2025/04/28

【探偵には変わり者が多い?!】日本・海外のおすすめ探偵小説シリーズ31選

鮮やかに謎を解き事件を解決する探偵が活躍する探偵小説にはシリーズものもたくさんあります。天才的な頭脳はもちろん、キャラクターそのものの魅力に惹かれていくのもシリーズものならではの楽しみ方です。日本国内、そして海外にも読み手を魅了する探偵たちがいっぱい。今回はシリーズ化されている人気者探偵たちをご紹介します!

探偵小説シリーズの魅力とは

圧倒的推理力を持つ天才でありながら奇人変人の一面を持つキャラから、スーパーおばあちゃんまで、シリーズ化されている探偵小説には魅力的でユニークな探偵が数多く登場します。映像化されたり、探偵名を冠にした派生作品が生まれるなど、オリジナルの本の中から飛び出し、人気を博すキャラクターもたくさんいます。華麗な推理に酔いしれるだけでなく、 キャラクターそのものの魅力にどんどんハマっていけるのがシリーズ作品の魅力。読めば読むほど好きになる探偵小説シリーズに沼落ちしてみませんか。

絶対読んでおきたい!おすすめの探偵小説シリーズ31選

国名シリーズ

『ローマ帽⼦の謎【新訳版】』
エラリー・クイーン(著)中村有希(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

『ローマ帽子の謎』にはじまり『スペイン岬の秘密』に至るまでの9作品のタイトルには国名が入っており、国名シリーズと呼ばれています。この国名シリーズという呼び方は実は日本独自のもの。本国ではエラリー・クイーンシリーズと呼ばれています。ミステリー小説初心者で、まだエラリー・クイーン作品を読んだことがないという方には国名シリーズは読みやすくておすすめ。エラリー・クイーンが探偵役なので、エラリーの特長、らしさを知るという意味でもおすすめです。

探偵役はニューヨーク在住の作家・エラリー・クイーン。父のリチャード・クイーン警視が登場し、ほのぼのとしたやりとりも展開し、捜査や推理を進めていきます。推理方法はロジック思考。消去法なども使い犯人を割り出すタイプです。シリーズを重ねていく中で、人物像の観察などもプラスされていきます。

デビュー作『ローマ帽子の謎』で驚くのは登場人物一覧に40人もの名前があること。しかし、ここで挫折するのはもったいない。出番の少ないキャラクターがほとんどなので、さらっと確認しながら読み進めても問題ありません。

ロジャー・シェリンガムシリーズ

『ジャンピング・ジェニイ』
アントニイ・バークリー(著)狩野⼀郎(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

アントニイ・バークリーが生み出したおしゃべりな名探偵ロジャー・シェリンガムが活躍するシリーズ。英国ミステリー界屈指の人気キャラクターで”迷”探偵と称されることも。ロジャー・シェリンガムの職業は作家。ちょっぴり無礼で社交的なところも愛嬌があって人気です。小柄でずんぐりとした体格でビールをこよなく愛し、お茶目でユニークなキャラクターです。

ロジャー・シェリンガムシリーズは全部で10作。1925年から34年まで毎年1作ずつ刊行されています。

『ジャンピング・ジェニイ』はシリーズの中でもひと際”迷”探偵ぶりが炸裂しているかもしれません。全編にユーモラスな雰囲気が漂い、ロジャーの詰めの甘さも相まって、なかなかに笑えます。

ブラウン神⽗シリーズ

『ブラウン神⽗の童心【新版】』
G・K・チェスタトン(著)中村保男(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

奇想天外なトリック、痛烈な諷刺とユーモア、独特の逆説と警句でお馴染みのブラウン神父が活躍するシリーズ。小柄で不器用、団子のように丸く間の抜けた顔で、頭が切れるタイプには見えない風貌のブラウン神父ですが、彼が事件の真相を語り始めると世界は一変。このギャップに心を掴まれます。

シリーズ第一集となる『ブラウン神父の童心』には、ブラウン神父初登場の「青い十字架」のほか、大胆なトリックが炸裂する「見えない男」、有名な警句で知られる「折れた剣」を含めた12編が収録されています。

ヘンリー・メルヴェール卿シリーズ

『⿊死荘の殺⼈』
カーター・ディクスン(著)南條竹則(訳)、⾼沢治(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

