2024/09/06

【最新の話題作をチェック!】2024年7-9月ミステリー小説新刊情報

お気に入りの本を何度も繰り返し読むのも楽しいですが、新作や話題の本はいち早くチェックしたいもの。ミステリー小説なら、誰よりも早く謎解きをして事件解決!という爽快感を味わうこともできます。シリーズ最新作や人気作家の最新作、そして注目のミステリー作家の作品まで、2024年も新作ミステリー小説が続々と登場。チェックしておきたいミステリー小説の新刊情報をお届けします!

2024年7-9月発売新刊ミステリー小説20選

『霧をはらう(上)』

発売日:2024年8月8日
雫井脩介(著)
出版社(レーベル):幻冬舎文庫

小児病棟で起きた点滴殺傷事件。4人の子供の点滴にインスリンが混入され、2人の幼い命が奪われた。物証がないまま逮捕されたのは、生き残った女児の母親。取り調べで自白するが、後に否認。娘を懸命に支えていた母親は冷酷な殺人犯なのか?

ひょんな事から弁護を任されることとなる伊豆原が勝算のない裁判に挑む!母親を信じたいけれど、信じてよいのか。無実に違いない、いや、無実であってほしいと心が揺さぶられながらなかなか真相に辿り着けない上巻。淡々と事件に挑む伊豆原とモヤモヤ、ヒヤヒヤな気持ちを抱えながらグイグイと引き込まれていく読み手の対比にも面白さを感じる一冊。

『極夜の灰』

発売日:2024年8月23日
サイモン・モックラー(著) 冨田ひろみ(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

1967年末。ある火災の調査のため、精神科医のジャックは、CIAから依頼され、顔と両手に重度の火傷を負い、記憶を失ったコナーという男と向かい合っていた。北極圏にある極秘基地の発電室で出火し、隊員2名が死亡。彼は唯一の生存者だという。火災現場の遺体の一方は人間の形を残していたが、もう一方は灰と骨と歯の塊。なぜ遺体の状態に差が出たのか。

米軍極秘基地からの撤退が決まり、残っていた3人が巻き込まれた原因不明の火災と不可解な遺体。撤退するはずの3人に何が起きたのか。精神科医のジャックが探偵のように密室で起きた謎の事件に迫っていくも、なかなか真相に辿り着かない。二転三転しながら真実が明らかになり、伏線の存在に気づくことで、より深みを感じる良質の時代ミステリー。

『終着点』

発売日:2024年8月22日
エヴァ・ドーラン(著) 玉木亨(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

ロンドンの集合住宅の一室。女性がひとり。死体がひとつ。見知らぬ男に襲われ、身を守ろうとして殺してしまったと女性は語る。死体は名も明かされぬまま、古びたエレベーターシャフトに隠された……。

過去に遡る章と未来へ進む章が交互に展開していくミステリー。はじまりと終わりに向かっていく物語は、最終章で全貌が明らかに。「終着点」がどうなっているのか。登場人物の心理描写も細かく描かれていて、読み応えあり。しかーし、寄り添えるキャラがいるかどうかは別の話だが、それも本作の仕掛けになっている。心地よい衝撃が味わえる物語。

『全員犯人、だけど被害者、しかも探偵』

発売日:2024年8月7日
下村敦史(著)
出版社(レーベル):幻冬舎

社長室で社長が殺された。それに「関わる」メンバーが7人ある廃墟に集められる。未亡人、記者、社員2人、運転手、清掃員、被害者遺族。やがて密室のスピーカーからある音声が流れる。「社長を殺した犯人だけ生きて帰してやる」。犯人以外は全員毒ガスで殺すと脅され、7人は命をかけた自供合戦を繰り広げる。

生き残れるのは犯人だけというクローズドサークルもの。生き残りをかけて真実と事実が入り乱れ、不毛な言い争いを繰り広げるデスゲーム。犯人候補、改め、犯人になりたい候補全員が推理を披露するも、そこに事実はナシ。だけど事実はどこかにあって…というややこしさがたまらない!

『名探偵の有害性』

発売日:2024年8月30日
桜庭一樹(著)
出版社(レーベル):東京創元社

かつて、名探偵の時代があった。ひとたび難事件が発生すれば、どこからともなく現れて、警察やマスコミの影響を受けることなく、論理的に謎を解いて去っていく正義の人、名探偵。そんな彼らは脚光を浴び、黄金時代を築き上げるに至ったが、平成中期以降は急速に忘れられていった。それから20年あまりの時が過ぎ、令和の世になった今、YouTubeの人気チャンネルで突如、名探偵の弾劾が開始された。その槍玉に挙げられたのは、名探偵四天王の一人、五狐焚風だった。

普通の人になっていたかつての名探偵と助手が20年後の再会を経て動き出す物語。過去の事件を振り返りながら旅をする元名探偵&元助手のコンビ。人間ドラマ的要素を味わいながら、正しさとは何かを考え、やっぱりミステリーには名探偵&助手が必要だと思わずにはいられません。

『雪山書店と嘘つきな死体』

発売日:2024年8月30日
アン・クレア(著) 谷泰子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

故郷の雪山に帰ってきたエリーは、姉のメグと看板猫のアガサとともにミステリー好きの集う書店、ブック・シャレーを切り盛りしていた。ある日、山腹と麓をつなぐゴンドラ内で男の刺殺体が発見される。男は直前に書店を訪れ、アガサ・クリスティ『春にして君を離れ』のサイン入り初版本と不可解なメモ書きを残していた。時を同じくして店からは従業員の女性が姿を消した。ふたつの事件は関係があるのか。

ミステリー好きの知恵を借りて事件を推理していくエリーとメグ。ミステリー好きとしてはクリスティの初版本がどう事件に絡んでくるのかが気になるポイントになるはず。看板猫がアガサというのもミステリー好きの心をくすぐります。

『新 謎解きはディナーのあとで』

発売日:2024年8月6日
東川篤哉(著)
出版社(レーベル):小学館文庫

宝生麗子の後輩にど天然な新米刑事・若宮愛里が加わり、警視庁に栄転した風祭警部は大きなミスを犯して国立署に舞い戻り、新たなメンバーで難事件に挑む。

大ヒットシリーズ、ユーモアミステリーの待望の新章がスタート。執事探偵・影山の推理と毒舌が冴えわたる、本格ミステリ全5編を収めています。このシリーズのポイントは“ユーモア”。ありえないトリックも、驚きの真相も、なぜか納得してしまうのはユーモアのおかげ。姿勢を正して読むというよりは、ゴロンと寝転んで読みたい気軽なミステリー。

