シリーズ累計1億部を超える『ミレニアム』シリーズをはじめ、傑作の宝庫と言われる北欧ミステリー。映像化された作品も多数あり、その注目度がうかがえます。北欧特有の気候風土や、小説を通して社会批判をするスタイルなど、独特の世界観を生み出す北欧ミステリー小説の背景にも非常に興味深いものがあります。一大ジャンルとなっている北欧ミステリーに興味はあるけれど、何から読んだらいいのか分からない、北欧ミステリーに幅広く触れてみたい、もう一度北欧ミステリーの傑作を読み返してみたいといった理由で読むべき北欧ミステリー小説を探している方におすすめのタイトルを作家別でご紹介!
アイスランド大学で歴史学と映画を専攻し、新聞社に就職。その後フリーの映画評論家として活動。1997年にレイキャヴィク警察の犯罪捜査官エーレンデュルを主人公とするシリーズ第一作「Synir duftsins」で作家デビュー。3作目となる『湿地』、4作目の『緑衣の女』で2年連続ガラスの鍵賞を受賞。『緑衣の女』では、英国の権威あるミステリー文学賞CWAゴールドダガー賞も受賞している。

アーナルデュル・インドリダソン(著)柳沢由実子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
雨交じりの風が吹く10月のレイキャヴィク。湿地にある建物の地階で、老人の死体が発見された。侵入の形跡はなく、被害者に招き入れられた何者かが突発的に殺害し、逃走したものと思われた。金品が盗まれた形跡はない。ずさんで不器用、典型的アイスランドの殺人か。しかし、現場に残された3つの単語からなるメッセージが事件の様相を変えた。次第に明らかになる被害者の隠された過去。そして臓腑をえぐる真相とは――。
ガラスの鍵賞2年連続受賞の前人未踏の快挙を成し遂げ、CWAゴールドダガー賞を受賞した本作の舞台はアイスランド。作品全体に流れる陰鬱な空気感がゾクゾク感を掻き立てます。現代を描きつつ、古き良き時代のミステリ的なお約束もしっかりありつつ、アイスランドだからこそという要素が事件の設定以外にも散りばめられているところもよき。

アーナルデュル・インドリダソン(著)柳沢由実子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
クリスマスシーズンで賑わうレイキャヴィクのホテルの地下室で、一人の男が殺された。ホテルの元ドアマンだったという地味で孤独な男は、サンタクロースの扮装でめった刺しにされていた。捜査官エーレンデュルは捜査を進めるうちに、被害者の驚愕の過去を知る。一人の男の栄光、悲劇、転落、そして死。自らも癒やすことのできない傷をかかえたエーレンデュルが到達した悲しい真実とは。
全世界でシリーズ累計1000万部突破、翻訳ミステリー大賞・読者賞をダブル受賞の本作は、家族の在り方を描き続ける著者の、『湿地』『緑衣の女』に続くシリーズ第3弾。社会に蔓延る問題をうまく取り込んだ社会派ミステリー。派手さはなく静かに、どことなく暗い雰囲気を漂わせながら物語は進みます。やるせなさも残り、読後にはいろいろなことを考えてしまいます。
ラーシュ・ケプレルはアレクサンドラ・コエーリョ・アンドリルとアレクサンデル・アンドリルの作家夫婦が共作するときのペンネーム。彼らの手がける『ヨーナ・リンナ』シリーズは国際的なベストセラーとなり、40以上の言語に翻訳され、販売部数は1千万部以上。アンドリル夫妻は、ラーシュ・ケプレルのペンネームで執筆する以前も、それぞれが単独で書いた作品で高い評価を受けている。

ラーシュ・ケプレル(著)瑞木さやこ(訳)鍋倉僚介(訳)
出版社(レーベル):扶桑社(扶桑社BOOKSミステリー)
ある激しい雪の夜、ストックホルム郊外の鉄道線路沿いで保護された一人の男。それはベストセラー作家レイダルの13年前に行方不明になった息子ミカエルだった。彼は、自分と妹フェリシアを誘拐した人物を「砂男」と呼んだ――。
『ヨーナ・リンナ』シリーズ第4弾。視点が切り替わりながらテンポよく読み進めることができます。ダークな世界観、エグめの描写が多いのも北欧ミステリーの特徴のひとつ。鍵となる「砂男」の正体を暴くのはヨーナ・リンナと2作目の『契約』にも登場したサーガ。単独でも読み応えのある作品ですが、シリーズものなので、可能であれば遡りでもOKなのでチェックしてほしいところ。北欧の雪と氷に覆われた世界で起きる事件にゾクゾク度が増します。