略してH.M卿と呼ばれる名探偵ヘンリー・メルヴェール卿が活躍するシリーズです。体重約100キロの大柄な体格の持ち主。べっ甲の眼鏡をかけているのですが、鼻が低くてずり落ちています。いつも火のついていない葉巻をくわえています。はっきり言って口は悪いですが、とてもユーモラスで魅力のあるキャラクターです。鋭い推理とは結びつかない風貌&態度ですが、推理力は実に鮮やか。難事件を華麗に解決へと導きます。

ヘンリー・メルヴェール卿シリーズは1話完結型なので、どこからでも読めるのもうれしいポイント。短編集2作と長編22作にも及ぶ人気シリーズです。『黒死荘の殺人』はH.M卿初登場作。オカルト感が強めに漂う作品ですがH.M卿の登場で雰囲気は一変するそのギャップも面白く読めるはず!

刑事ダ・ヴィンチシリーズ

『刑事ダ・ヴィンチ』
加藤実秋(著)
出版社(レーベル):双葉社(双葉文庫)
© 加藤実秋/双葉社

「ダ・ヴィンチ刑事」と呼ばれる男の名は南雲士郎。季節はずれの人事異動で黒のスリーピーススーツに深紅のスケッチブックを携えて本庁から警視庁楠町西署にやってきます。東京藝術大学絵画科卒という異色の経歴の持ち主は、アート推理で華麗に謎を解いていきます。

藝大主席合格のエリートですが、お喋りで超がつくほどのマイペースのダ・ヴィンチ刑事がバディを組むのは四人の子を育てながら家事に仕事に奮闘する刑事・小暮時生。正反対の二人にはそれぞれの秘密があり――。1話完結の事件でスッキリすると同時に、12年前の未解決事件の謎と興味がどんどん深まっていきます。

ジャック・フロスト警部シリーズ

『クリスマスのフロスト』
R・D・ウィングフィールド(著)芹澤恵(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

R・D・ウィングフィールドが生み出したジャック・フロスト警部シリーズは、ロンドン郊外の架空都市デントン警察に所属する警察官探偵が活躍します。日焼け顔で目力のある40歳後半という設定のジャック・フロスト警部。ヨレヨレのスーツに薄汚れたレインコートを羽織るという”だらしない”印象の格好をしています。事務処理能力も計画性も欠如していますが、常識はずれの行動力で事件を捜査し、解決へと導いていきます。

強烈、破天荒のような印象のあるフロスト警部ですが、行動力は常識はずれでも意外と堅実な操作を展開します。直感や偶然が味方をしてくれるところもキャラクターの魅力に繋がっている気も。下品でガサツなおじさんですが、部下には慕われている模様。事件をしっかり解決するも、なんだかスマートじゃないところも憎めない!

ファイロ・ヴァンスシリーズ

『僧正殺⼈事件【新訳版】』
S・S・ヴァン・ダイン(著)⽇暮雅通(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

S・S・ヴァン・ダインが生み出した35歳の博識な素人探偵ファイロ・ヴァンスが活躍するシリーズです。ヴァンスは叔母が残した莫大な遺産で悠々自適に暮らしています。住まいはニューヨークの東38番街にある屋上庭園付きマンション。35歳の独身で美術や骨董品に精通しています。スポーツも好きで、特にゴルフとフェンシングを好んでいます。親友のマーカム地方検事からの依頼を受け、非公式の捜査員として活躍しています。ハーバード大学で心理学を学んだ経験あり。その影響からか、精神分析学を応用し犯人の心理を細かく分析して、真相を割り出すスタイルです。

探偵ヴァンスが活躍するシリーズは全部で長編12作品。作者のヴァン・ダインは6作しか書かないつもりだったが、周囲の要望もあり12作を残すことに。ヴァン・ダインは「本格推理小説は6冊以上書けるものではない」と言っていたらしく、前半の6冊の評価のほうが高いこともシリーズの特長といえるかもしれません。

