが暮らしていた村ポン=タヴァン。遺体が見つかったホテルのレストランにはゴーギャンの複製画がたくさん飾られており、事件を解決する糸口となります。代表作のひとつ『黄色いキリスト』の複製画も壁に。この絵のモデルとなったキリスト像は、町外れの小さな礼拝堂にあり、見ることができます。ゴーギャンの影響を受けたポン=タヴァン派という画家グループを生んだこの村は、今も画家たちがアトリエを構える芸術村として、美術ファンの心をとらえています。町の名物は焼き菓子ガレット。1920年創業のガレットメーカー「トロウ・マッド」の看板も、ドラマのなかで一瞬映ります。
 また、第10話の舞台となる島ベル=イル=アン=メールでは、モネの作品『雨のベリール』に描かれたコトン港の針岩を見ることができます。ベル=イル=アン=メールへは、港町キブロンから船で50分ほど。キブロンには、海藻や海水を使ってケアを行うタラソテラピーのセンターがあります。眺望もよく、癒し効果は絶大! 心も体もデトックス&リフレッシュできることでしょう。

ゴーギャンの作品がパネルで掲示されているポン=タヴァン

『黄色いキリスト』のモデルとなった木像があるトレマロ礼拝堂

バラ色の巨石が並ぶ散歩道

 第6話の舞台は「バラ色の花崗岩海岸」。詩的な名前とは裏腹に、バラ色の巨石が積み重なる風景は野生味たっぷり。さまざまな形をした石の合間に設けられている散歩道は「税関吏の小道」と名付けられています。デュパン警部 も歩いた散歩道は、ブルターニュらしい景色を味わえるおすすめの道です。
 バラ色の海岸沿いにあり、ロケ地となった村プルマナックは、フランスの人気テレビ番組「フランス人が好きな村」で、見事1位を獲得したこともある景勝地。ドラマのサスペンスにドキドキしながら、花崗岩海岸の美しさも味わいましょう。

バラ色の花崗岩海岸にあるプルマナックの灯台

ソバ粉のガレットをシードルとともに

 ブルターニュで気軽に楽しめる名物グルメといえば、「クレープ」と「ガレット」。十字軍が持ち帰ったソバがこの地で栽培され、ソバ粉を使ったガレットが作られるようになったのが始まりといわれます。その後、小麦粉を使ったクレープが誕生しました。ガレットは有塩バターをたっぷり使って生地を焼き、具材を包んで仕上げます。ハムとチーズ、卵をあわせた定番の具材から、ホタテ貝など旬の素材を使った限定版まで具材のバリエーションは豊富で、どれを選ぶか迷ってしまうほど。ガレットを一品とって、果物やアイスクリームののったクレープをデザートに頼めば、おなかいっぱい! サービスはスピーディ、値段も手頃なので、ランチにおすすめです。
 ガレットに合わせたいのが、さわやかなシードル。ワインが生産されないブルターニュ地方で造られる、リンゴを使った発泡酒です。ブルターニュ地方のクレープリー(クレープ専門店)では、グラスではなく「ボル」と呼ばれる陶製のカップでシードルをいただきます。ドラマのなかでも、この「ボル」がテーブルに置かれている場面がありますので、見つけてみてください!

ブルターニュの定番グルメ、ソバ粉のガレット

ブルターニュのおみやげ

 第2話の舞台となった塩田のあるゲランドは、現在行政上はペイ・ド・ラ・ロワール地域圏に属していますが、かつてはブルターニュ公国の州都だった町。広大な塩田では、太陽の光と風によって海水を濃縮、結晶化させる「完全天日塩」が作られています。熟練の塩職人がほぼ手作業で仕上げたゲランドの塩は、おみやげにぴったりです。
 第3話に登場するカンペールは焼き物の町として知られます。青や黄色の縁取りが施され、花や鳥、民族衣装を着た人物が描かれたカンペール焼きは、カラフルな色彩と素朴な味わいが魅力。手描きで絵付けをする工程を見学できる工房もあり、併設のブティックでショッピングも楽しめます。
 ほかにも、塩バターキャラメルやサブレなどのお菓子、クラフトビールなど、観光案内所併設のブティックなどでも、地方色豊かなおみやげを買うことができます。

カンペール焼きのショップ

最後に

 フランスの地方のなかでもとりわけ個性が強く、独自の伝統、文化を守り続けてきたブルターニュ。伝説が息づく森や謎に包まれた巨石群など、どこか神秘性を感じさせ、ミステリーの舞台としてまさにふさわしい場所といえます。デュパン警部とともに事件の真相を追いながら、エピドードごとに選ばれた、ブルターニュの町や風景を楽しんでみてはいかがでしょう。

テキスト 坂井彰代
写真 伊藤智郎

【放送情報】

●パリジャン刑事デュパン~ブルターニュの事件簿(新エピソード 第6話~第12話・全7話)
字幕版:7/27、8/3(日)夕方4:00 一挙放送
★第1~5話:7/26(土)夕方4:00 一挙放送

大都会パリからブルターニュの田舎町にやってきた、魚アレルギーで海が苦手な殺人課の刑事デュパンが、類まれなる捜査スキルで難事件を解決!
ブルターニュに魅せられたドイツ人作家による人気小説を原作にした作品で、ドイツで2014年からスタートし、国民的人気シリーズとなり、その後、フランスでも放送され、驚異的視聴者数を獲得した、独仏の両国で人気を博す驚くべき作品。今回は2018~2024年に放送された新エピソードを放送!

>>番組サイトはこちら

●フランスドラマ特集

毎年7月14日はフランス革命記念日にあたり、フランス国民にとって大切な祝祭日。
そこで、フランスドラマに注力しているミステリーチャンネルとアクションチャンネルでは7月~8月にかけてフランスドラマを大特集!
ミステリーチャンネルでは話題の最新ミステリーから、人気シリーズの新エピソードを放 送!アクションチャンネルでは、チームワークで挑む、フランス発クライム・アクションドラマをラインナップ!
どうぞこの機会にフランスドラマをお楽しみください!
詳しくはこちらをご確認ください。

※ミステリーチャンネルでの放送情報は、番組公式サイト、または、ミステリーチャンネル カスタマーセンターまでお問い合わせください。

ミステリーチャンネルについて

世界各国の上質なドラマをお届けする日本唯一のミステリー専門チャンネル。「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」「シャーロック・ホームズの冒険」「ヴェラ~信念の女警部~」など英国の本格ミステリーをはじめ、「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」などのヨーロッパの話題作や「刑事コロンボ」といった名作、人気小説が原作の日本のミステリーまで、選りすぐりのドラマが集結!ここでしか見られない独占放送の最新作も続々オンエア!

ミステリーチャンネル ご視聴方法はこちら

ミステリーチャンネル 公式サイトはこちら

ミステリーチャンネル カスタマーセンター

0570-002-316

(一部IP電話等 03-4334-7627)

受付時間 10:00 - 20:00(年中無休)

ミステリーチャンネル カスタマーセンター

0570-002-316

(一部IP電話等 03-4334-7627)

受付時間 10:00 - 20:00(年中無休)

坂井彰代
旅行ガイドブック『地球の歩き方』など、フランス関係の書籍・記事の執筆・編集を担当。年に数度渡仏している。