ラーシュ・ケプレル(著)染田屋茂(訳)下倉亮一(訳)
出版社(レーベル):扶桑社(扶桑社BOOKSミステリー)
国家警察の警部ヨーナ・リンナが姿を消してから8カ月――。彼の後任となった臨月間近のマルゴット・シルヴェルマンが担当しているのは、独身女性の連続惨殺事件だ。どの被害者も残酷なまでに顔面を傷つけられていただけでなく、犯人は犯行の直前に被害者の姿が映った映像を警察に送りつけていた。目撃者もなく、被害者同士の接点や共通点もない中、警察は過去の犯罪歴から強迫的な執着を持つ性犯罪者の洗い出しを進めるが、容疑者らしき人物は浮かばなかった。
『ヨーナ・リンナ』シリーズ第5弾。本題の主人公はヨーナなのですが、本作では割と時間を経てから登場します。その理由は前作『砂男』の終盤でも描かれているので、ぜひシリーズを続けて読んで欲しいところ。残酷さも展開の奇抜さもかなりのもの。さらに、登場人物も個性派揃いで、さすがは北欧ミステリーとワクワクしてしまいます。
スウェーデンを代表するミステリ作家のひとり。犯罪学教授として、国家警察委員会の顧問も務めていた。1978年にデビュー作『Grisfesten』を発表。それ以来、『許されざる者』『見習い警官殺し』『平凡すぎる犠牲者』『悪い弁護士は死んだ』など多くの傑作ミステリーを発表している。

レイフ・GW・ペーション(著)久山葉子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
国家犯罪捜査局の元凄腕長官ラーシュ・マッティン・ヨハンソン。脳梗塞で倒れ、一命はとりとめたものの、右半身に麻痺が残っている。そんな彼に主治医の女性が相談をもちかけた。牧師だった父が、懺悔で25年前の未解決事件の犯人について聞いていたというのだ。9歳の少女が暴行の上殺害された事件。だが、事件は時効になっていた。ラーシュは相棒だった元捜査官や介護士と事件を調べ直す。果たして、犯人を見つけだし、報いを受けさせることはできるのか。
CWA賞、ガラスの鍵賞など5冠に輝く警察ミステリー小説です。時効を迎えた事件の犯人をどうするか。重いテーマを取り扱いながらも、悪態を吐くけれど周りから慕われているラーシュが子どもっぽさもたっぷりと残したよく喋るキャラクターであることで、サクサク読み進められます。母国では派生シリーズもあるという本作。日本でも発売されることを期待したい!

レイフ・GW・ペーション(著)久山葉子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
その日はベックストレーム警部にとって人生最良の日だった。マフィアお抱え弁護士として警察を悩ませてきたエリクソンが死体で発見されたのだ。被害者は自宅で殺されたと思われ、死因は鈍器による殴打、部屋からは被害者が発射した銃弾の跡が発見された。だが奇妙なことに、主人が殺害された四時間後に、飼い犬が殺されていた。エリクソンを恨んでいた人物は多数いるはずだが……。
CWAインターナショナルダガー賞最終候補作。不気味さ漂う書影に惹かれて手にしてしまう一冊。北欧ミステリーは閉ざされた土地を舞台にして、独特の世界観が漂う物語が描かれるのですが、本作は舞台スウェーデンを飛び出し、イタリア、ロシア、英国といった国の名前が登場します。ベックストレームのキャラクターにハマれるかハマれないかもシリーズを読むにあたって大事なポイントです。
ベルゲン大学法学部在学中の1984年から88年までノルウェーの国営テレビ放送局に勤務。その後の2年間、オスロ市警に検察官として勤務。90年にテレビの仕事に戻り、91年までニュース番組のキャスターを務めた。その後弁護士の仕事をしていたが、93年に『女神の沈黙』で作家デビュー。さらに96年には法務大臣の職に就く。翌年大臣の職を退いた後は、執筆活動を続けている。

