隙間時間にも手に取りやすい短編小説。大好きなミステリー小説には常に触れていたい、サクッと読めるミステリー小説で謎解きの醍醐味を堪能したい、ミステリーのトリックやパターンをたくさん知りたい、そんな方におすすめの日本の傑作短編ミステリー小説をご紹介します。
ミステリー小説初心者でまだ自分のお気に入りの作家が分からないという方は、自分に合う作家を知るために、短編から挑戦してみてはいかがでしょうか。作家縛りで“傑作選”などとあれば、一冊でいくつもの名作を楽しむことができ、作家の癖なども把握することができます。短編集には一編ごとに独立しているものあれば、連作短編集のように物語がリンクし、ラストに真相が明らかになるタイプも。ミステリー小説好きなら、隙間時間にサクッと読んでさまざまな事件を解決し、ミステリー小説脳を鍛える練習にも。『10分間ミステリー』(『このミステリーがすごい!』大賞編集部(編)/宝島社)や『4ページミステリー 60の奇妙な事件』(蒼井上鷹(著)/双葉社)などは、10分、4ページなどと具体的な数字が出ているので、ちょっとクイズにチャレンジする感覚で謎解き脳を鍛える一冊としてもおすすめです。

榊林銘(著)
出版社(レーベル):東京創元社
撃たれて死ぬまでの十五秒間で、私は必ず犯人を告発してみせる。〈十五秒後に死ぬ〉という奇抜な状況設定で起きる四つの事件。トリッキーな状況設定で起きる四つの事件の真相を、見破れるか?
15秒で何ができるのか。ちょっと無茶かな?と思う部分はあれど、展開も早い物語にワクワクしっぱなしの特殊設定のミステリー短編集です。テイストにも被りがないので、飽きずに読めるのもポイントです。

有栖川有栖(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
奇怪な暗号、消えた殺人犯人に犯罪臨床学者・火村英生とミステリ作家・有栖川有栖の絶妙コンビが挑む、国名シリーズ、第1弾。
気軽にミステリーが楽しめる6篇の短編集です。会話劇が好きな方にもおすすめ。暗号もの、密室もの、毒殺、ダイイングメッセージに犯人当てなど盛りだくさんで、短編でもミステリーの醍醐味を存分に堪能できます。エラリー・クイーンの国名シリーズに向けて練習も兼ねて読むのもいいかも。

米澤穂信(著)
出版社(レーベル):新潮文庫
史上初めての三冠を達成したミステリー短篇集の金字塔。山本周五郎賞受賞。全6篇を収録の連作短編集。
作品によって文体まで変えるなど手の込んだ物語の紡ぎ方に一気に引き込まれます。ひと捻りもふた捻りもあるミステリーで、設定やストーリーがとにかく興味深いのもポイントです。短編ですが重厚感もたっぷり。なんとも言えない後味も魅力です。

深緑野分(著)
出版社(レーベル):東京創元社
第7回ミステリーズ!新人賞の佳作も収録の、異なる場所、異なる時代を舞台に“少女”という謎を描き上げた5篇からなる短編集。
謎解きが薄めなものもありますが、作品それぞれに独特の空気感、世界観があり、そこに引き込まれる楽しさが味わえます。全体に漂うゴシック的な雰囲気も魅力。場所も時代も異なる中で何かしらの世界と戦う少女たちの物語が展開します。筆者ならではのシニカルな表現にもハマります。

北山猛邦(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
やさしく、美しく、甘やかな世界が、ラストの数行で、残酷に崩壊する快感。景色が反転し、足元が揺らぎ、別な宇宙に放り出されたかのような、痛みを伴う衝撃。かつて、まだ私たちが世界に馴染んでいなかった頃の、無垢な感情を立ち上がらせてくれる、ファンタジックな短編集。
バリエーション豊かな5篇の物語が堪能できる一冊。ファンタジーっぽい設定なのに、結末がどれもちょっと怖め。全体的にダークな雰囲気を纏っていて、ゾワッとする読後感はイヤミスといった印象が強めです。ちょっと引きずる余韻も意外と心地よい!

