2025/10/15

【英国ハロウィン事情】いまいち盛り上がらない理由は?トリック・オア・トリートのルールも解説

イギリスでも、じわじわと人気が上がってきているハロウィン。とはいえ、子どものイベント的な位置付けで、アメリカほどの盛り上がりはありません。そこで今回は、イギリスでハロウィンのお祝いがいまいち浸透しない理由や、かつてイギリスにもあったハロウィンの風習、「トリック・オア・トリート」の暗黙のルールなどをまとめてご紹介したいと思います。ハロウィン前・当日のイギリスの様子も、あわせて楽しんでいただければ幸いです。

ハロウィンの起源

イギリスでは、ハロウィンの発祥地はアメリカだと思っている人も珍しくありません。筆者も「アメリカのイベントなんて祝わない!」という年配のイギリス人に何度か出会ったことがあります。

しかし、実際にはハロウィンの起源は現在のアイルランド。古代ケルトの収穫と冬のはじまりを祝う祭礼、「サウィン(Samhain)」がはじまりといわれています。ケルトの暦では、11月1日は新年。サウィンは10月31日夜(夏の終わり・1年の終わり)から11月1日(冬のはじまり・1年のはじまり)にかけて祝われていました。

サウィンの間は現世と来世の境界が弱まり、死者の魂が家族のもとに帰って来ると信じられており、ついでに悪霊も一緒にあの世から来てしまうのだとか。そのため、人々は焚き火などをして悪霊を追い払っていました。仮装については諸説ありますが、アイルランド大使館によると、幽霊・妖精・ゴブリン・悪魔などの姿をして戻ってくる家族の魂が機嫌を損ねないように、食べ物や飲み物を準備したり、自分たちも不気味な仮装をして身を隠していたそうです。(参照:アイルランド大使館

現在の「ジャック・オー・ランタン」も悪霊よけとして使われていました。ただし、当時はカボチャではなくカブでした。ハロウィンがアメリカに渡ったときに、この時期に多く収穫されるカボチャに変わったといわれています。

イギリスでも祝われていた風変わりなハロウィン

アメリカのテレビや映画などの影響を受けて、現在のようなハロウィンのイベントがイギリスで定着し始めたのは1990年代後半。「ハロウィンはアメリカのイベント」というイギリス人が多いのにもうなずけます。

しかし、イギリス各地には古くから祝われていた、ご当地バージョンのハロウィンが存在します。なかには姿を消した習慣も少なくありませんが、そのなかから少し変わった祝い方をいくつかご紹介しますね。

ソウリング(Souling)

ソウリング(Souling)は、イギリス各地で何世紀にも渡り行われていました。貧しい若者たちが「ソウリングソング(Souling Song)」を歌いながら近所の家を巡り、ソウルケーキ(Soul Cake)をもらうという習慣で、トリック・オア・トリートの起源ともいわれています。

ソウルケーキは丸い形のショートブレッドのようなお菓子。表面に十字の切り込みがあるのが特徴です。

アラン・デー(Allan Day)

コーンウォール地方には、10月31日の夜に子どもたちがアランという品種のリンゴを枕元に置くアラン・デー(Allan Day)という伝統もありました。セント・アイヴス(St Ives)では、1870年代まで行われていたそうです。

リーティング(Leeting)

ランカシャー地方では、毎年ハロウィンになるとペンドルの森で魔女たちが集会を開くと信じられていました。そこで、ろうそくに火を灯してペンドル周辺の丘陵地帯を歩き回るリーティング(Leeting)という習慣が誕生。夜の11時から12時の間に火が消えなければ、魔女を追い払えたというしるしなのだとか。ちなみに、ペンドルの森は魔女裁判で有名な場所です。

ハロウィン・フットボール(Halloween Football)

スコットランド北部の海岸沿いの村カレンでは、ハロウィンにフットボール(サッカー)や徒競走といったスポーツを楽しむ不思議な習慣がありました。村から海岸へと向かう道中はバグパイプ奏者が先導。村に戻ってからも盛大なパーティが催されたそうです。

アップル・ボビング(Apple Bobbing)

アップル・ボビング(Apple Bobbing)は、大きなバケツに水を張り、浮かべたリンゴを口だけで取るというゲーム。サウィンでも行われていた伝統的な遊びで、現在でも子ども向けのイベントで見かけることがあります。

アップル・ボビングと聞いて、名探偵ポワロ好きの人は「ハロウィーン・パーティー」のエピソードを思い出したのではないでしょうか?少女がアップル・ボビングの水槽に頭を入れて溺死するという、ハロウィンにちなんだ事件。オリヴァ夫人が登場する、筆者のお気に入りのエピソードのひとつでもあります。

イギリスでハロウィンがいまひとつ盛り上がらない理由

イギリスでも、以前に比べるとハロウィンの飾り付けをする家庭や、トリック・オア・トリートに出かける子どもたちの数は圧倒的に増えています。とはいえ、まだまだ国民的なイベントとまではいきません。