アンネ・ホルト(著)枇谷玲子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
雪嵐の中、オスロ発ベルゲン行きの列車が脱線、トンネルの壁に激突した。運転手は死亡、乗客は近くの古いホテルに避難した。ホテルには備蓄がたっぷりあり、救助を待つだけのはずだった。だがそんな中、牧師が他殺死体で発見された。吹雪は止む気配を見せず、救助が来る見込みはない。乗客のひとり、元警官の車椅子の女性が乞われて調査にあたるが、またも死体が……。
避難したホテルはかなり大きめ。どこで誰が何をしようとしているのかが分からないので、気を抜くことができず、精神的に追い詰められる感あり。避難人数が多いことでプラスにもマイナスにも働くであろう集団心理のような部分も、犯人探しや事件解決に影響してきそうで、ドキドキしながら読み進めることができます。さまざまな社会問題を盛り込み、北欧ミステリーで王道感もあり。舞台となったホテルは実在するということなので、聖地巡礼に興味ありの方はぜひ!

アンネ・ホルト(著)枇谷玲子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
高級住宅街で殺人事件が。被害者は海運会社の社長と妻子、身元不明の男。オスロ市警の伝説と謳われる敏腕女性犯罪捜査官ハンネが事件を追う。
事件発生から解決までの10日間を描いたストーリー。物語は1日を1章として展開していく構成で緊迫感が漂います。衝撃的な幕開け、被害者の複雑な人間関係など、引き込まれるポイントがいっぱい。とにかく暗い世界観が好きという方におすすめです。
作家、舞台監督、劇作家。「刑事ヴァランダー」シリーズの第1巻『殺人者の顔』でガラスの鍵賞を、第5巻『目くらましの道』でCWA賞のゴールドダガーを、更に「Svenska gummistövlar 」で同賞のインターナショナルダガーを受賞。児童書やエッセイなども書いた、人気実力ともに北欧ナンバーワンの作家。2015年没。

ヘニング・マンケル(著)柳沢由実子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
雪の予感がする早朝、動機不明の二重殺人が発生した。男は惨殺され、女も「外国の」と言い残して事切れる。片隅で暮らす老夫婦を、誰がかくも残虐に殺害したのか。燎原の火のように燃えひろがる外国人排斥運動の行方は?
人間味溢れる中年刑事ヴァランダー登場。スウェーデン警察小説に新たな歴史を刻む名シリーズの開幕となった一冊です。本作のメインテーマはスウェーデンが抱える移民問題。約35年前のスウェーデンを描いていますが、現代にも通じるものを感じます。ヴァランダーが家族のトラブルで悩み続けるキャラクターというのも人間味に溢れていて面白さを感じるポイント。北欧ミステリーではこのタイプが主人公になりがち?!

ヘニング・マンケル(著)柳沢由実子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
北欧ミステリの帝王、ヘニング・マンケルが生んだスーパースター、イースタ署の刑事クルト・ヴァランダー。『殺人者の顔』登場前、ヴァランダーがまだ二十代でマルメ署にいた頃の「ナイフの一突き」「裂け目」から、イースタ署に移り、ベテランとなった「海辺の男」「写真家の死」を経て、『殺人者の顔』直前のエピソードで、飛行機墜落の謎と手芸洋品店放火殺人事件を追う「ピラミッド」に至る、5つの中短篇を収録。
ヴァランダーの知られざる過去を描いた、贅沢な作品集です。ヴァランダーの年齢順に並んでいるのも嬉しいポイント。ヴァランダーがいかにしてヴァランダーになったのかを時系列で知ることができます。これを読むとヴァランダーへの愛着が湧いてくるかも。
スウェーデンのジャーナリスト、作家。事件記者として新聞社に勤務後、スウェーデンの冒険家、ヨーラン・クロップを描いたノンフィクション作品でデビュー。2009年、英国の数学者アラン・チューリングに関する歴史小説を執筆。2011年、国際的なサッカースターのズラタン・イブラヒモビッチとの共著で、『I AM ZLATAN ズラタン・イブラヒモビッチ自伝』を出版、本作は2か月足らずで50万部を突破し、スウェーデンで大ベストセラーとなった。『ミレニアム』を執筆したスティーグ・ラーソンが急逝した後、同シリーズ第4作から第6作の執筆を引き継いだ。