大山誠一郎(著)
出版社(レーベル):実業之日本社
美谷時計店には「時計修理承ります」とともに「アリバイ崩し承ります」という貼り紙がある。難事件に頭を悩ませる新米刑事はアリバイ崩しを依頼する。ストーカーと化した元夫のアリバイ、郵便ポストに投函された拳銃のアリバイ……7つの事件や謎を、店主の美谷時乃は解決できるのか!?
「2019本格ミステリ・ベスト10」第1位の人気作は読んでおきたいところ。ちょっと現実離れしたトリックでファンタジックなミステリーが展開します。2020年、浜辺美波主演で連続TVドラマ化。

芦沢央(著)
出版社(レーベル):新潮文庫
超弩級のどんでん返し、5連発!ミステリーランキングを席巻した傑作短編集は、人の心に潜む闇を巧緻なミステリーに昇華させた5編を収録。
いや~な汗が背中を伝うようなゾクゾク感を楽しみたい方におすすめの短編集です。やっぱり人間って怖い!と再認識させられます。心理的にじわじわと追い込まれていく過程は、はっきり言って気持ちのいいものではないのですが、いやだなぁと思いながらも読み進められてしまうパワーを感じる一冊です。

水生大海(著)
出版社(レーベル):双葉文庫
©水生大海/双葉文庫
どの短編もラストで景色が一変する「どんでん返し」をテーマに描いたミステリー5篇を収録。最後の最後で驚きたい!という願望を満たしてくれる短編集です。
どんでん返しものに慣れている方だと展開が分かってしまうものも多いかもですが、手軽に読めるミステリーでどんでん返しの楽しさが味わえます。どんでん返しがテーマとなると構えてしまいがちですが、短編なので読みやすいどんでん返しなのもポイント。本格というより導入として!という気持ちで読みたい方におすすめです。

横山秀夫(著)
出版社(レーベル):文藝春秋
警察一家の要となる人事担当の二渡真治は、天下りポストに固執する大物OBの説得にあたる。にべなく撥ねつけられた二渡が周囲を探るうち、ある未解決事件が浮かび上がってきた……。横山秀夫「D県警シリーズ」の始まりの物語、短篇4篇を収録。
警察内部の人間模様を息が詰まるリアルなエンタメ仕立てで送る4篇。システムの中で苦しむ人間の心が突き刺すように伝わってきます。主人公は派手なヒーローでもなく、クセの強い名探偵でもない。ただひたすら地道に事件を解決していく等身大の刑事たちの人間模様が絡み合う様はリアリティがあってよき。

鳥飼否宇(著)
出版社(レーベル):東京創元社
終末監獄を舞台に奇想と逆説が横溢する渾身の連作長編。第16回本格ミステリ大賞受賞作。
舞台は世界各国から集められた死刑囚を収容する監獄。そこで次々と不可解な事件が起き、囚人のシュルツとアランが謎を解いていく物語が展開します。終末監獄という閉ざされた空間で起きる事件にワクワク&ゾクゾク。短編集であり連作長編でもあり。待ち構える衝撃のラストにご期待!

青木知己(著)
出版社(レーベル):東京創元社
運行しているはずのない深夜バスに乗って、彼は摩訶不思議な光景に遭遇した──
あの手この手で謎解きのおもしろさを描いた<ミステリー・ショーケース>!
フーダニット、時刻表トリックなど異なった趣の短編5篇を収録。どの話の結末にも驚きあり。ホラーありコメディタッチありとテーマが多彩なのもポイント。グロさも殺戮的なものもないので、純粋にミステリーに浸りたい時にもおすすめです。

泡坂妻夫(著)
出版社(レーベル):東京創元社
ひとけのない宮前空港で、折からの驟雨にずぶ濡れになって、約二時間も佇んでいる中年男がいた。宮前署の羽田刑事だ。彼はまもなく到着予定の旅客機を待っていた。この機の離陸直前、何者かが爆破を予告したのだ。ふと目を転じた羽田は、写真機のそばを動き回る三人の男に気がついた。中でも、長身の美青年の奇妙な動きが……。隙のない服装と端麗な顔立ち、だが、その挙動は常におどおどして落ち着きがない
ユニークな名探偵亜愛一郎が次々と難事件に挑戦する傑作事件簿。書影につられて手にした一冊ですが、ポンコツな亜愛一郎と推理の冴え具合とのギャップにハマります。