『バター・コーヒーの舞台裏』

発売日:2024年8月7日
クレオ・コイル(著) 小川敏子(訳)
出版社(レーベル):コージーブックス 原書房

ついにビレッジブレンドが撮影ロケ地に選ばれた!往年の大スター、ジェリー・サリバンがコーヒーハウスにやってくるとあって、クレアは大喜び。ジェリーは大スターのオーラを放ちながらもとても気さくな人物で、すぐにバリスタたちとも打ち解けた。何もかもが順調に進むかに思えたのに、撮影初日から、不運な事故ばかりが続き……。

ニューヨークのコーヒー店「ビレッジブレンド」を舞台に展開する、コージー・ミステリーの人気シリーズ第20弾。シリーズでは好奇心とバイタリティで捜査活動に首を突っ込む主人公クレアが、家族や友人、恋人と協力しながら事件の解決へと導いていきます。巻末には作中に登場した(キーワードとなった)料理やデザートなどのレシピが紹介されているのもうれしい!

『心霊探偵八雲2 魂をつなぐもの』

発売日:2024年8月9日
神永学(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

少女の幽霊に取り憑かれた友人から相談を受けた晴香。死者の魂が見える赤い瞳を持つ大学生・斉藤八雲に話そうとするが、素直に伝えられない。晴香は亡き姉への後悔を幽霊に重ね、一人で調査を行うが――。時を同じくして、少女連続誘拐殺人が続発。事態は急転する。

累計750万部突破の「心霊探偵八雲シリーズ」の完全版第二弾。すべて見直し、すべてを改稿したというだけあって、読んで知っているストーリーでも深みを増し、内容は一層濃いものになっています。出番が増えた?と感じるキャラもいて、ご褒美気分も味わえます。シリーズ未読の方は、完全版から入るのもあり!

『歌の終わりは海 Song End Sea』

発売日:2024年7月12日
森博嗣(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

妻の依頼は、浮気調査だった。夫は、数多くのヒットソングを生み出した作詞家。華やかな業界だが、彼自身は人づき合いをしない。そのため彼に関する情報は少なかった。探偵による監視が始まった。浮気の兆候はない。だが妻は、調査の続行を希望。そして監視下に置かれた屋敷で、死体が発見される。

Xシリーズから時系列を引き継いで小川令子&加部谷恵美の二人を中心に展開するシリーズの番外編。ミステリーでありながら、死生観について考えさせられる物語。書影、タイトルの響きの美しさに惹かれる方もいるのでは?読後にはなんともいえない切なさが込み上げてきます。

『菜の花食堂のささやかな事件簿 人参は微笑む(6)』

発売日:2024年8月6日
碧野圭(著)
出版社(レーベル):大和書房

季節の野菜を活かしたランチと予約制ディナーが人気の菜の花食堂のオーナー・靖子先生は、おいしい料理を作るだけじゃなく、言葉にできない悩みや困った出来事の奥にある大切なものを見抜き、謎と心を解きほぐしてくれる――。

おいしい料理×日常の謎。小さな食堂と料理教室を舞台にやさしくてほろ苦い日常ミステリーが展開します。シリーズ第6弾には5つの物語を収録。謎解きはもちろん、季節の食材や料理にも興味が湧く一冊。ミステリー小説では登場人物がどうしても怪しく見えてしまうもの。しかし、菜の花食堂に集う人々がみんないい人なので、心穏やかに謎解きができます。

『5分間ミステリー』

発売日:2024年9月3日
ケン・ウェバー(著) 片岡しのぶ ほか(訳)
出版社(レーベル):扶桑社

町で有名な男性医師は、毎週木曜に大酒を飲む。今週も酔いつぶれた木曜日、なんと医師の妻が遺体となって発見された。酒の勢いで医師が殺したのか?だが、本人は酔っ払って正体をなくしている。はたして医師の犯行なのか。

ミステリークイズの大定番。本国では何度も装いを変えて再発売され、日本でも30年以上にわたって好評を博したロングセラー。5分間で読める、バラエティに富んだショートストーリー、全37編を収録。このシリーズはミステリー小説を読む脳を鍛えるのにピッタリ。長編を読む時間がない!というときのミステリーファンは謎解きの満足度をたった5分で味わえます。

『方舟』

発売日:2024年8月9日
夕木春央(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

友人と従兄と山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った家族と地下建築「方舟」で夜を過ごすことに。翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれ、水が流入しはじめる。いずれ「方舟」は水没する。そんな矢先に殺人が起きる。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。タイムリミットまでおよそ1週間。生贄には、その犯人がなるべきだ。――犯人以外の全員が、そう思った。

犯人が分かった上でもう一度読みたくなるクローズドサークルミステリー。極限状況での謎解きを楽しんだ読者に待っているのは驚きの真相。繰り広げられる頭脳戦、ラストで暴かれる人間性。エピローグまでしっかり読んでラストの衝撃を味わい尽くしたくなる!

『3分で読める! 人を殺してしまった話』

発売日:2024年9月4日
このミステリーがすごい!編集部(著)
出版社(レーベル):宝島社文庫

累計140万部突破。宝島社の大人気ショートショートシリーズ最新刊。最初の1行は全員同じ。「人を殺してしまった」で始まる物語を、『このミス』大賞作家が全作書き下ろし!ゾクッとするどんでん返しから意味が分かると怖い話まで超ショートストーリーを25作品収録。殺害方法は自由自在というユニークな試みにワクワクが止まりません。

「チーム・バチスタ」シリーズ海堂尊、「さよならドビュッシー」中山七里らの手がけた物語が3分で読めるという贅沢な構成。最初の1行はみんな同じなので、どこから読んでも楽しめます。

『クローゼットファイル 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』

発売日:2024年7月12日
川瀬七緒(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

「服を見ればすべてがわかる」と、噂されるほどの鋭い洞察力を持つ服飾ブローカー・桐ヶ谷京介に新たな事件解決の依頼があった。依頼主は警察と京介の橋渡し役を担う南雲警部。南雲は12年前、勤務中に捨て子を発見した。その子は施設で育ち、少年になった今、南雲に母親探しを頼んできたのだ。南雲は発見当時にその子が身につけていた大人もののTシャツを京介に預ける。京介の神懸かった推理が始まる……。

仕立屋探偵・桐ヶ谷京介が挑む6つの事件を描く連作短編集。会話のテンポも良く読みやすい短編集です。ミステリー要素はもちろん、服飾トリビアに加えて人体の知識が知れるのも面白い。他のミステリー作品を読む際にも役に立ちそうな情報が満載です。