ダヴィド・ラーゲルクランツ(著)吉井智津(訳)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川書店
ストックホルムで起きた、サッカー審判員撲殺事件。地域警官のミカエラは捜査に参加、尋問のスペシャリストで心理学者のハンス・レッケと出会う。彼は鎮痛剤の依存症だった。独特の心理分析で捜査陣をかく乱するレッケだったが、ある日ミカエラが地下鉄に飛びこもうとした彼を救ったことをきっかけに、二人は被害者の裏の顔と、事件の奥に潜む外交機密に突き当たる。元ピアニストの経歴を持つレッケは、アフガニスタン移民である被害者の中に音楽の痕跡を見つけるが、そこには凄惨な過去が待ち構えていた。上流階級のレッケと移民のミカエラ。奇妙なコンビは時と国境を越え、真実に迫る――。
大ベストセラー『ミレニアム』を書き継いだ著者によるバディシリーズ第1弾。ミカエラとハンスはホームズとワトソンをイメージしているとのこと。ミカエラの鋭い観察眼による推理はもちろん、実は切れる頭脳を持ちながらも、ドラッグの助けがないと役立たずになってしまうというハンスとのバディ感も大きな読みどころのひとつ。お互いのウィークポイントを補い合う形で捜査していく姿からはすでに成熟したバディ感も漂っています。

ダヴィド・ラーゲルクランツ(著)岡本由香子(訳)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川書店
14年前、金融界で華々しく活躍しながら、忽然と失踪したクレア。焼死体で見つかり死亡宣告されたはずの彼女が、ある写真に写り込んでいたという。移民街で育った警官ミカエラは、貴族で心理学者のレッケとともに、クレア生存の謎を捜査することに。クレアの勤めていたノルド銀行は、かつて債務不履行で破綻。スウェーデン政府は、ハンガリーの資産運用会社の手を借り、銀行を国有化していた。クレアが失踪前に会った男の正体を突き止めたミカエラ。一方レッケは、男の代理人から接触を受ける。男の名は、ガボール・モロヴィア。世界中の権力者を操る邪悪な男にして、レッケ最大の天敵だった。レッケとミカエラ、二人に過去の因縁が影を落とし、それぞれの家族に破滅的な危機が訪れる――。
『ミレニアム』を書き継いだ著者による『レッケ&バルガス』シリーズ第2弾。相変わらず噛み合わない時間の多いバディになんだかホッコリすらしてしまいます。本作ではそれぞれの私生活や過去が交互に語られていきます。かなりスケールの大きな物語が展開し、事件の背景にはきな臭さが漂いますが、読み終わってみると「なんだかんだ楽しかったかも!」と思えるシリーズです。
映画や演劇のシナリオライターをしながら、スウェーデンのベストセラー作家リザ・マークルンドの編集者を務める。2009年に『海岸の女たち』でデビュー。三作目の『Låt mig ta din hand』でスウェーデン推理作家アカデミーの最優秀ミステリ賞を受賞。作品は世界16か国で翻訳されている。

トーヴェ・アルステルダール(著)染田屋茂(訳)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川書店
14歳で凶悪事件を自白し保護施設で育ったウーロフ。23年後に釈放され帰郷した時、再び事件は起きた。ウーロフの父が死体で発見されたのだ。犯人と疑われ、世間の誹りを受けるウーロフ。捜査に当たる、ウーロフと同郷の警察官補エイラ。彼女の前に、次第に過去に起きた別の事件が浮かび上がってくる――。
スウェーデン推理作家アカデミー最優秀ミステリ賞、ガラスの鍵賞W受賞作。北欧ミステリーらしい設定・背景が詰まった一冊。小さな村ならではの複雑な人間関係、厳しい自然であるがゆえの美しさも想像できるような土地を舞台に過去と現在、二つの事件が交錯する中、描き出される過去のしがらみに囚われる登場人物たちの姿も注目ポイントです。

