主人公のモンタルバーノは、ヴィガータ署内で人望も厚く、キレ者だが、女性にはめっぽう弱い人情派の刑事。シチリアという場所柄、マフィア絡みの事件も多く、捜査のためなら、職権乱用や不法侵入、嘘をついての証拠収拾などは日常茶飯事。しかし、強引な捜査を繰り広げる反面、恋人との将来を真剣に考えることを後回しにしたり、死期が近い父親と向き合えない、といった大人になりきれない面も持っている。
また、モンタルバーノと共に捜査をするヴィガータ署の面々も個性的だ。ヴィガータ署No.2で、モンタルバーノの良き理解者であるミミ、忠実で優秀なファッツィオ、おっちょこちょいで笑いを誘う警官のカタレッラといった主要メンバーがストーリーに華を添える。モンタルバーノをはじめとして、同僚刑事達の個性豊かな人間性が丁寧に描かれ、また、感情の行き違いや、その生き様が招く事件を情感たっぷりに描き、人間ドラマとしてもひきこまれる。
さらには、海に面したテラス付の一軒家に住むモンタルバーノの暮らしぶりや、何度も登場するシチリアの魚貝をふんだんに使ったパスタ料理など、見ているだけでシチリアを旅行している気分になれるのも、このシリーズの魅力のひとつ。