ピーター・ウィムジイ卿シリーズ

『誰の死体?』
ドロシー・L・セイヤー(著)浅⽻莢⼦(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

ドロシー・L・セイヤーが生み出したピーター・ウィムジイ卿はデンヴァー公爵家の次男として生まれた貴族探偵で、大学卒業後は従僕のバンターや友人たちと悠々自適に暮らしています。犯罪学の研究や古書収集、音楽にクリケットと多彩な趣味の持ち主です。貴族の特権を活かした証拠の収集×持ち前の推理力で事件を解決へと導きます。

シリーズには長編11編と3冊の短編集がありますが女流作家のハリエット・ヴェインが登場した第5作『毒を食らわば』以降、作風に変化が見え始めたと言われています。『誰の死体?』はピーター卿初登場作品。謎に興奮すると饒舌になるというキャラクター設定も、優雅な貴族とのギャップがあって魅力的です。

猫弁シリーズ

『猫弁 天才百瀬とやっかいな依頼⼈たち』
⼤川淳⼦(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

人が良すぎて猫にもめちゃくちゃ好かれてしまう、最強最高の弁護士の百瀬太郎。天才弁護士でありながら、猫を際限なく拾ってきてしまうことで事務所は猫だらけに。天才でありながら冴えない容貌の百瀬はエリート街道を歩めず、舞い込むのは奇妙な依頼ばかり。笑いあり涙ありのハートフルミステリーシリーズです。

掴みどころはないけれど芯があるタイプの百瀬に惹かれます。周囲の人が百瀬の良さをちゃんと理解してくれていることに心がほっこりとします。ユーモア溢れる文章とちょっぴりご都合主義にも思わなくないけれど、いろいろと繋がっていく感じも気持ちいい。

堂シリーズ

『眼球堂の殺⼈ ~The Book~』
周⽊律(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

放浪の天才数学者、十和田只人が名探偵として活躍するシリーズ…と思われたが、天才たちの頭脳バトルが展開するように。シリーズ1作目となる『眼球堂の殺⼈ ~The Book~』は第47界メフィスト賞を受賞し、シリーズは第7作『大聖堂の殺⼈ ~The Books~』で完結しています。名前は只人ですが、只者ではない十和田只人38歳。カバン一つで世界中を旅して周り、訪れた先で各地の数学者の家に無理矢理押しかけて共同研究をしている人物です。ぼさぼさの髪に無精髭、色素の薄い大きな瞳を持ち、べっこう縁の眼鏡をかけています。

天才同士の頭脳バトルへと様相を呈していったおかげで、非現実的すぎで奇抜なトリックも成立するようなミステリーが展開していくのもミステリー好きの心をつかみます。

成⾵堂書店シリーズ

『配達あかずきん』
⼤崎梢(著)
出版社(レーベル):東京創元社

駅に隣接したビルの6階にある成⾵堂書店につとめるしっかり者の店員・木下杏子がワトソン役兼語り手となり、勘のいい学生アルバイトの西巻多絵が名探偵役として、書店で起こる様々な日常の謎を解決していく書店ミステリーシリーズです。

「パンダは囁く」「標野にて 君が袖振る」「配達あかずきん」「六冊目のメッセージ」「ディスプレイ・リプレイ」五編の連作を収録しています。作者の大崎が元書店員ということもあり、本屋さんのリアルが伝わってきます。日常の謎でほのぼの雰囲気が漂いますが、意外としっかりとした事件だったりするのも特長。気配りのある後日談も書かれていて、読後感がいいのもポイント。本屋あるあるを楽しみながら読み進めたいシリーズです。

天久鷹央の推理カルテシリーズ

『天久鷹央の推理カルテ 完全版』
知念実希⼈(著)
出版社(レーベル):実業之⽇本社⽂庫

豊富な医学知識と緻密なトリックが織りなす本格推理小説として多くのファンを魅了している医療ミステリーシリーズです。超人的な頭脳の噂は院外にも広まっているため、天才外科医の天久鷹央のもとには医療の分野を飛び越えた推理依頼まで飛び込んできます。このシリーズは難解な医療事件に挑むだけでなく、現代医療が抱える様々な問題を鋭く描いている作品でもあります。人の気持ちが分からない鷹央と人の気持ちを巧みに読み取るワトソン的存在の内科医・小鳥遊とのバディっぷりも見どころです。