トーヴェ・アルステルダール(著)久山葉子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
「あなた、父親になるのよ――」それを伝えるために、舞台美術家のわたしは、単身ニューヨークからパリへ飛んだ。取材に行ったフリージャーナリストの夫の最後の電話から十日以上が過ぎていた。その間、夫から届いた封筒に入っていたのは、“あとひとつだけやることがあるんだ”という手紙と、謎めいた写真を保存した一枚のディスク。夫の行方を追ううちに、それまで普通の舞台関係者だったわたしは、ヨーロッパに広がる底知れぬ闇と対峙することになる――。
世界十六ヵ国で翻訳された、北欧ミステリの新女王のデビュー作。ずっしりとした読み応えを感じる社会派ミステリーです。舞台はスウェーデンではないのですが、ほの暗さを感じる結末に北欧の香りあり!
デビュー作『エリカ&パトリック』シリーズ第1作『氷姫』がヒットし、続く第2作『説教師』でブレイク。2005年にSKTF賞「今年の作家」賞、2006年度国民文学賞受賞。
メンタリスト、奇術師。テレビほかスウェーデンのメディアにしばしば登場し、著書も多数。

カミラ・レックバリ(著)ヘンリック・フェキセウス(著)富山クラークソン陽子(訳)
出版社(レーベル):文春文庫
女は箱に幽閉され、剣で貫かれて殺されていた。まるで失敗した奇術のように……。ストックホルム警察の刑事ミーナは、メンタリストで奇術に造詣の深いヴィンセントに協力を依頼する。奇術に見立てた連続殺人が進行中なのだ……。
スウェーデン・ミステリーの女王カミラ・レックバリが長年の友人でもあったスウェーデン屈指のメンタリスト、ヘンリック・フェキセウスとタッグを組んだ新シリーズ第1弾では、女性刑事と男性メンタリストが忌まわしい過去に端を発する奇術連続殺人に挑みます。メンタリストによる人間の心の動きや行動パターンに関する分析が面白く読めます。事件は北欧ミステリーらしくなかなかの残酷さで描かれます。

カミラ・レックバリ(著)ヘンリック・フェキセウス(著)富山クラークソン陽子(訳)
出版社(レーベル):文春文庫
地下鉄トンネル内で発見された白骨の山。やがて連続殺人だと判明した事件は、法務大臣の失踪という予想を超える大事件へと発展した。ストックホルム警察特捜班が奔走する中、たびたび犯罪捜査に関わってきたメンタリスト、ヴィンセントのもとにはパズルめいた挑戦状が頻々と届き、彼の過去を暴こうとする…。特捜班の刑事ミーナと、ヴィンセント。それぞれを巻き込む事件は、いずれもクリスマスをデッドラインとしていた。聖夜にいったいどんな惨劇が演じられるというのか?
北欧ミステリーの女王&スウェーデン最高のメンタリスト、最強タッグで贈る警察ミステリー。注目は北欧ミステリーの女王レックバリが仕掛ける渾身のドンデン返しです。『ミーナ&ヴィンセント』シリーズは本作で3作目。ラストに待ち受ける衝撃の真相は、一読の価値あり。想像を超える結末に持っていかれる感を味わってほしい一冊です。
ジャーナリスト。フランスの新聞社『ル・モンド』の北欧特派員を20年以上務める。ドキュメンタリー映画やTV番組製作にも携わり、ノンフィクションも執筆したのち、本シリーズで小説デビュー。母国フランスで熱狂的に迎えられ、シリーズ第1作『影のない四十日間』はミステリ批評家賞、813協会賞などを受賞したほか、英訳版はCWAインターナショナル・ダガー賞の最終候補作にもなった。