『殺人は夕礼拝の前に』

発売日:2024年9月4日
リチャード・コールズ(著) 西谷かおり(訳)
出版社(レーベル):早川書房

英国の田舎町チャンプトンの司祭ダニエルは悩んでいた。教会のトイレ設置をめぐって住民が真っ二つに割れてしまったのだ。そんな中、裕福な地元の名士が夜の教会で殺された。住民をまとめあげ、犯人を突き止めるには司祭が適任。狡猾な犯人にダニエルが挑む。

舞台は英国の田舎町。まずこの設定でワクワク。噂好きの村人、古くから住む地主の家など、ミステリー小説好きの心をくすぐります。司祭として偏りなく人と接しようとするダニエルのキャラクターも好印象。ダニエルの母親オードリーがちょっぴり破天荒という設定も面白みを添えています。

『赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う。』

発売日:2024年9月11日
青柳碧人(著)
出版社(レーベル):双葉文庫
(C) 青柳碧人/双葉社

おじさんにクッキーとワインを届ける途中、赤ずきんはピノキオの右腕を拾いました。実はピノキオが、体をばらばらにされていて、赤ずきんはそれらを集める旅に出ます。ところが、殺しの犯人として逮捕されてしまったのです……。ピノキオのほか、親指姫や白雪姫、笛吹き男に三匹の子豚など、世界の童話の主人公がいろいろな事件に登場!

世界のみんなが知っている童話をベースにした連作本格ミステリ第二弾。賢すぎる赤ずきんちゃんが主人公のパロディミステリー。ファンタジーでぶっ飛んでいるかと思いきや、意外とリアルに感じられる物語。実は実写に向いてるかも!?なんて思ったりもしちゃいます。スラスラ読める読みやすさも魅力です。

『死はすぐそばに』

発売日:2024年9月11日
アンソニー・ホロヴィッツ(著) 山田蘭(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

テムズ川沿いの高級住宅地リヴァービュー・クロースで、金融業界のやり手がクロスボウの矢を喉に突き立てられて殺された。昔の英国の村を思わせる敷地で住人たちが穏やかに暮らす、この理想的な環境を乱す新参者の被害者に、住人全員が我慢を重ねてきていた。誰もが動機を持っているといえる難事件を前にして、警察は探偵ホーソーンを招聘するが……。

関係者全員が同じ動機を持つ、解決不可能とも思われた事件に挑むホーソンとホロヴィッツ。読めばハマると話題の大人気シリーズ第五弾です。謎に次ぐ謎に翻弄されるも、読了後すぐにまたページを捲りたくなる中毒性の高いシリーズ。謎を解き明かしたいと思いページを捲りながらも、終わって欲しくないという気持ちが湧き出て、葛藤しながら読み進める魅惑のミステリーです。

『モルグ館の客人』

発売日:2024年7月3日
マーティン・エドワーズ(著) 加賀山卓朗(訳)
出版社(レーベル):早川書房

ヨークシャー北部の古い村、モートメインの岬の突端にあるモルグ館と呼ばれる館。名探偵レイチェル・サヴァナクと新聞記者のジェイコブは、館の主人で犯罪学者のレオノーラから館で催されるパーティに招待される。殺人を犯しながらも、法で裁かれなかった者たちが集うパーティの真の目的を探るうち、レイチェルが直面する意外な殺人事件とは。

舞台は1930年代初め。探偵レイチェルの美しくちょっと危険で謎めいた雰囲気がとてもいい!相棒的存在の新聞記者ジェイコブも仕事熱心でちょっぴり危うさを持ち合わせているという興味深いキャラクター。完全犯罪の真相が明らかになるラストは圧巻です。

『スミルノ博士の日記』

発売日:2024年7月22日
サミュエル・アウグスト・ドゥーセ(著) 宇野利泰(訳)
出版社(レーベル):中公文庫

天才法医学者ワルター・スミルノはある晩、女優アスタ・ドゥールの殺害事件に遭遇。容疑者として、かつての恋人スティナ・フェルセンが挙げられる。名探偵レオ・カリングの手を借り、不可解な謎に挑むのだが……。

江戸川乱歩や横溝正史に多大な影響を与えたとされる有名な一冊。書かれたのは1917年で乱歩所蔵の原書を1963年に翻訳した作品の復刻版とのこと。アガサ・クリスティーの「アクロイド殺害事件」の元ネタかも?とも言われている、ミステリー小説ファンにはたまらない1冊。探偵役の仕掛けた心理戦にゾクゾクさせられます。

2024年4-6月発売新刊ミステリー小説22選

『凍原』

発売日:2024年5月15日
桜木紫乃(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

17年前、弟を行方不明で失った松崎比呂は、刑事となって釧路に帰ってきた。その直後、釧路湿原で青い目の他殺体が発見される。先輩刑事の片桐周平と捜査を進めると、そこには激動の時代を生き抜いた女の一生が深く関わっていた――。

直木賞作家・桜木紫乃の長編ミステリーで、北海道警釧路方面本部シリーズ第一弾。刑事の比呂のパートと、女性キクのパートが交錯しながら物語が展開。二人の女性の生き様、美しくも不気味さも感じる湿原の描写に惹き込まれます。第二弾『氷の轍』は6月に発売、7月には第三弾『起終点駅(ターミナル)』、8月の第四弾『霧(ウラル)』へと続きます。桜木紫乃初期作品をシリーズとして気持ち新たに毎月楽しめるのがうれしい!

『白鳥とコウモリ』

発売日:2024年4月3日
東野圭吾(著)
出版社(レーベル):幻冬舎文庫

父の死に疑問を持つ美令と父の自供に納得できない和真。事件の蚊帳の外の二人は‶父の真実″を調べるため、捜査一課の五代の知恵を借り禁断の逢瀬を重ねる。過去と現在、東京と愛知、健介と達郎を繋ぐものは何か。やがて美令と和真は、ふたり愛知へ向かうが、待ち受けていた真実は――。

東野圭吾の傑作が待望の文庫化。上下巻同時の発売です。複雑な展開、上下巻というボリュームでも真相をいち早く知りたくなり、イッキ読み必至。登場人物のリアルで繊細な心の動きに、時に違和感を感じ、揺さぶられながら、ページをめくる手が止まりません。物語の舞台となる門前仲町界隈もふらりと訪れたくなります。

『神保町・喫茶ソウセキ 真実は黒カレーのスパイスに』

発売日:2024年6月27日
柳瀬みちる(著)
出版社(レーベル):宝島社文庫

「漱石カレー」など文豪をモチーフにした「文豪カレー」が好評の、神保町「喫茶ソウセキ」。突如、店が何者かに投石されるなどの嫌がらせを受け始める。店主の千晴や、店の常連で人気作家の葉山たちは、過激な発言で人気の文学系VTuber・大辛シムロに目をつける。シムロはなぜか葉山を恨んでいて——。

太宰治や林芙美子、坂口安吾ら文豪たちの古書を読み、美味しいカレーを作りながら謎を解き明かすシリーズ第2弾です。今回の謎解きは「林芙美子の原稿の真贋を見極めること」。古書をヒントに店主の千晴とイケメン人気作家の葉山がタッグを組み、事件の真相を追う!