ライトな医療ミステリーなので、医療知識がなくても楽しく読み進められる一冊。鷹央に振り回される小鳥遊の姿は愛らしく思わずクスッ。一見医学とは無関係そうな謎の数々を鷹央が「診断」していきます。2025年1月にTVアニメの放送&配信、4月よりテレビドラマの放送がスタート。

福家警部補シリーズ

『福家警部補の挨拶』
⼤倉崇裕(著)
出版社(レーベル):東京創元社

とぼけた雰囲気の捜査一課の刑事・福家警部補が主人公の倒叙ミステリーシリーズです。冒頭で犯人の視点から犯行の経緯を語り、その後、捜査担当である警察官探偵・福家警部補が、類稀な洞察力を駆使し、事件の真相を手繰り寄せていくのかを描いています。

『刑事コロンボ』『古畑任三郎』の系譜に連なる警察小説のシリーズの第1集。作者は大の『刑事コロンボ』マニアのため、女性版コロンボのような趣で福家警部補が事件にしつこく、ねばっこく食らいつき、事件の解決へと導きます。お酒に強く、映画が好きでおしゃれには疎い年齢不詳の童顔で、決して器用とは言えないような仕草を見せる福家警部補のキャラにハマればどんどん楽しく読み進められるはず。

忘却探偵シリーズ

『掟上今⽇⼦の備忘録』
⻄尾維新(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

本作に登場する名探偵・掟上今日子は眠ると記憶を失ってしまう忘却探偵です。主人公が眠るたびに記憶がリセットされる、いわばタイムリミット付きのミステリーでもあるのが大きな特長です。寝ることですべてを忘れてしまう彼女は事件解決もほぼ即日。サクサクスピーディーに解決してくれるので、読み手もどんどんページを捲ることができます。忘れてしまうことを利用して守秘義務は完璧といううまい設定もあり!

記憶がリセットされてしまうため、挨拶は毎回「はじめまして」から始まります。さらに総白髪で眼鏡の美人という設定により切なさを感じずにはいられません。

⽕村英⽣シリーズ

『新装版 46番⽬の密室』
有栖川有栖(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

犯罪学者の火村英生と推理作家の有栖川有栖が、数々の難事件を解決していくミステリーが展開するシリーズです。有栖川有栖作品で作者が主人公として登場するシリーズには有栖(アリス)自身を主人公にしたクローズドミステリーを扱う学生アリスシリーズがあり、火村英生シリーズとはパラレルワールドの関係です。実は火村英生シリーズには国名シリーズも含まれていて、かなり大掛かりなシリーズとなっています。

『新装版 46番⽬の密室』では火村&有栖川コンビの登場回が描かれます。日本のディクスン・カーと称され45に及ぶトリックを発表してきた推理小説の大御所・真壁聖一が自らのトリックで密室で殺される事件が発生します。不遜な探偵&情けない助手コンビの軽妙な掛け合いも楽しみのひとつ。

メルカトル鮎シリーズ

『新装版 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』
⿇耶雄嵩(著)
出版社(レーベル):講談社(講談社ノベルス)

どんな難事件もたちまち解決してしまう”銘”探偵・メルカトル鮎の活躍を描くシリーズです。頭脳明晰ですが、言動は傲岸不遜というのは探偵役にはよくある設定。外国人のような彫りの深い顔立ちをした30歳前後メルカトル鮎は、舞台が現代日本でありながらタキシード姿に蝶ネクタイ、家の外でも中でもシルクハットを被っているという変人の香りが漂ってきそうな出立ちが特長的。名探偵ではなく”銘”探偵と名乗っているのは、”銘”を刻まれるべき探偵だと確信しているから。天才であることを自認し、「解決できない事件などない」と豪語しているなかなかのキャラクターです。

小栗虫太郎『黒死館殺人事件』のオマージュ作品としても知られている本作は⿇耶雄嵩のデビュー作でありながら、「最後の事件」となっている理由を想像しながら読み進めていくと、一筋縄ではいかない面白さに辿り着けます。

ドルリー・レーンシリーズ

『Xの悲劇【新訳版】』
エラリー・クイーン(著)中村有希(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