麻耶雄嵩(著)
出版社(レーベル):集英社文庫
推理作家の美袋三条は、知人の別荘で出会った佑美子に刹那的に恋をする。しかし彼女は間もなく死体で発見され、美袋が第一容疑者とされてしまった! 事件に巻き込まれやすい美袋と、「解決できない事件など存在しない」と豪語する魔性の名探偵・メルカトル鮎が挑む巧緻な謎の数々。脱出不能な密室殺人から、関係者全員にアリバイが成立する不可能犯罪まで――。奇才が放つ、衝撃本格推理集。
名探偵・メルカトル鮎が出くわした事件を綴った短編集では、ストーリーテラーを担う推理小説家の美袋三条がワトソン役となっています。一応!?次々に事件は解決しますが、なんとも言えないスッキリしない感じが残る、そんなところもなんだか魅力的な作品です。

有栖川有栖(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
2年に一度開かれていた“同窓会(リユニオン)”の当日、メンバーの一人が殺され、被害者のはめていた腕時計が消失! いったいなぜか……。火村の示した間然するところのない推理に「犯人」が最後に明かした「動機」とは。謎解きの醍醐味が堪能できる超絶の全4篇を収録した国名シリーズ第7弾!
ダイイングメッセージ、首なし死体、密室、ロジックといったテーマを扱った作品が収録されています。シリーズの中でも何回も読み返したくなる短編集ともいえる傑作としておすすめしたい一冊です。

我孫子武丸(著)
出版社(レーベル):集英社文庫
ファンおなじみの速水三兄妹の活躍や、自分自身の行動調査を探偵に依頼した男など傑作8篇を収録したミステリー短編集。話題の個人文庫堂々の完結巻のタイトル「謎の巻」。タイトル通り、謎だらけの1冊になっています。
ミステリーのみならず、サスペンス、SFなど様々なテーマが絡み、痛快なテンポで物語が展開していきます。アイデアの面白さだけに終わっていないのもハマるポイント。トリックはシンプルなものが多めですが、見せ方の巧さに唸らされます。古典的トリックの活用法もよき!

道尾秀介(著)
出版社(レーベル):文藝春秋
“写真”が暴くもうひとつの真相を見抜けるか。各章の最終ページに登場する一枚の写真。その意味が解った瞬間、読んでいた物語は一変する――。一見平和に見える白沢市と蝦蟇倉市で起きた事件を綴った連作短編集です。
各章の最後に1枚の写真が掲載されていて、読者にも推理をさせる体験型ミステリーになっています。巧みな時系列トリックは圧巻。騙されまいと警戒しながら読んでいても、ラストでひっくり返される感覚が病みつきになる! 二度読みどころか、何度も読み返したくなる一冊です。

赤川次郎(著)
出版社(レーベル):集英社文庫
わずか一滴で致死量に達し、しかも検出不可能という完全犯罪を約束する毒の小ビン。愛人をうとましく思う週刊誌記者から刑事、女性タレント、首相暗殺を企てる過激派へと“毒”は人々の手を転々とする――。
人々の心の深奥に潜む殺意を横糸に、軽妙な恋のかけひきを縦糸にからませたオムニバス長編ミステリーです。この設定は…と思いながらも、気づけばのめり込んでしまいます。駆け引きだらけの人間関係と毒薬の行方にハラハラしながら浸ってしまう、古典ミステリー。時代感はあれど、古さは感じられません。

乙一(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫
人間の残酷な面を覗きたがる者〈GOTH〉を描き本格ミステリ大賞に輝いた乙一の出世作。「夜」を巡る短篇3作を収録した「GOTH」シリーズ1冊目。
人間の行動範囲を超えた超常的な何かが垣間見える作品。殺人に偏執的な「僕」と、人間の残虐さに固執する美少女・森野夜。2人が遭遇するのは確かに人間が起こした事件なのですが、単なるミステリー小説としてくくることができない恐怖を湛えているのもチェックポイントです。

呉勝浩(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川書店
物語に翻弄される快感。胸を貫くカタルシス。文学性を併せ持つ、『爆弾』『スワン』の気鋭が放つ珠玉のミステリー6篇を収録。
ちょっと特殊な設定ありで不思議な雰囲気が漂う話が展開するので、好みは分かれるかも。6篇はすべて変わった設定なうえに、毛色も違うという点で筆者の引き出しの豊富さに脱帽。ミステリーというよりも最後に「あ、なるほど」と思えるような一捻りありの物語が展開します。