『書棚の番人』

発売日:2024年5月9日
碧野圭(著)
出版社(レーベル):PHP文芸文庫

書店員の椎野正和は、ある朝届いた積荷の中に、少年犯罪者の告白本を見つけて驚く。それは十七年前に女子中学生が惨殺された事件で、正和の同級生が起こしたものだった。しかも正和は共犯と疑われたのだ。書店業界が「売るべきか売らないべきか」と騒然とする中、その本を読んだ正和は、ある違和感を覚えるのだが――。

ベストセラー『書店ガール』シリーズの著者が贈る、書店を舞台にしたミステリー。出版・書店業界の裏事情が巧みに盛り込まれた、本好きにたまらない内容になっています。2021年刊行の『書店員と二つの罪』の改題です。

『剣持麗子のワンナイト推理』

発売日:2024年5月7日
新川帆立(著)
出版社(レーベル):宝島社文庫

亡くなった町弁のクライアントを引き継ぐことになってしまった剣持麗子。都内の大手法律事務所で忙しく働くかたわら、業務の合間に一般民事の相談にも乗る羽目に……。『元彼の遺言状』のヒロインが徹夜で謎解きをするミステリー短編集が文庫版で登場!

剣持弁護士、働きすぎ!と心配にならなくもないですが、夜中に呼び出されたり、事件に巻き込まれたり、普段請け負っている企業案件とは違って、なんだかチマっとした事件であっても、結局華麗に解決してくれる安心感と爽快感がクセになります。

『夏休みの空欄探し』

発売日:2024年6月5日
似鳥鶏(著)
出版社(レーベル):ポプラ文庫

「役立たたない」ことが好きなクイズ研究会会長の高校2年生のライと、大学受験に向けて効率重視で「役立つこと」が好きな同級生のキヨ。クラスでは交わることもなく、対照的な性格の二人だが、夏休みの間、ひょんなことから謎解きに挑む姉妹を手伝うことになる。謎解きの先で待つものとは——。

夏休みという響きにもキュンとなる、青春恋愛ミステリーです。爽やかさや切なさもあるストーリーですが、謎解きは意外と難しい!しかも結構な数が盛り込まれているので、しっかり頭を使う一冊になっています。ラストのラストまで謎解きの要素アリ。

『QED 神鹿の棺』

発売日:2024年5月15日
高田崇史(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

茨城県山中の寂れた神社の宝物庫で大瓶に入った白骨死体が発見される。その話を友人の小松崎から聞いたフリージャーナリストの桑原崇は、大瓶と神社の祭神に興味を抱き、茨城へ。現地では、さらに瓶の中から新たな遺体が発見されたという報せが――。

高田崇史のQEDシリーズの最新作。「ベイカー街の問題」など珍しいテーマもありながらも、基本的には日本の歴史や神話への興味を湧き立たせてくれるシリーズです。1998年から続き、本作で23巻目となるシリーズでは、主人公・桑原崇が事件と共に、古文・歴史・人物に隠された謎を解いていきます。QEDとは「以上、証明終了」を意味するQ.E.D.が由来。

『落語刑事サダキチ 埋蔵金と猫の恩返し』

発売日:2024年4月22日
愛川晶(著)
出版社(レーベル):中公文庫

神楽坂は筑土八幡町の工事現場で、猫が小判を掘り出した。飼い主の噺家は一躍時の人に、寄席は大入り満員。しかし小判が発見された土地のオーナーの娘が誘拐されてしまい――。

落語家になり損ねた過去を持つベテラン刑事・平林定吉と、食欲と腕力には自信ありの新人刑事・三崎優子、そして落語界の隠れた名探偵・林家正蔵師匠が街の事件を解決する、昭和50年代が舞台の落語ミステリ×警察小説第3作。落語と事件の絡み具合と心地よいオチがなんとも絶妙で、何度も読み返したくなります。

『ごんぎつねの夢』

発売日:2024年4月24日
本岡類(著)
出版社(レーベル):新潮文庫

15年ぶりのクラス会にキツネ面の男が乱入し、散弾銃を発砲した。SATにより射殺された犯人は、なんと恩師だった。幹事の有馬に託されたメッセージは「ごんぎつねの夢を広めてくれ」。次第に見えてくる恩師の過去、名作「ごんぎつね」にまつわる哀しい史実、消えたかつての同級生の秘密……。探索の果て、周到な計画と謎の原稿に隠された真相が明らかになる!

童話『ごんぎつね』をベースにしたミステリー。小学生の頃に教科書で読んだ『ごんぎつね』には実は違うラストがあったという裏話も織り交ぜながら、物語が展開。事実なの?フィクションなの?とハラハラする臨場感が味わえます。

『身代りの女』

発売日:2024年4月24日
シャロン・ボルトン(著) 川副智子(訳)
出版社(レーベル):新潮文庫

卒業を間近に控えたパブリック・スクールの優等生6人が自動車で逆走。母娘3人の命を奪う大事故を起こしてしまう。20年後、一人で罪を被り刑期を務めあげたメーガンが、国会議員、辣腕弁護士ら、いまや成功を収めている5人の前に姿を現す。彼らと交わした“約束”を果たさせるために……。

身代わり契約の果ての惨劇を描く予測不能な物語が展開します。なぜメーガンは一人で重い罪を背負うことを決めたのか。それが気になってページをめくる手が止まりません。20年後、メーガンを前にした社会的地位を得た優等生5人の自己保身にかなりイライラし、感情移入できるキャラはいない…と感じるのに、物語にはグイグイと引き込まれていく、凄まじいパワーを持った作品です。