ドルリー・レーンシリーズ、別名:悲劇シリーズとは元シェイクスピア俳優のドルリー・レーンを探偵役にしたミステリー小説シリーズです。『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』『レーン最後の事件』のシリーズ4巻は「悲劇4部作」とも呼ばれています。俳優業を引退した50代のドルリー・レーンは聴覚を失っていますが、読唇術ができるため、人とのコミュニケーションは可能です。泳ぐのが得意で体はがっしりとしています。シェイクスピアを敬愛しているため、例え話にはシェイクスピアを引用しています。特技は変装です。

元俳優のレーンの芝居がかったまわりくどい話し方がなんだかクセになります。古典ミステリーの名作中の名作。1930年代のミステリー黄金期の空気感を味わいながら読み進めたい一冊。

番外編:オーギュスト・デュパン

番外編:『モルグ街の殺⼈・⻩⾦⾍ ポー短編集II ミステリ編』
エドガー・アラン・ポー(著)巽孝之(訳)
出版社(レーベル):新潮社(新潮文庫)

オーギュスト・デュパンは、アメリカの詩人で近代ミステリーの元祖エドガー・アラン・ポーの短編推理小説に登場した世界初の名探偵と言われています。世界初の推理小説としても知られる『モルグ街の殺人』、続く『マリー・ロジェの謎』『盗まれた手紙』の3作のみに登場したキャラクターです。パイプ煙草が大好きな五等勲爵士で、知性と推理力を兼ね備えた名探偵像を読み手に印象付けました。

デュパンの推理方法は綿密な観察力と鋭い洞察力によって、些細な手がかりから事件の真相を解き明かすスタイル。デュパンは後世の多くの名探偵に多大な影響を与えただけでなく、風変わりな性格や事件に対する独自の視点、さらにはその圧倒的な推理力で多くの読者、作家を魅了し続けています。

シャーロック・ホームズシリーズ

『四つの署名』
コナン・ドイル(著) 延原謙(訳)
出版社(レーベル):新潮文庫

名探偵の代表格。もはや名探偵の代名詞であるシャーロック・ホームズは1887年に『緋色の研究』で小説の世界に登場。洞察力、推理力、科学の知識も持ち合わせ、ボクシングやバイオリンを嗜む魅力いっぱいの探偵です。素晴らしい能力を持ち合わせる一方で、女性嫌いで変人要素もたっぷりで、薬物依存症という完璧ではない部分も人々を惹きつけます。英国の作家、アーサー・コナン・ドイルが生み出した小説の中のキャラアクターでありながら、色褪せない魅力でファンを熱狂させ続けています。 初登場以降、長篇4冊、短篇集5冊(作品数としては56作)に登場。コナン・ドイルの小説を飛び出し、その名前を冠した小説も数多く登場。映画やドラマにも度々登場し、相棒で事件の記録係でもある医師のワトソン博士とともに、圧倒的な人気を誇っています。

現在は「シャーロック・ホームズ博物館」となっている、物語の中でホームズたちが暮らしていた「ベイカーストリート221Bには、世界中から大量の手紙が届くほど。博物館の窓からの景色を目にするだけで、ホームズが見ていたと錯覚してしまうほど。ホームズは現実の世界に生きるキャラクターになっています。

『四つの署名』は、シリーズ2作目。あらすじを知っていてもワクワクできる名作。バイオリンを弾き、手料理を振る舞い、さらには“キメちゃってる”ホームズが堪能できる一冊。唯一無二の変人キャラにはシャーロキアンでなくてもグッと心を掴まれます!

エルキュール・ポアロシリーズ

『メソポタミアの殺人』
アガサ・クリスティー(著) 田村義進(訳)
出版社(レーベル):早川書房

ミステリーの女王、アガサ・クリスティーが生み出したエルキュール・ポアロもシャーロック・ホームズと並ぶ人気の名探偵です。ポアロといえば小さな違和感を見逃さない“灰色の脳細胞”。ポアロ自身が自分の能力に自信を持ってそう呼びます。ポアロが探偵になるのは警察の仕事をリタイアし、イングランドのエセックス州にある小さな田舎町に落ち着いた後。60歳、第二の人生で私立探偵の仕事をスタートさせます。