その最大の理由は、ズバリ「タイミングが悪い」。

ハロウィンと同時期に、インド最大のお祭り「ディワリ(Diwali)」があります。ディワリはヒンドゥー教の新年を祝うお祭りで、「光の祭典」とも呼ばれています。そして、11月5日には打ち上げ花火が盛大に上がるガイ・フォークス・ナイト(Guy Fawkes Night)が控えており、イベントが目白押しです。

ガイ・フォークス・ナイトが終わると、本格的にクリスマスモードに突入。スーパーマーケットにハロウィン売り場が開設される期間も1か月くらいで、ハロウィンの翌日にはクリスマス一色に変わっています。

ディワリ、ガイ・フォークス・ナイト、クリスマスというビッグイベントに比べると、ハロウィンの存在感はまだまだ薄めです。とはいえ、最近では、ハロウィンがガイ・フォークス・ナイトの人気を上回る日も近いという声もあがっています。

ガイ・フォークス・ナイトとは?

ガイ・フォークスは、1605年に発覚した火薬陰謀事件の実行責任者として逮捕された人物。ウエストミンスター宮殿(国会議事堂)を爆破してジェームズ1世を殺害する陰謀が未遂に終わり、翌5日の夜にジェームズ1世の存命を祝って市民たちがロンドン中で焚き火を行ったのがガイ・フォークス・ナイトのはじまりです。

最近では花火の日として知られていますが、もともとは11月5日の晩に焚き火(Bonfire)を炊き、そこでガイ・フォークスを模した人形を火炙りにするというちょっと残酷な習慣です。ちなみに、ガイ・フォークス・ナイトの背景を知っていると、「SHERLOCK(シャーロック)」S3E1「空の霊柩車」がもっとおもしろくなりますよ。

イギリスでのハロウィンの祝い方

ここからは、現在のイギリスでのハロウィンの楽しみ方の定番をご紹介します。

トリック・オア・トリート

子どもたちが仮装して、お菓子をもらいに近所を回るトリック・オア・トリート。何人かで集まって、大人と一緒に回るのが一般的です。はじめの頃は地域住人との間で色々とトラブルが起きたため、最近では地域のSNSグループでトリック・オア・トリートに参加する家をまとめた地図を作ることも。また、ジャック・オー・ランタンに火が灯っている家にしか行ってはいけない、という暗黙のルールもあります。

ドアを開ける大人もノリノリで仮装。我が家の近所では、毎年大人向けにテキーラのショットをトリック・オア・トリートで配る家もあります。

時間帯は夕方の5時くらいから、遅くても7時くらいまで。10月の最終日曜には冬時間が始まり、5時でもすでに外は真っ暗です。あくまでも子どもたちのイベントなので、あまり遅くまでは出歩きません。

お菓子をもらったら、「Thank you」「Happy Halloween!」とお礼を言うのも忘れずに。

パンプキンカービング

ハロウィンといえば、カボチャをくり抜いて作るジャック・オー・ランタン。10月になると、スーパーマーケットでは大きなカボチャが山積みで売られ始めます。

カービングナイフを使えば自宅でも簡単に作れますが、ハロウィン前にはさまざまな場所でパンプキンカービングのワークショップも開催。子どもに人気のイベントです。

こんな手の込んだジャック・オー・ランタンを毎年作る家もあります。

カボチャ狩り

農園でカボチャの収穫体験をするイベントも人気があります。入場料を払い、気に入ったカボチャがあれば購入できるという仕組みで、値段はカボチャのサイズによって決まります。見渡す限りカボチャ、カボチャ、カボチャの風景は圧巻です。

我が家が毎年行くカボチャ農園は、ロンドンから南に約45kmの位置にあるCrawleyのTulleys Farm。Tulleys Farmは、夜になると「Shocktober Fest」というヨーロッパ最大級のスクリームテーマパークを開催していることでも有名です。お化け屋敷はもちろん、さまざまなアトラクションを楽しめますよ。

最後に

ガイ・フォークス・ナイトやクリスマスに押されてあっという間に過ぎてしまうイギリスのハロウィンですが、調べてみるとなかなか歴史のあるお祭りでした。2024年からは王立植物園のキューガーデンでもハロウィン・トレイル「Halloween at Kew」を開始。大人もハロウィンの雰囲気を満喫できるイベントが増えてきています。

もちろん、子どもにはトリック・オア・トリートが大人気。イギリスでトリック・オア・トリートに行く機会があれば、ぜひ暗黙のルールを守って安全に楽しんでくださいね!

(文・写真:柴田 冴)

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柴田 冴
ロンドン在住ライター|子どもの頃にアガサ・クリスティーの虜になって以来、謎解き・推理ドラマの沼にどっぷりつかっています。好きな言葉は「伏線回収」。