『ササッサの怪-コナン・ドイル奇譚集』

発売日:2024年5月22日
コナン・ドイル(著) 小池滋(監訳) 北原尚彦(編)
出版社(レーベル): 中公文庫

幻のデビュー作『ササッサ谷の怪』から、ストランド・マガジン最後の掲載作品『最後の手段』まで。名探偵シャーロック・ホームズの生みの親、コナン・ドイルの幻のデビュー作を文庫化した本作には、希代のストーリーテラー、ドイルの魅力を再発見する名短篇全十四編を収録しています。

ドイルといえばシャーロック・ホームズ。ホームズが活躍するシリーズは制覇しているけれど、ドイルのデビュー作は読んでいないという人も少なくないかもしれません。というのも『ササッサ谷の怪』の翻訳版は1982年に出版されただけ。今回刊行された短編集は、ドイルの原点、そして新たな魅力を知るきっかけになる一冊としておすすめです。

『神の悪手』

発売日:2024年5月29日
芦沢央(著)
出版社(レーベル):新潮文庫

棋士を目指して13歳で奨励会に入会した岩城啓一だったが、20歳をとうに過ぎた現在もプロ入りを果たせずにいた。9期目となった三段リーグ最終日前日の夕刻、翌日対局する村尾が突然訪ねてくる。今期が昇段のラストチャンスとなった村尾が啓一に告げたのは……。

将棋をテーマに夢を追うことの恍惚と苦悩、誰とも分かち合えない孤独を深く刻むミステリ5編を収めた短編集。短編ながら、一編一編読み応えあり。将棋の世界を生きる人たち、棋士だけでなく駒師にもスポットを当てた物語もあり、将棋をあまり知らなくても十分に楽しめます。

『冬期限定ボンボンショコラ事件』

発売日:2024年4月30日
米澤穂信(著)
出版社(レーベル):東京創元社

小市民を志す小鳩君はある日轢き逃げに遭い、病院に搬送された。目を覚ました彼は、朦朧としながら自分が右足の骨を折っていることを聞かされる。翌日、手術後に警察の聴取を受け、昏々と眠る小鳩君の枕元には、同じく小市民を志す小佐内さんからの「犯人をゆるさない」というメッセージが残されていた。小佐内さんは、どうやら犯人捜しをしているらしい……。

「小市民」シリーズ、15年ぶりの最新作にして最終作では、主人公の一人、小鳩君の入院から始まります。入院中の小鳩君がベッドの上で推理を繰り広げる現在パートと、三年前のある轢き逃げ事件捜査が描かれる過去パートが交互に展開していきます。小鳩君と小佐内さんの出会いのエピソードは必見です。

『天狗屋敷の殺人』

発売日:2024年5月29日
大神晃(著)
出版社(レーベル):新潮文庫nex

ヤンデレな恋人・翠の婚約者として連れていかれた彼女の実家は、山奥に立つ霊是一族の“天狗屋敷”。失踪した当主の遺言状開封、莫大な山林を巡る遺産争い、棺から忽然と消えた遺体。奇怪な難事件を次々と解決するのは、あやしい“なんでも屋”!?

横溝正史へのオマージュに満ちたミステリー。ちょっとぶっ飛んだキャラの翠さんも本作の見どころかも。割と凝ったトリックが仕掛けられていますが、一族の遺産相続にまつわる物語でも、犬神家ほどのドロドロ感はなく、さらっと読み進められます。

『キネマの天使 メロドラマの日』

発売日:2024年5月15日
赤川次郎(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

映画の撮影現場で、映像に関わるすべてを記録し、管理する。スクリプターの東風亜矢子は、いい映画を作るため、正木監督の無茶なリクエストに応えて奔走する日々だ。だが今回は、資金調達が難航し、撮影に入れない。頭を抱える監督の前に、高校時代の憧れの同級生が現れて……。

映画の裏に名探偵あり!大人気ミステリー第2弾の文庫版が登場。お仕事ものとしても楽しめるライトなミステリーで読みやすく、ミステリー初心者にピッタリの一冊です。登場人物は多いですが、人物像が混乱することはありません。最後はスッキリ前向きになれるのもGOOD!

『#真相をお話しします』

発売日:2024年6月26日
結城真一郎(著)
出版社(レーベル):新潮文庫

「ゆーちゅーばー」を夢見た島育ちの仲良し小学生四人組の末路。マッチングアプリでパパ活。リモート飲み会と三角関係。中学受験と家庭教師の大学生。精子提供と殺人鬼。日常に潜む「何かがおかしい」。その違和感にあなたは気づくことができるか。

第74回日本推理作家協会賞受賞の『#拡散希望』は、第22回本格ミステリ大賞にもノミネートされた注目作。現代日本の<いま>とミステリの技巧を融合した珠玉の5篇を収録した一冊が文庫版で登場。YouTubeやアプリなどが登場する物語では、いまどきのミステリーという感覚が味わえる気がします。

『AI 法廷の弁護士』

発売日:2024年4月5日
竹田人造(著)
出版社(レーベル):早川書房

AI裁判官が法廷を仕切るようになった日本。不敗と名高い弁護士・機島雄弁はハッキングを駆使して勝訴を掴み、事件の真実へと迫る――。

AIが裁判官を務める近未来の日本。AIがテーマだと、そんな現実世界が来るか来ないかの方向へ気持ちが行きがちですが、本作はちゃんとミステリー。法廷とAIが絡み、さらに近未来を舞台にしているので、用語的に少し難しいものも登場しますが、コミカルとシリアスのバランスがとてもよく、テンポよく読み進められます。主人公にちょっとダークさも漂い、クセありのキャラクターも登場。さらにバディものとしても楽しめる上に、逆転劇もあり。ミステリーに欲しい要素が詰まっています。

『クラーク・アンド・ディヴィジョン』

発売日:2024年6月6日
平原直美(著) 芹澤恵(訳)
出版社(レーベル):小学館文庫

1944年、シカゴ。父母とともにカリフォルニア州の強制収容所を出てシカゴに着いた日系二世のアキ・イトウは、一足先に収容所を出てシカゴで新生活を始めていた姉ローズが前日にクラーク・アンド・ディヴィジョン駅で列車に轢かれて死んだと知らされる。警察の自殺説に疑問を感じたアキは、真相を求めて自ら調査を始めるが……。

日系米国人作家が贈る歴史ミステリーは2021年NYTベストミステリー選出、2022年メアリー・ヒギンズ・クラーク賞受賞、同年マキャヴィティ賞最優秀歴史ミステリー小説賞を受賞した話題作です。戦時中の日系人たちの境遇にスポットを当て知られざる歴史を掘り起こした渾身の新シリーズ第1弾。エドガー賞、マキャビティ賞、アンソニー賞にノミネートされた前作『ヒロシマ・ボーイ』にて幕を閉じた「庭師マス・アライ事件簿シリーズ」もぜひ。