オリヴィエ・トリュック(著)久山葉子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
クレメットとニーナは、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドにまたがるサーミ人居住地でトナカイ関連の事件を扱うトナカイ警察の警察官。二人が配置されたノルウェーのカウトケイノで、サーミ人のトナカイ所有者マッティスが殺された。直前にクレメットたちが、隣人からの苦情を受けて彼のもとを訪れたばかりだった。トナカイ所有者同士のトラブルが原因なのか? サーミ人を排斥しようとする勢力、サーミ人の権利を主張する勢力、様々な思惑が入り乱れるなか彼らは捜査を進めるが……。
フランス批評家賞など23の賞を受賞した傑作ミステリー。舞台はノルウェー最北部。タイトルにあるように、太陽の出ない40日間が終了する日の早朝に事件が起きる。序盤から北欧ミステリーらしさを発揮しています。北欧の風景や暮らしぶり、文化や地質学に至るまで丁寧に描かれているのも魅力。フランス人による北欧ミステリーという点にも注目です。

オリヴィエ・トリュック(著)久山葉子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
石油景気に沸く沿岸の町ハンメルフェスト。町に侵入するトナカイをめぐりトナカイ所有者と住人とのトラブルが絶えない。そんななかトナカイ所有者の青年が、本土から島の餌場にトナカイを移動させている最中に狼湾(ヴアリギスンド)で事故死した。数日後、同じ湾で市長が死体で見つかる。偶然かそれとも。腑に落ちないものを感じたトナカイ警察のクレメットとニーナだったが、青年が死亡した日にクレメットの叔父が撮った写真に怪しげな動きの人影が写っていた。
日の沈まない夏の北極圏、北欧三国にまたがり活躍する特殊警察所属の警察官コンビが事件に挑む。『影のない四十日間』に続く「トナカイ警察シリーズ」第2弾。ストーリー展開はややゆっくりめですが、背景や風土、歴史などを味わいながらじっくりと読み進めたくなります。トナカイが泳げることなど発見もあるかも?!
映画監督、プロデューサー、脚本家。ヘニング・マンケルの『刑事ヴァランダー』シリーズの映画やテレビドラマの脚本も手がけているほか、仲間と設立した映像プロダクション会社でイェンス・ラピドゥスの『イージーマネー』三部作、カミラ・レックバリの『エリカ&パトリック事件簿』シリーズなどを映像化している。小説は本シリーズが初めて。
脚本家としてのほか、テレビやラジオ番組の司会者としても有名。テレビドラマ『THE BRIDGE』、ヘニング・マンケルの『刑事ヴァランダー』シリーズの映画やテレビドラマの脚本も手がけている。小説は本シリーズが初めて。

M・ヨート(著)H・ローセンフェルト(著)ヘレンハルメ美穂(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
少年は心臓をえぐり取られた死体で発見された。センセーショナルな事件に、国家刑事警察の殺人捜査特別班に救援要請が出された。メンバーはリーダーのトルケル以下四人の腕利き刑事。そこにひとりの男が加わった。男の名はセバスチャン・ベリマン、心理学者で殺人捜査特別班の元トップのプロファイラー。だがこの男、自信過剰で協調性ゼロ、アドレナリンとセックス中毒、捜査中でも関係者を口説いて寝てしまう、はた迷惑な奴だったのだ。
スウェーデンを代表する脚本家がタッグを組んだ、注目の北欧ミステリーシリーズの第1弾。テンポよく物語が展開、キャラクターの個性が立っているので、グイグイと世界観に引き込まれていきます。地道な捜査でじわりじわりと犯人に迫っていく過程もリアルで面白みあり。主人公セバスチャンはかなりクセつよタイプですが、なかなか人間味もあり。警察内の人間模様は「大丈夫なのか?」と心配になるレベルのドロドロ感もありますが、そこも含めて登場人物が面白いのもおすすめポイントのひとつです。