麻耶雄嵩(著)
出版社(レーベル):文藝春秋
1行目から真犯人の名前をズバリ公開!? 極北を行く麻耶ミステリー。衝撃的な展開と後味の悪さでミステリー界を震撼させ、本格ミステリ大賞に輝いた超話題作です。
神様シリーズ第2弾は後味ビターな短編を収録。「犯人は○○だよ」から始まるミステリーが展開します。小学生ながら、事件の真相に迫り、恋愛もあったりする物語で、ジュブナイル感も漂います。

似鳥鶏(著)
出版社(レーベル):講談社タイガ
すべての短編に叙述トリックが含まれている、本格ミステリ界の旗手が仕掛ける前代未聞の読者への挑戦状!
すべての作品には叙述トリックが使われていると冒頭でネタバレされていますが、それでも騙されてしまうという楽しさが味わえます。コミカルな会話劇も面白く、推理力だけでなく読解力も試されるミステリー集。

矢樹純(著)
出版社(レーベル):祥伝社文庫
漫画原作者としても活躍するストーリーテラーが仕掛ける、家族の“軋み”を鋭く捉えた9篇を収録した短編集は9つすべてがどんでん返し!という短編ながらミステリーの醍醐味を存分に堪能できる一冊です。
中には救いのあるラストもあれど、イヤミスと称されるだけあって当然ハッピーエンドとは言えない結末がメイン。しかし、読後感はそこまで悪くはないのは共感を呼ぶ主人公のキャラクター描写にあり。こういったところにも漫画原作者らしさを感じます。

鮎川哲也(著)北村薫(編)
出版社(レーベル):東京創元社
江戸川乱歩が当時期待の新人だった鮎川哲也に実績を積ませるべく立て続けに書かせた短編を中心に収録した短編集。全編乱歩によるルーブリック付き。
ルーブリックとは紹介文のこと。江戸川乱歩が鮎川哲也に対して抱いていた期待の高さを感じられるのもポイントです。トリックなどには時代的に若干の古さを感じる部分がなきにしもあらずですが、鮎川哲也の新しいトリックへの情熱のようなものが伝わってきます。マニアックさを滲ませながらも初心者でも触れておきたいと思わせる面白さは、親しみやすい文章だから?!

江戸川乱歩(著)
出版社(レーベル):東京創元社
江戸川乱歩が編んだ世紀の必読アンソロジーの全面リニューアル版。編者江戸川乱歩の愛読する珠玉の名作を厳選して全5巻に収録し、併せて19世紀半ばから1950年代に至るまでの短編推理小説の歴史的展望を読者に提供!
古き良き時代の名作を短編ながらもじっくりと味わえるシリーズです。古典ミステリー、いわゆる昔のミステリーを読んでみたいけれど、ちょっと敷居が高く感じる…という初心者であれば、名作は短編から入るのがおすすめ。個性的な作品も多いので好みも見つかる可能性高めです。

米澤穂信(著)
出版社(レーベル):新潮文庫
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。
不気味なストーリー展開、無垢な残虐性に終始ゾクゾク。ダークなイヤミスといった印象の短編5編が収められています。読み終わってから理解したような気になっても、なんかモヤモヤが残る感じがしてすぐに再読したくなるような作品群です。

綾辻行人(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
ミステリ作家・綾辻行人に持ち込まれる“問題”はひと筋縄ではいかないものばかり。崩落して誰も渡れなくなった〈どんどん橋〉の向こう側で、燃える〈ぼうぼう森〉の中で、明るく平和だったはずのあの一家で……勃発する難事件の”犯人”は誰か? 超絶技巧がちりばめられた五つの超難問に挑め!
ミステリシーンを騒然とさせた好評の作品集が読みやすい改訂新装版に。5つの短編全てに読者への挑戦状がついています。印象としては”一風変わった犯人当てミステリー”。騙されないぞと思うと次の瞬間、ものの見事に騙されている感もたまりません。