『マクマスターズ殺人者養成学校』

発売日:2024年6月5日
ルパート・ホームズ(著) 奥村章子(訳)
出版社(レーベル):早川書房

舞台は殺人技術を教えるマクマスターズ校。学校の場所は厳重に隠されており、生徒たちでさえもそのありかは知らない。さらに、マクマスターズ校に入学した生徒が外界に戻る方法は二つしか存在しない。無事に卒業するか、死体となって運び出されるかだ……。

タイトルや帯を見て「惹かれる…」という読者も多そうな一冊。上司を殺したいほど憎むクリフが入学したのは殺人技術を教えるマクマスターズ校。クリフは無事に卒業し、目的を果たすことができるのか。ダークでアカデミックな雰囲気が漂う中、所在地さえも分からない学校で教えられる殺人技術。設定だけで「買い!」って思わせてくれる本との出会いは、読む前からワクワク気分が味わえます。

『安倍晴明くれない秘抄』

発売日:2024年4月11日
六道慧(著)
出版社(レーベル):徳間文庫

少女・小鹿は、清少納言の実の妹であるとして貧民街から引き取られ、御所の中宮定子付きの針女(下働き)として仕えることに。定子は一条天皇の寵を受けつつも、父の関白・藤原道隆の死や左大臣・藤原道長の台頭により不安な日々を過ごしている。そんな折、ひょんなことから、小鹿は稀代の陰陽師・安倍晴明に弟子入りすることとなった。

大河ドラマの影響で平安後宮に興味が湧いている方も多いのでは? 本作は80歳の安倍晴明と清少納言の妹、15歳の小鹿が活躍する怪異に満ちた平安後宮ミステリー。安倍晴明、清少納言をはじめ、藤原道長、一条天皇、定子となじみのある名前が並びます。斬新な設定と想像を超えた大胆な展開を、思いっきり楽しむのがオススメ。

『科捜研・久龍小春の鑑定ファイル 小さな科学者と秘密の鍵』

発売日:2024年4月3日
新藤元気(著)
出版社(レーベル):宝島社文庫

特殊捜査班の熊谷は、海老名市内にある養護施設がほぼ全焼した現場に臨場。科捜研物理係の久龍小春とともに事件性の有無を判断するため、出火原因の調査を行う。出火の原因は煙草の不始末。さらにその煙草を始末したのは行方不明の少年・立花望であること、別の場所では、彼が書いたと思われる遺書も見つかって……。望が生きていると予想し調査に乗り出したこはると熊谷。二人を待ち受ける、事件の意外な真相とは!?

登場人物が何かしらの悩みや背景を持っているので、ヒューマンドラマ的な要素も楽しめます。サクサク読み進められますが、謎は想像以上に盛りだくさん。さまざまな視点からあれこれ考えながら事件が見られるのもポイントです。

【こちらもチェック!】

『安吾探偵事件帖-事件と探偵小説』

発売日:2024年5月22日
坂口安吾(著)
出版社(レーベル):中公文庫

ジャンルとしてはエッセイになりますが、「分断随一の探偵小説通」として知られる坂口安吾の事件評論や裁判傍聴記、愛好する探偵小説を論じたエッセイをご紹介。こちらは文庫オリジナルとなっています。坂口安吾は『不連続殺人事件』や『安吾捕物帖』などのミステリ作品も手掛けている一方で、自らを「安吾タンテイ」と名乗り、帝銀事件、下山事件、チャタレイ裁判など実際の事件について大胆な推理も展開しています。戦後の難事件を推理し、クリスティーやクイーン、横溝正史らの探偵小説を論じる一冊。安吾探偵をご堪能あれ!

2024年1-3月発売新刊ミステリー小説19選

『夜明けの花園』

発売日:2024年1月31日
恩田陸(著)
出版社(レーベル):講談社

全寮制の学園では、特殊な事情を抱える生徒が、しばしば行方を晦ます。ヨハンの隠れた素顔、校長の悲しき回想、幼き日の理瀬、黎二と麗子の秘密、月夜に想いを馳せる聖、そして水野理瀬の現在。理瀬と理瀬を取り巻く人物たちによる、幻想的な世界へ誘う六編が収録された、累計100万部突破の「理瀬シリーズ」初の短編集です。

ゴシック・ミステリの金字塔シリーズ初のスピンオフ短編集。シリーズ独特の幻想的な世界観へと誘う一冊。理瀬と深い縁があり、シリーズ途中からイメージが大きく変化したヨハンが主人公の物語もあり。情景が浮かぶ文章はもちろん、装丁&挿絵の美しさも堪能できます。

『暗殺』

発売日:2024年1月31日
赤川次郎(著)
出版社(レーベル):新潮社

大学受験の朝、駅で射殺事件を目撃しながら通報を怠った麻紀。やがて親友の恋人として再び姿を現した犯人は職業的殺人者だったーー。一方、事件を追う刑事のことみは現役大臣の秘書と交際するうち、大臣の特殊な性癖と周囲の不審な事件を知り、密かに調べを進める。

「小説新潮」連載を単行本化した殺人の構図と人間の暗部が読者を打ちのめす傑作長篇です。人気作家のミステリーが読みたい、面白いミステリー小説を探している、ライトにミステリーを楽しみたい、そんな方におすすめ。展開が早いのでテンポよくサクサクと読み進められます。

『最上階の殺人』

発売日:2024年2月29日
アントニイ・バークリー(著) 藤村裕美(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

4階建てフラットの最上階で女性の絞殺死体が発見された。警察は物盗りと断定。一方、捜査に同行した小説家ロジャーは、フラットの住人による巧妙な計画殺人と推理し、被害者の姪を秘書に雇って調査に乗り出し……。

名探偵vs警察捜査、火花散る推理合戦にワクワク。さらにバークリー作品は“クスクス”できるのも魅力のひとつ。本作でも迷探偵として親しまれているロジャー・シェリンガム探偵の名推理が炸裂しています。謎解きに加えて、人の描写や会話が面白いのもおすすめポイントです!