ドラマ『名探偵ポワロ』のデヴィッド・スーシェ、映画『オリエント急行殺人事件』(74)のアルバート・フィニー、『ナイル殺人事件』(78)、最近では『オリエント急行殺人事件』(17)『ナイル殺人事件』(20)でケネス・ブラナーが演じたポアロの姿が浮かぶ方も多いと思います。原作では、卵型の頭、特徴的な口髭、小男でうぬぼれ屋。コミカルなキャラクターとして描かれています。うぬぼれ屋でも敬遠されないのは、圧倒的な推理力があるから。コミカルな風貌と類いまれな推理力とのギャップが愛しさを掻き立てます。

『メソポタミアの殺人』の舞台は中近東の遺跡発掘現場。異国情緒が漂い、幻想的な文化を感じる作品です。散りばめられたヒントを華麗に回収していく謎解きは、ポアロに任せておけば大丈夫!と思える安心感。安定の面白さで読み手を楽しませてくれます。

ミス・マープルシリーズ

『書斎の死体』
アガサ・クリスティー(著) 山本やよい(訳)
出版社(レーベル):早川書房

アガサ・クリスティーが生み出したもう一人の名探偵はジェーン・マープル、ミス・マープルです。うぬぼれ屋さんのポアロとは対照的。穏やかでほのぼの、あたたかみを感じる自然体のおばあちゃん探偵です。ミス・マープルの初登場は『牧師館の殺人』。ロンドン育ちのミス・マープルは、ミドルシャーの田舎町セント・メアリ・ミード村へと移り住みます。生みの親クリスティーは「ポアロは長編向き、マープルは短編向き」と言っていますが、12の長編と20の短編に登場しています。ウィットに富んだおばあちゃん探偵の活躍は、ミステリーながらほんわかした気分で読めるのもポイントですが、本格的な推理ショーで魅力を発揮しまくりです。

『書斎の死体』で親友のパントリー大佐夫人から事件の解決を依頼されたミス・マープル。出だしからクリスティーのユーモアがたっぷりと盛り込まれ、物語に引き込まれます。ミス・マープルの鋭い人間観察力に脱帽!友情もの、ヒューマンドラマとしての一面もあり。真相を楽しむもよし、ラストで「やられたー!」と楽しめるのもクリスティーの魅力!

御手洗潔シリーズ

『星籠の海』
島田荘司(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

和製シャーロック・ホームズと呼ばれる探偵・御手洗潔は島田荘司のデビュー作『占星術殺人事件』で初登場したキャラクターです。ルックスが良く、IQ300以上の天才的な頭脳を持ち合わせる一方で、かなりクセの強い人物。もうこれだけで好きになる要素に溢れているのですが、さらに、風変わりな言動で周囲を困惑させる“奇人”な面もあり。イケメンで、天才で、奇人、たまらないワードが並びますが、さらに人を見た目で判断せず、優しさもあり、公平な対応をするという一面もあり。御手洗潔というキャラクターには魅力しか詰まっていない、と言っても過言ではありません。和製シャーロック・ホームズとされるもう一つの理由は、ホームズに相棒・ワトソンがいるように、御手洗にも親友・石岡和己が寄り添い、ほとんどの作品は石岡の目線から語られます。

『星籠の海』でも天才すぎる御手洗の推理が冴え渡る! 一見無関係の複数の事件が時代を超えて複雑に絡み合う壮大な物語です。映画『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』(16)では玉木宏が御手洗に。映像化を拒み続けた原作者の島田が太鼓判を押しただけのことはある、完璧な再現でミステリーの世界へと誘います。

金田一耕助ファイルシリーズ

『八つ墓村』
横溝正史(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫

日本の三大名探偵といえば、明智小五郎、金田一耕助、神津恭介。『本陣殺人事件』で初登場する金田一耕助のトレードマークはボサボサの髪。服装にも無頓着で羽織や着物は皺だらけ、袴にもたるみがあり、帽子の形は崩れている。さらに、身長は5尺4寸(約163cm)、体重は14貫(約53kg)と小柄。決してスマートとはいえない風貌ですが、人間味にあふれ、母性をくすぐるような一面もあり女性からのウケもいい、とても親しみやすいキャラクターです。そして多くの人を惹きつけるのが推理能力。警察から得た様々な情報をもとに、論理的に考え推断する。この推理スタイルを徹底しています。

『八つ墓村』は映画のイメージもあり、ホラーの印象が強めですが、実はロマンス、アドベンチャー、お家騒動、宝探しまで盛り込まれたエンタメ色濃いめの作品。金田一の登場シーンがやや少なめの一冊ですが、やはり事件を解決したのは金田一と納得させられるパワーが素晴らしい!