麻耶雄嵩(著)
出版社(レーベル):集英社文庫
信州の山荘で、鍵の掛かった密室状態の部屋から会社社長の遺体が発見された。自殺か、他殺か? 捜査に乗り出した警察の前に、突如あらわれた男がいた。その名も「貴族探偵」。警察上部への強力なコネと、執事やメイドら使用人を駆使して、数々の難事件を解決してゆく。斬新かつ精緻なトリックと強烈なキャラクターが融合した、かつてないディテクティブ・ミステリー!
癖のある、いや、癖のありすぎるキャラクターがお好みの方はぜひ。探偵と名乗りつつ、実際に動くのは執事やメイドというまさに”貴族”な探偵が主人公です。さらには「推理などという面倒なことは使用人に任せておけばいい」と言い放つある種の潔さ。そう、貴族探偵は捜査も推理もしないのです。この斬新な設定を面白いと思えるなら、存分に楽しめるはず。

法月綸太郎(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
殺人事件の被害者が残した「=Y」の文字は、はたして何を意味するのか!? エラリイ・クイーンへのオマージュである、ダイイング・メッセージものの傑作「イコールYの悲劇」、第55回日本推理作家協会賞受賞作「都市伝説パズル」など、探偵・法月綸太郎のロジカルな推理が堪能できる本格ミステリ5編を収録した短編集。
法月警視の作家の息子・綸太郎が探偵となり、殺人事件の謎を解いていきます。謎を解いていくと言ったばかりですが、推理を外す感じがエラリイっぽくって面白いのもポイント。父の法月警視が息子の綸太郎に事件の謎を打ち明け、二人で意見をかわしながら推理を検証していく。ここで交わされる法月親子の会話も魅力的です。

泡坂妻夫(著)
出版社(レーベル):東京創元社
困っているときには、ことさら身なりに気を配り、紳士の心でいなければならない、という近衛真澄の教えを守り、服装を整えて多武の山公園へ赴いた島津亮彦。折よく近衛に会い、2人で鍋を囲んだが……。騙しの美学に彩られた8編を収録した一冊。
テイストの違う短編がズラリと揃っていて、どれも面白い。思わずニヤッとするユーモアさや温かみを感じたり、鋭い切れ味を堪能できるものアリ。トリッキーな仕掛けはミステリーというよりマジックのような印象にも見えますが、意表をつく設定に心は終始ワクワクです。

有栖川有栖(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
2年に一度開かれていた“同窓会(リユニオン)”の当日、メンバーの一人が殺され、被害者のはめていた腕時計が消失! 一体なぜか……。火村の示した間然するところのない推理に「犯人」が最後に明かした「動機」とは。表題作ほか謎解きの醍醐味が堪能できる超絶の全4篇。
有栖川国名シリーズ第7弾となる短編集。おなじみアリスと火村の国名シリーズはどこから読んでもおすすめ。シリーズ第7弾となる本作も安定のクオリティの4篇ダイイングメッセージ、首なし死体、密室、ロジックものが収録。シリーズ第7弾となってもマンネリとは無縁。テンポよく読み進められるのも本シリーズの特長です。

横山秀夫(著)
出版社(レーベル):集英社文庫
殺人事件の時効成立目前。現場の刑事にも知らされず、巧妙に仕組まれていた「第三の時効」とはいったい何か? 刑事たちの生々しい葛藤と、逮捕への執念を鋭くえぐる表題作ほか、全六篇の連作短篇集。
笑わない「青鬼」朽木、公安出身の「冷血」楠見、ずば抜けた直感力を持つ「天才」村瀬が活躍するF県警強行犯シリーズ第一弾です。警察内部のバチバチ感も見もの。ややややこしさを感じる話でもすっと入ってくる読みやすさも魅力です。

倉地淳(著)
出版社(レーベル):東京創元社
仔猫みたいなまん丸い目をした童顔の小男・名探偵猫丸先輩。いろんなところにひょっこり出没しては、おかしな謎を鮮やかに解き明かして去ってゆく、憎めない名探偵の最初の事件簿!
コミカルな筆致とロジカルな推理で読者を魅了し続ける正統派の本格推理作家・倉知淳が本格的なデビューを飾った連作集です。日常の何気ない生活の中に散りばめられている謎。親近感があって読みやすく、隙間時間におすすめです。書影や猫丸先輩シリーズといったネーミングからほっこりとした印象を抱くも、切なさや残酷さのある物語もアリな短編集です。