『推しの殺人』

発売日:2024年2月6日
遠藤かたる(著)
出版社(レーベル):宝島文庫

何を読もうか迷った時は、受賞作品を選ぶのもおすすめ。2024年第22回『このミステリーがすごい!』大賞文庫グランプリを受賞した本作は、大阪で活動する3人組女性地下アイドル「ベイビー★スターライト」の物語。尊大な事務所社長、グループ内での人気格差、恋人から暴力を受けているセンター……。様々な問題を抱えて危機的な状況にあった彼女たちにさらなる問題が起きる。メンバーのひとりが事務所で人を殺してしまったのです。彼女の罪を隠蔽するため、三人は死体を山中に埋めることを決意して――。

「バレちゃうのか」「もうダメなのか」とずっとハラハラながらも、テンポがいいのでどんどん読み進めることができ、物語の世界に没入できます。

『中野のお父さんと五つの謎』

発売日:2024年2月9日
北村薫(著)
出版社(レーベル):文藝春秋

「アイ・ラブ・ユー」を「月が綺麗ですね」と漱石が訳したとされる伝説はいかに生まれたのか?夏目漱石、芥川龍之介、松本清張……文豪の謎を国語教師のお父さんが見事に解決!

文藝編集者として出版社に勤める娘が仕事の現場で行き当たった「謎」を、高校の国語教師のお父さんが解決する〈中野のお父さん〉シリーズ第4弾。お父さんの博識ぶりに唸るシリーズですが、シリーズを追うごとにうんちくが増えている感がありましたが、今回はおなじみの人気作家ばかりが並び、親近感のある文学的な謎解きが堪能できる一冊。

『老人ホーム 一夜の出来事』

発売日:2024年2月29日
B・S・ジョンソン(著) 青木純子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

年齢も視力も聴力も痴呆度もすべてが異なる8人の老人と寮母1人が見る、各人にひとつの真実。同じ一夜の同じ一場面が、9人それぞれの章の同じページ、同じ行に浮かび上がる。9つの章が同時進行する変わったスタイルで描かれる傑作実験小説です。

視点となる人物の視力、聴力、痴呆の問題により、独特の混乱、煙に巻かれた感があり、ミステリー濃度を強めます。「老いるとは」についても考えさせられる一冊。9人のうちホーム入居者は8人で寮母が1人。なぜか老いていないはずの寮母が一番不健全に見え、妙にリアルです。

『有罪、とAIは告げた』

発売日:2024年2月14日
中山七里(著)
出版社(レーベル):小学館

東京地裁に勤める高遠寺円は、中国製のAI裁判官のテスト運用を担当することになった。AIの驚くべき精度に歓迎ムードが高まる中、18歳少年による父親殺しが起きる。難しい裁判のためデータを入力し、AI裁判官にシミュレートさせてみると「死刑」という判決が下される。果たして、人工知能に罪は裁けるのかーー。

人間が作り、人間が使うAI。やはり人間は自分の頭で考え続けなければいけないと思わずにはいられません。AIはすでに未来のものではなく、どう使うかという現実に直面している今、読んで考えるべき一冊です。

『赤の女王の殺人』

発売日:2024年3月14日
麻根重次(著)
出版社(レーベル):講談社

松本市役所の市民相談室に勤務する六原あずさは、相談者の妻が密室から転落死する現場を目撃する。被害者が死の間際につぶやいた「ナツミ」を追って、刑事である夫の具樹は捜査を始めるが、なかなか手がかりを摑めずーー。

第16回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。装丁に一目惚れ、さらに帯には「ばらのまち福山ミステリー文学賞」選者で広島県福山市出身のミステリー作家・島田荘司のコメントが。これは読むべきミステリー小説の新刊だと手に取りたくなります。

『卒業のための犯罪プラン』

発売日:2024年3月6日
浅瀬明(著)
出版社(レーベル):宝島文庫

ビジネスセンスを備えた人材の育成を目指す木津庭商科大学では、学食等での支払いのみならず、家賃の支払いや単位の売買にも使用できる「ポイント」を獲得するため、学生たちがしのぎを削っていた。家庭の都合により、残り半年で卒業しなければならなくなった2年生の降町歩は、不正にポイントを稼ぐ者たちを摘発する「監査ゼミ」に所属する。家庭教師サークルを装いガールズバーを運営していると噂が出ているサークルに調査に行くが、逆に取り込まれて……。

2024年第22回『このミステリーがすごい!』大賞文庫グランプリ受賞作。前倒しで大学を卒業するために奮闘する学生の話ですが、この先の社会で通用するような考え方もあり。実践的なことが学べるライトなミステリーです。騙し騙されのコンゲーム、エンタメ要素もあり、若者の成長物語としても楽しめます。

『罪の年輪 ラストライン6』

発売日:2024年3月6日
堂場瞬一(著)
出版社(レーベル):文春文庫

87歳の元小学校教師が殺された。自首してきた男性も87歳で、ベテラン刑事・岩倉剛にとって過去最高齢の容疑者だった。60年前からの知り合いだというが、なぜか動機だけは頑なに語ろうとせず……。

「ガンさん」こと55歳のベテラン刑事・岩倉剛が活躍する警察小説「ラストライン」シリーズ第6弾。ガンさんが自分史上最高齢の容疑者と対峙します。事件の真相、深い闇。「罪の年輪」というタイトルがずしりと重くのしかかります。

『心霊探偵八雲 INITIAL FILE 幽霊の定理』

発売日:2024年3月15日
神永学(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

幽霊マンション、ポルターガイスト……。複雑怪奇な連続事件と、電脳空間に暗躍する謎の人物〈フェルマー〉を、赤い瞳の大学生・斉藤八雲と天才数学者・御子柴岳人、心霊透視と数学解析の異能バディが迎え撃つ!

累計750万部突破のシリーズ最新文庫で八雲と御子柴のコラボ第2弾。二人の出会いの物語が描かれます。八雲シリーズおなじみの映画同好会がどうしてできあがったのかも明かされ、シリーズ愛読者がムフフとなれる一冊です。見どころは八雲と御子柴のやりとり。なんだか笑っちゃうやりとりにクセは強めでもほっこりします。

『ヒポクラテスの悲嘆』

発売日:2024年3月6日
中山七里(著)
出版社(レーベル):祥伝社

浦和医大法医学教室に、餓死した女性のミイラ化死体が運び込まれた。女性は20年以上引きこもっていたという。解剖を行った光崎教授は、空っぽであるはずの胃から意外なものを見つけて……。ミイラ化した死体は何を語るのか。

「ヒポクラテスシリーズ」第5弾では、引きこもり、老老介護、8050問題など身近な社会問題をテーマに、分かりやすい伏線で解決へと誘ってくれます。事件は解決するものの結末はちょっぴり苦め。ページを開いて目に飛び込んでくる各章のタイトルについた数字4桁に謎解きの始まりかとワクワクするも、読後に改めて目にすると、印象がガラリと変わります。

『博士はオカルトを信じない』

発売日:2024年2月21日
東川篤哉(著)
出版社(レーベル):ポプラ社

幽霊がやったとしか考えられない!両親が営む探偵事務所の手伝いで不思議な出来事を目にした中2男子の晴人は、自称・天才発明家のアラサー博士にオカルト事件を相談するが……。事件の犯人は幽霊?それとも人間?