M・ヨート(著)H・ローセンフェルト(著)ヘレンハルメ美穂(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
出張帰りの夫の目に飛び込んできたのは、妻の無惨な死体。ふつうならこれだけでトルケル率いる殺人捜査特別班が呼ばれることはない。被害者が自宅の寝室で縛られ、首をかき切られていたのでなければ。その状況は、かつてセバスチャンがつかまえた連続殺人犯ヒンデの手口に酷似していた。だが、ヒンデはレーヴハーガ刑務所で服役中のはず。一方、ある動機で、ふたたび殺人捜査特別班に加わろうと企むセバスチャンは、渋るトルケルに売りこみをかけた。
凄腕だが自信過剰の迷惑男セバスチャンの捜査が再びスタート。前作でかなりのダメっぷり(人間としての)を見せたセバスチャンですが、今作ではさらに新たなダメが加わることに。それでも人間味を感じ、なんだか憎めないキャラクターに。人間関係は少し緩和して、ちょっぴり微笑ましさもあり。それぞれのキャラクターの解像度が上がり、人間模様に興味が湧いてきます。
テレビ脚本家を経て、1998年『罪』で小説家デビュー。第2作『喪失』で北欧5カ国のなかでもっともすぐれたミステリに与えられるガラスの鍵賞を受賞。以後『裏切り』『恥辱』『影』などを発表し、スウェーデンでもっとも人気のあるミステリの女王となる。

カーリン・アルヴテーゲン(著)柳沢由実子(訳)
出版社(レーベル):小学館文庫
事業で大成功して、なにもかもを手に入れた実業家アンダシュは、強烈な空虚感から自殺未遂をしてしまう。病院を無断で抜け出した彼は、スウェーデン北部の寒村にある、ヘレーナのホテルにたどり着く。ヘレーナも望まない離婚から、苦々しい想いの中で、一人娘を育てていた。アンダシュは自らの素性を隠しながら、このホテルで働くことになる。ヘレーナとアンダシュ、ビートルズのヴィンテージギターを所有する謎の男・ヴェルネル、ヘレーナの隣人アンナ=カーリンなど、登場人物のだれもが満たされない心を抱えながら、その足りないピースを探して、この村でもがくのだが……
スウェーデン北部の寒村が舞台の本作の物語は静かに進んでいきます。物語の進み方もタイトルもこれまでとは明らかに違う方向性でアルヴテーゲンの新しい一面に遭遇するかも、というドキドキ感を抱えながら読み進めたくなる一冊です。

カーリン・アルヴテーゲン(著)柳沢由実子(訳)
出版社(レーベル):小学館文庫
ストックホルムの32歳の女性ホームレスが、ある日突然、連続猟奇殺人犯として警察に追われることになる。食べ物と寝場所を求め格闘しながら、極限状態に身も心もすり減らし、たった一人で真相に迫っていく……。地方都市の富豪の一人娘がなぜホームレスになったのか。深い心の傷を負い、絶望と背中合わせに生きる主人公が、逃避の人生を清算し新しい生き方を獲得する過程は大きな感動を呼ぶ。
2000年北欧犯罪小説大賞受賞作。スウェーデン人らしさ溢れる暮らしぶりや、さらにホームレスという社会問題をうまく取り込んでいます。猟奇殺人が出てきますが、凄惨な描写はほとんどなし。真犯人の姿がなかなか浮かばず、どういう着地点になるのかと思っていたら最後の最後ですべての謎が華麗に解かれて”やられた”感を味わえます。
バーテンダー、クラブのガードマン、建設作業員、兵士など、さまざまな職業を経て作家に転向。フィンランド人の妻とともにヘルシンキに居住し、執筆活動を行った。2009年に発表した『極夜 カーモス』でエドガー賞やアンソニー賞などの新人賞にノミネートされ、注目を集める。ヘルシンキ大学でフィンランド語を学び、英語文献学の修士号を取得。2014年8月に死去。

ジェイムズ・トンプソン(著)高里ひろ(訳)
出版社(レーベル):集英社文庫
雪原に横たわる女性の惨殺死体。捜査にあたったカリ警部の元妻を奪った男が容疑者として挙がるが、第二、第三の殺人が起き……。
舞台はフィンランド北部。小さなコミュニティで起きた殺人事件。ミスリードありでハマってしまうと犯人は当てられないかも。北欧ミステリーで描かれる様々な要素、人種差別、移民問題、宗教問題、性的嗜好などをたっぷりと詰め込んでいます。ちなみに著者は北欧出身ではなく、フィンランド在住のアメリカ人というのも注目ポイントです。