ガリレオシリーズ

『探偵ガリレオ』
東野圭吾(著)
出版社(レーベル):文春文庫

科学の力で数々の事件を解決する、天才的な頭脳を持つ帝都大学教授の物理学者の湯川学。シリーズは一冊完結型なので、どこから読み始めてもOK。初登場は1988年に発売された『探偵ガリレオ』です。「燃える(もえる)」「転写る(うつる)」など、短編5作が収録されています。原作者の東野圭吾が理系出身なので、ガリレオの推理も理論的に証明可能なトリックになっているのも実写版で福山雅治が演じた湯川の名台詞を借りれば、「実に面白い」ところ。ちなみに、ガリレオという名前は、湯川が謎を解く様子を見た警察が名付けたもの。なので、本シリーズは「ガリレオシリーズ」と呼ばれています。

『探偵ガリレオ』では、シリーズでおなじみとなる湯川の大学時代の友人で警視庁捜査一課の草薙俊平が登場。ドラマ・映画でお馴染みの内海薫の初登場はガリレオシリーズ4作目の『ガリレオの苦悩』に収録の第1章「落下(おちる)」となっています。

謎解きはディナーのあとでシリーズ

『謎解きはディナーのあとで』
東川篤哉(著)
出版社(レーベル):小学館

令嬢刑事(デカ)と毒舌執事コンビが難事件に挑む! 世界的に有名な「宝生グループ」のお嬢様・宝生麗子は国立署の新米刑事。仕事では「風祭モータース」の御曹司・風祭警部の下で数々の事件に奮闘中。帰宅後は地味なパンツスーツからドレスに着替えてディナーを楽しみながら、難解な事件の相談をします。その相談相手とは執事兼運転手の影山。毒舌というよりも暴言に近い発言で麗子の推理力のなさを指摘しつつも、「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」という名台詞付きで、鮮やかに謎を解き明かしていきます。

コメディ要素も多く、エンタメ度の高いシリーズで、気軽にミステリーを楽しみたい、ミステリーの世界に足を踏み入れたいという方におすすめ。影山の天才ぶりと軽快な語り口、毒舌執事とポンコツお嬢様の会話劇が堪能できる、読みやすさ満点のシリーズです。

作家アリスシリーズ

『46番目の密室』
有栖川有栖(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

難事件を解決するのは、京都の英都大学社会学部准教授で犯罪学者の火村英生。なぜ、アリスシリーズなのか。それは火村の学生時代の友人で作家の有栖川有栖が作品の語り手になっているから。ホームズとワトソンの関係のように、アリスが日村に同行して事件解決の様子を記録します。ちなみに『ロシア紅茶の謎』や『スウェーデン館の謎』などタイトルに国名がついている作品は「国名シリーズ」と呼ばれています。

『46番目の密室』ではミステリー作家の巨匠宅で起きた密室事件の謎に挑みます。仲良しの火村とアリスの出会いも描かれている一冊。本格&王道ミステリーが展開しますが、ミステリー初心者にもおすすめです。火村だけでも事件は解決できる! と思いきや、やはり火村とアリスの二人が揃ってこそ。火村英生シリーズ1冊目にしてアリスの存在が欠かせないことを納得させられます。

腕貫探偵シリーズ

『腕貫探偵』
西澤保彦(著)
出版社(レーベル):実業之日本社

“腕貫”着用の市民サーヴィス課職員、窓口に舞い込む事件の謎をユーモアたっぷりに次々と解明していくシリーズ。腕貫着用という今どきっぽくない有能な公務員探偵「腕貫さん」の魅力は天才的なひらめき。いわゆる安楽椅子探偵で、お悩みを聞いてそれにアドバイスをするだけ。実際に動くのは相談者なのです。ライトなセリフ回しでするするっと謎を解いていきます。派手さはないけれど、神出鬼没なところにちょっぴりドキッとする感じもGOOD!

『腕貫探偵』は緩くつながる7つのお話が詰まった短編集です。殺人事件も登場しますが、ほのぼのとしたというよりもちょっととぼけた感のある日常系でほっこりもする。気軽に楽しめる一冊。腕貫をつけている理由についてはあとがきをチェック!