連城三紀彦(著)
出版社(レーベル):宝島社文庫
世田谷の某病院にかかってきた脅迫電話で呼び出された医師とその娘婿が、白衣を着せられ、首には針金が巻きつけられた奇妙な姿で遺体となって見つかった。妻の復讐のため、次々と殺人を犯す男の脳裏には、いつも一匹の鼠がいた……。深い情念と、超絶技巧。意外な結末が胸を打つ、サスペンス・ミステリーの傑作全9編を収録した短編集。
意外な結末が胸を打つ、サスペンス・ミステリーの傑作短篇集です。読ませる文章力に惹き込まれます。手軽に読める短編とは言い難い印象も若干ありますが、登場人物も少なめなので頭の中で整理しやすい。ミスリードを誘うような語り口も気づけば癖になっちゃいます。

松本清張(著)
出版社(レーベル):新潮文庫
安全と出世を願って平凡に生きる男の生活に影がさしはじめる。“密通”ともいうべき、後ろ暗く絶対に知られてはならない女関係。どこにでもあり、誰もが容易に経験しうる日常生活の中にひそむ深淵の恐ろしさを描いて絶賛された7篇を収めた連作短篇集。
結末は最後までなかなか分からず、終始スリリングな気持ちになれる読み応えアリの一冊。ミステリー小説というジャンルではあれど、トリックの謎解きだけではなく物語に深みを感じ、世界観に心地よく浸れるのもポイント。時代を超えて愛される理由をまざまざと知る一冊でもあります。

芦沢央(著)
出版社(レーベル):文春文庫
平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、元不倫相手を見返したい料理研究家……。きっかけはほんの些細な秘密だった。保身や油断、猜疑心や傲慢。内部から毒に蝕まれ、気がつけば取返しのつかない場所に立ち尽くしている自分に気づく。凶器のように研ぎ澄まされた“取扱い注意”の傑作短編集。
イヤミス好きにおすすめ! 読み終わった後のしばらく抜けないモヤモヤ感、じわじわとくるいや~な感じががたまらなく感じられるはず。サクッと手軽に読めるのが短編集の魅力と言いながら、なかなかの抜け出せない感があるのは作者らしさ。タイトルには「では、どこで拭けばよかったの?」とツッコミのような疑問を投げかけたくなる人も多いのではないでしょうか。

宮部みゆき(著)
出版社(レーベル):文春文庫
僕は三田村誠。中学1年。父と母そして妹の智子の4人家族だ。僕たちは念願のタウンハウスに引越したのだが、隣家の女性が室内で飼っているスピッツ・ミリーの鳴き声に終日悩まされることになった。僕と智子は、家によく遊びに来る毅彦おじさんと組み、ミリーを“誘拐"したのだが…。
オール讀物推理小説新人賞を受賞した表題作『我らが隣人の犯罪』以下「この子誰の子」「サボテンの花」「祝・殺人」「気分は自殺志願」の計5篇を収録。すーっと入ってくる読みやすい物語が揃っています。どの物語も登場人物がユニーク。それぞれに面白さがあり、グイグイと引き込む爽やかで読みやすいポップでライトな雰囲気の文章もGOOD。

東野圭吾(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
完全密室、時刻表トリック、バラバラ死体に童謡殺人。フーダニットからハウダニットまで、12の難事件に挑む名探偵・天下一大五郎。すべてのトリックを鮮やかに解き明かした名探偵が辿り着いた、恐るべき「ミステリ界の謎」とは?
ミステリーのよくある展開、いわゆる”お約束”と呼ばれるものをまとめた一冊。東野圭吾作品はシリアスなミステリーというイメージも定着しつつありますが、本作はブラック・ユーモアがたっぷり詰まっていて、くだけた感じもアリ。初期の作品から斬新な切り口で読み手を魅了。「さすがは東野圭吾!」と思わずにはいられません。

今邑彩(著)
出版社(レーベル):中公文庫
作家、評論家をはじめミステリーマニアの集まる下宿屋・時鐘(とけい)館。編集者の催促を前に「原稿は一枚も書けていない。勝手ながら『消失』する」との手紙を残し、締め切り直前の老推理作家が姿を消した。翌朝、発見された不格好な雪だるまに彼の死体が。犯人は編集者なのかそれとも…。マニアたちの展開する華麗でシビアな推理の行方は?
六編収録した短編集。単なるアリバイや物理トリックではなく人の心の闇を巧みにトリックとして利用している感じが筆者の特長とも言えるべきポイントでもあります。リアルな人間ドラマからSF寄りの作品まで。豊富なバリエーションも魅力の短編集です。