ジェイムズ・トンプソン(著)高里ひろ(訳)
出版社(レーベル):集英社文庫
凄惨な拷問殺人事件の捜査と第二次世界大戦に関する極秘調査。二つの任務に奔走するヴァーラ警部に、上層部の圧力と暗い過去がのしかかる。
前作では地方を舞台にした猟奇殺人を描きましたが、本作ではフィンランドの歴史と国際政治の闇を背景に描くスケールの大きい作品に。『極夜』よりも早いテンポで物語が進みます。交互に進むエピソードはラストに見事に融合しスッキリ感が味わえます。
スウェーデンの小説家、文芸評論家。本名でも作家活動をしており、ミステリ執筆時の筆名が「アルネ・ダール」。スウェーデンの日刊新聞『ダーゲンス・ニュヘテル』の記者でもある。

アルネ・ダール(著)ヘレンハルメ美穂(訳)
出版社(レーベル):集英社文庫
スウェーデン実業界の大物が次々に殺された。お金目当てか怨恨か? 選りすぐりの刑事が集められた特捜班は、手がかりのひとつひとつを地道にあたる。やがて、被害者たちの共通点が見つかり……。
登場人物も多めで、人種、夫婦、健康問題に酒の密輸入に財界問題などなど。これでもかと要素を盛り込んでいます。警察の面々も個性派揃いで一癖あり。訳ありなメンバーが揃う割には、地味な捜査が展開するというギャップもよし。シニカルな会話も楽しめます。

アルネ・ダール(著)矢島真理(訳)
出版社(レーベル):小学館文庫
スウェーデン・ウプサラ市郊外の高速道路を走行中のBMWが、突然暴走し菜の花畑で炎上した。死亡したのは、運転中の大手製鉄会社幹部。一週間後、石油業界のキャンペーンを手がけていた広告会社幹部が第2の爆破事件で命を落とす。被害者はどちらも気温変動や環境破壊に関係していた。容疑者に挙げられたのは、森で隠遁生活を送る元警部ルーカス・フリセル。当時の彼の部下で今は国家作戦局(NOD)の主任警部エヴァ・ニーマン宛てに、彼からと思われる犯行予告の手紙が届いていたのだ。エヴァは、立ち上げられた特捜班Novaの曲者たちを率いて事件の捜査にあたり、第3の事件を警戒しながらフリセルを追うが――。
北欧ミステリーらしい社会派テーマを扱ったスリリングな物語が展開します。物語中盤からタイトルの「円環」とは何なのかという謎に迫り始めます。割とストレートで正統派な警察小説という印象。不穏なラストが気になりすぎます。
読み終えた後に独特の余韻が残るのも北欧ミステリーの魅力。シリーズ作品も多いのでお気に入りを見つけたら、じっくりと作者の世界に浸れるのもポイントです。北欧の美しい風景に想いを馳せ、他の地域にはない北欧ミステリーならではの味をじっくり堪能してみてはいかがでしょうか。
ミステリードラマもチェック!
ミステリーチャンネルでは、ノルウェーのミステリーの女王アンネ・ホルトがアガサ・クリスティーに捧げた世界的ベストセラー小説の最新映像化作品を独占日本初放送!2025年初頭に北欧のPrime Videoで配信され話題となった、緊迫感あふれるミステリー!
【放送情報】
捜査官ヴィルヘルムセン~吹雪に閉ざされたホテル(全4話)
字幕版:11/8(土)夕方4:00 一挙放送
番組公式サイト
ミステリーチャンネルでは、「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」「シャーロック・ホームズの冒険」「ヴェラ~信念の女警部~」など英国の本格ミステリーをはじめ、「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」などのヨーロッパの話題作や「刑事コロンボ」といった名作、人気小説が原作の日本のミステリーまで、選りすぐりのミステリードラマを放送しています。
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ミステリーチャンネルについて
世界各国の上質なドラマをお届けする日本唯一のミステリー専門チャンネル。「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」「シャーロック・ホームズの冒険」「ヴェラ~信念の女警部~」など英国の本格ミステリーをはじめ、「アストリッドとラファエル文書係の事件録」などのヨーロッパの話題作や「刑事コロンボ」といった名作、人気小説が原作の日本のミステリーまで、選りすぐりのドラマが集結!ここでしか見られない独占放送の最新作も続々オンエア!
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