加賀恭一郎シリーズ

『麒麟の翼』
東野圭吾(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

東野圭吾デビュー2作目、1986年発売の『卒業』から始まった加賀恭一郎シリーズは、10作目『祈りの幕が下りる時』で完結しています。国立T大学に通う大学生として初登場し、2作目以降は警察官になった加賀活躍が描かれます。加賀は大学卒業後、すぐに警察官になったわけではありません。一度教師になるのですが、ある出来事をきっかけに教職を辞め転職。持ち前の鋭い観察眼で手がかりを見つけ出し、次々と事件を解決していきます。加賀が抱える親子の謎、複雑な家庭環境もシリーズを読み進めていく上での注目ポイントです。

『麒麟の翼』はシリーズ9作目。刑事としてそして元教育者としてしかるべき行動をする加賀の人情にグッときます。人間ドラマ的要素が強めの物語ですが、しっかりとミステリーなのはさすが。謎を解いてスッキリ解決、で終わらず、いろいろと考えさせられる作品です。

信濃譲ニシリーズ

『放浪探偵と七つの殺人』
歌野晶午(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

神出鬼没の放浪探偵・信濃譲ニの特徴といえば、ラフすぎる服装。増補版の書影のイラストがまさにこの人という感じです。見た目はこんな感じですが、推理は王道というギャップも魅了。長編は『長い家の殺人』『白い家の殺人』『動く家の殺人』の三冊で完結、『放浪探偵と七つの殺人』では8編のエピソードを集めた短編集になっています。 神出鬼没というだけあって、8編それぞれでの登場の仕方が面白い!

事件が彼を呼ぶのか、彼が事件を呼ぶのか。短編ですが本格的なトリックでひねりが効いていて読み応えたっぷり。ストーリーはもちろん、信濃譲ニというキャラクターを堪能できる一冊です。

円紫さんと私シリーズ

『空飛ぶ馬』
北村薫(著)
出版社(レーベル):東京創元社

博識な落語家・春桜亭円紫が探偵役となり、女子大生の“私”が遭遇する日常の謎を解き明かしていくシリーズで、いわゆるコージーミステリー。本格推理小説であると同時に、爽やかな青春物語でもある本作では、語り手である“私”の成長も描かれます。“私”が円紫との交流を通じ、文学的教養を深めていく姿も見どころです。

『空飛ぶ馬』は北村薫のデビュー作。犯罪が絡まず、事件事件していないのですが、しっかりと謎に満ちているのでミステリー好きの心がくすぐられます。日常のなんてことない出来事をミステリーのように感じさせるのは探偵役が落語家だからというのも理由のひとつ。噺家の手腕が伝わり、落語にも興味が湧いてきます。

百鬼夜行シリーズ

『姑獲鳥の夏』
京極夏彦(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

長編9作、中短編集6冊のシリーズ。物語の舞台は、昭和20年代後半の東京。次々と巻き起こる事件に、小説家の関口巽、探偵の榎木津礼二郎、刑事の木場修太郎らおなじみの面々が関わっていきます。タイトルはすべて妖怪に由来しているのもこのシリーズの特徴です。難事件を解決するのは「この世には不思議なことなど何もない」が口癖の京極堂こと中禅寺秋彦。古本屋を営む京極堂は、宗教や民俗学、心理学、物理学などあらゆる分野に通じており、先祖代々の神社を守る神主でもあります。魅力的なキャラクターが多数登場するのも百鬼夜行シリーズの特徴です。

『姑獲鳥の夏』は京極夏彦のデビュー作。ミステリーと妖怪。妖怪などが登場すると非現実的な話になりがちですが、現実的な存在として論理的なミステリーと非常にうまくマッチして描かれています。本作を通じて民俗学に興味が湧いたという声も多い作品。京極堂のキャラ、語りにハマります。

最後に

天才的な頭脳を持ち、素晴らしい推理力を発揮し、読み手を魅了する探偵たち。お気に入りの探偵を見つけて、シリーズを読破し、どっぷりとその魅力にハマってみてはいかがでしょうか。

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タナカシノブ
紹介文:2015年9月よりフリーライターとして活動中。映画、ライブ、歌舞伎、落語、美術館にふらりと行くのが好き。