『謎解きはディナーのあとで』の東川篤哉が描く、ユーモアたっぷりの連作短編ミステリー小説。街のオカルト事件に挑む異色の凸凹コンビの活躍が楽しめます。登場人物の覚えやすいネーミングに「この世界観好き!」とハマるかも。オカルトが絡むこともあり、ちょっと突飛なトリックが出てくるのも、このテイストならアリ。気軽にミステリーを楽しみたい方におすすめです。

『変な家 文庫版』

発売日:2024年1月31日
雨穴(著)
出版社(レーベル):飛鳥新社

謎の空間、二重の扉、窓のない子供部屋、この家、何かがおかしい。知人が購入を検討している都内の中古一軒家には「謎の空間」が存在していた。不可解な間取りの真相とは……。
間宮祥太朗、佐藤二朗がW主演を務めた2024年公開のヒット映画『変な家』の原作は、謎の覆面作家・雨穴のデビュー作。文庫版にはキーマンとなる設計士・栗原による「文庫版あとがき」も収録されています。インターネットを中心に活動する作家で、ウェブライター、YouTuberとしても活動している雨穴がYouTubeに投稿したバズ動画が小説となり、すべての謎が解き明かされます。なのに怖さと不気味の余韻が残る1冊です。

『マッチング』

発売日:2024年1月23日
内田英治(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川ホラー文庫

恋愛に奥手な輪花は、親友の勧めでマッチングアプリを始め、吐夢と出会うが、彼はプロフィールとは別人のような不気味な男だった。同じ頃、“アプリ婚”をした夫婦を狙う猟奇的な連続殺人事件が……。
土屋太鳳主演、佐久間大介、金子ノブアキ共演、日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞の『ミッドナイトスワン』(2020年)で監督を務めた内田英治がメガホンを取り、2024年に公開された映画の原作。マッチングアプリといういまどきのツールをテーマに出会いに隠された恐怖を描く新感覚サスペンス・スリラー。誰をそして何を信じればいいのか。ゾワゾワ感がたっぷりと味わえます。

『シャーロック・ホームズの凱旋』

発売日:2024年1月22日
森見登美彦(著)
出版社(レーベル):中央公論新社

舞台はヴィクトリア朝京都。洛中洛外に名を轟かせた名探偵ホームズが、まさかの大スランプ!? ホームズとワトソンはこの摩訶不思議な大迷宮(スランプ)を抜け出せるかーー。
森見登美彦ならではの面白設定が展開。シャーロック・ホームズの物語となれば、ホームズを読んでいないとダメ?と思っている方はご安心を。ファンタジー要素ありのドタバタコメディとして楽しめる一冊になっています。そしてホームズ好きな方たちは、「あのホームズが…」という視点で戸惑いながらも楽しめます。舞台が変わっても、相棒ワトソンとのバディ関係は健在です。

『月下のサクラ 』

発売日:2024年2月9日
柚月裕子(著)
出版社(レーベル):徳間書店

事件現場で収集した情報を解析・プロファイリングする機動分析係に配属された森口泉。だが配属当日、会計課から約1億円が盗まれた。混乱する中、さらに殺人事件が発生。組織の闇に泉の正義が揺れる!
シリーズ第1作の『朽ちないサクラ』は2024年に杉咲花主演、萩原利久共演で映画化。シリーズ第2作の本作では刑事となった森口泉が警察組織に巣くう不条理の数々に挑みます。信念の強すぎる泉とちょっとクセありのチームメンバーが頼もしい。ドキドキしながら一気に読み進められる一冊。晴れて警察官なるどころか、自身の能力に目覚めた泉が、今後どのような活躍を見せるのか、楽しみにしたいシリーズです。

『ミス・マープルの名推理 火曜クラブ』

発売日:2024年1月24日
アガサ・クリスティ(著)
出版社(レーベル):早川書房

毎週火曜日、元警察官や弁護士、作家など謎解きに自信がある人が集まって推理合戦をする〈火曜クラブ〉。難事件に誰もが頭を抱える中、ミス・マープルは豊かな人生経験と鋭い知性で、毎回さらりと謎を解き……。メンバーの中でも一番地味なふつうのおばあさんが誰にも負けない推理力を発揮する13作品を収録した短編集!
ミステリーの女王の作品を読んでみたいけれど、なかなか手が出せない。本を読むのは苦手だけど名作には触れておきたい。そんな方におすすめしたいこの本は、小学校高学年から中学生向けなので、読みやすく、分かりやすい。安心して手を出せる一冊です。読みやすさ、分かりやすさはありますが、ミス・マープルの推理は本格派のまま。この一冊を入り口にして、マープル・シリーズに足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

『ボストン図書館の推理作家』

発売日:2024年3月6日
サラーリ・ジェンティル(著) 不二淑子(訳)
出版社(レーベル):早川書房

オーストラリア在住の推理作家ハンナは、ボストン在住の作家志望者レオにメールで助言を仰ぎ、ボストン公共図書館を舞台にした新作に取り組んでいた。レオのメールに刺激を受けるが、その内容は次第に不穏さを増していき……。
本書のメインはハンナが書くスリラー小説。「作中作」が登場する作品で舞台は図書館。本にまみれる作品です。そしてハンナとレオのメールのやりとりが興味をそそります。レオは「作中作」にも登場するので、時々、疑ったり、混乱しながら読み進めるのもミステリーならではの楽しみ方。2023年エドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)メアリ・ヒギンズ・クラーク賞ノミネート作、手にしてみてはいかがでしょうか。

最後に

シリーズものや追いかけている作家の最新作は、迷わず手にするものですが、「新しいミステリー小説を読みたい」となんとなく思った時には、気軽に読めるものからスタートするのもあり。新刊でお気に入りの作家やシリーズを見つけたら、そこから遡って読破するのもおすすめ。新たな作家、新たな切り口、新たなシリーズ。なにか新しいものを求めているという方は、まずは新刊からチェックしてみてはいかがでしょうか。

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タナカシノブ
紹介文:2015年9月よりフリーライターとして活動中。映画、ライブ、歌舞伎、落語、美術館にふらりと行くのが好き