島田荘司(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
嵐の夜、マンションの11階から姿を消した男が、13分後、走る電車に飛びこんで死ぬ。しかし全力疾走しても辿りつけない距離で、その首には絞殺の痕もついていた。男は殺されるために謎の移動をしたのか?
奇想天外にして巧妙なトリックを秘めた4つの事件に名探偵・御手洗潔が挑む短編集第1弾です。短編ながら御手洗の推理力、行動力、破天荒さを存分に味わえます。どの話にもいくつものトリックが織り交ぜられ、長編のような豪華さも感じられます。

北森鴻(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
人生に必要なのは、とびっきりの料理とビール、それから、ひとつまみの謎。三軒茶屋の路地裏にたたずむ、ビアバー「香菜里屋」。この店には今夜も、大切な思いを胸に秘めた人々が訪れる――。
第52回日本推理作家協会賞 短編および連作短編集部門受賞の短編集です。それぞれが少しずつリンクしてひとつの物語になっています。ビールをグビグビと飲むように、どんどん読み進められる一冊。寡黙なマスターとの会話から事件が解決へと向かっていくという設定にも面白みを感じます。ビアバー「香菜里屋」が実際にあったら通いたい! と思わずにはいられません。

青崎有吾(著)
出版社(レーベル):東京創元社
“平成のエラリー・クイーン”と称された青崎有吾が、人気コミックのトリビュート作やショートショートまで、デビューから10年の昇華である全8編を収録した短編集。
ミステリーはもちろん、アクション、SFと様々な世界観の多様な物語が揃っています。それぞれに登場人物も背景も違うけれど、それぞれが魅力的。オリジナル性の高い作品群。作者による解説も読み応えアリ。短編らしい謎の提示と種明かしがあるのもポイント。

法月綸太郎(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫
日常に退屈した者が集い、世に秘められた珍奇な話や猟奇譚を披露する「赤い部屋」。新会員のT氏は、これまで九十九人の命を奪ったという恐るべき〈殺人遊戯〉について語りはじめる――。
江戸川乱歩の名作短篇「赤い部屋」に捧げる表題作ほか、著者が敬愛する作品へのオマージュだけを集めた全9篇の短編集。古今東西の名作ミステリーをオマージュした物語ですが、元ネタを知らなくても楽しめます。ウィットを効かせ再構築したストーリー展開はどれも極上。二転三転にとどまらず、さらに何転もするのが特長。一篇終わるごとに挟まれる著者による解説ではオマージュ作品をこれでもかとばかりに熱く語っていて、物語を一層楽しめる要素の一つになっています。
短編ながらじっくりと引き込まれるミステリーが楽しめる作品ばかり。ミステリーのトリックやパターンを一冊で一気にたくさん知ることができるのも短編集のいいところ。隙間時間に読むはずが、気づけばどっぷり…なんてことにもなりかねませんが、いろいろな短編集に触れることで、好みのミステリー作品、作家を探してみてはいかがでしょうか。
ミステリードラマもチェック!
ミステリーチャンネルでは、「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」「シャーロック・ホームズの冒険」「ヴェラ~信念の女警部~」など英国の本格ミステリーをはじめ、「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」などのヨーロッパの話題作や「刑事コロンボ」といった名作、人気小説が原作の日本のミステリーまで、選りすぐりのミステリードラマを放送しています。
ミステリーチャンネルでの放送番組に関するお問い合わせは、ミステリーチャンネル カスタマーセンターまで。
ミステリーチャンネルについて
世界各国の上質なドラマをお届けする日本唯一のミステリー専門チャンネル。「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」「シャーロック・ホームズの冒険」「ヴェラ~信念の女警部~」など英国の本格ミステリーをはじめ、「アストリッドとラファエル文書係の事件録」などのヨーロッパの話題作や「刑事コロンボ」といった名作、人気小説が原作の日本のミステリーまで、選りすぐりのドラマが集結!ここでしか見られない独占放送の最新作も続々オンエア!
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