2025/01/31

ミステリー好き必見、名作揃いクローズドサークルのミステリー小説おすすめ41選【閉ざされた空間で事件は起きる】

クローズドサークルのミステリー小説の魅力とは?

クローズドサークルとは「絶海の孤島」「雪山の山荘」「田舎の館(屋敷)」など、外界との交通や連絡手段を絶たれた閉鎖空間で起こる事件や謎を題材にしています。「この中に犯人がいる」そんな空間に一緒に閉じ込められるのを想像しただけでハラハラドキドキ。外の世界とは連絡が取れない=助けが来ない=自分たちで解決しなければいけないということで、閉じ込められた人物たちによる心理戦も展開していきます。クローズドサークルのミステリー小説のお手本的存在がアガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」です。もはやジャンルの代名詞ともなっていて、今となっては古典的ですが、何度読んでもミステリーの手法の斬新さを堪能できます。多くのオマージュ作品を生み出しているタイトルだけに、最初に読んでおきたいクローズドサークル小説です。

犯人はこの中に…?!クローズドサークルのミステリー小説おすすめ41選

『屍人荘の殺人』

今村昌弘(著)
出版社(レーベル):東京創元社

神紅大学ミステリ愛好会会長であり”名探偵”の明智恭介とその助手、葉村譲は、同じ大学に通うもう一人の名探偵、剣崎比留子と共に曰くつきの映研の夏合宿に参加するため、ペンション紫湛荘を訪れる。合宿初日の夜、想像だになかった事態に見舞われ荘内に籠城を余儀なくされた彼らだったが、それは連続殺人の幕開けに過ぎなかった――。

数々のミステリランキングで1位に輝いた今村昌弘衝撃のデビュー作。前代未聞のクローズド・サークルをテーマに描いた本作は神木隆之介、浜辺美波、中村倫也を迎え実写映画化(2019年公開)。ミステリー×パニックホラー、青春要素ありと盛りだくさん。エンタメ色も強めです。

『孤島の来訪者』

方丈貴恵(著)
出版社(レーベル):東京創元社

竜泉佑樹は謀殺された幼馴染の復讐を誓い、ターゲットに近づくためにテレビ番組制作会社のADとなり、標的の3名とともに秘祭伝承が残る無人島、幽世島でのロケに参加していた。撮影の陰で復讐計画を進めようとした佑樹だったが、あろうことか自ら手を下す前にターゲットの一人が殺されてしまう。一体何者の仕業なのか――。

犯人当てを楽しみしたい方におすすめ! 二転三転する物語に惹き込まれます。特殊設定により、ちょっぴり振り回される感があり好みは分かれるかもですが、クローズド・サークル好きな方には手に取って欲しい1冊。

『十角館の殺人<新装改訂版>』

綾辻行人(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の驚愕の結末が読者を待ち受ける!

おすすめミステリー小説として本作のタイトルを挙げる人も多いのでは? 1987年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作の新装改訂版です。クローズド・サークル、どんでん返し、トリックに登場人物の名前の理由など。犯人判明の衝撃を味わった後に、読み返し答え合わせがしたくなります。初心者でも読みやすく、上級者は「やられた!」と思いながらも種明かしの瞬間のゾクっと感がクセになり、何度も読み返したくなります。

『仮面病棟』

知念実希人(著)
出版社(レーベル):実業之日本社文庫

療養型病院にピエロの仮面をかぶった強盗犯が籠城し、自らが撃った女の治療を要求した。先輩医師の代わりに当直バイトを務める外科医・速水秀悟は、事件に巻き込まれる。秀悟は女を治療し、脱出を試みるうち、病院に隠された秘密を知ることに。強盗犯により密室と化す病院。息詰まる心理戦が幕を開ける――。

現役医師が描く本格ミステリー×医療サスペンス。坂口健太郎、永野芽郁共演で実写映画化(2020年公開)。知念実希人作品は医療ものでも読みやすいので初心者にもおすすめです。犯人予想もそこまで難しい作品ではないけれど、ピエロの仮面を被った姿と密室と化した病院という設定にハラハラさせられ、犯人の動機を探るのにひと苦労。事件解決?!からのさらなるどんでん返しが味わえます。

『そして二人だけになった』

森博嗣(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

とてつもなく大きな橋を支える巨大コンクリートの塊の中に、国家機密とされるシェルタがあった。現代の最高技術で造られたこの密室に滞在することになった六人が、一人ずつ、殺される。痺れるような緊張感の中、最後に残った二人。そして世界が反転する――。

ミステリーのあるあるがたっぷりと詰め込まれていて、贅沢感が味わえると同時に「これはどういう結末に辿り着くのか…、回収できるのか…」とも気になってしまいますがご安心を。ちゃんと予想外の展開が待ち受けています。ちょっと変わったクローズド・サークルが堪能したい方におすすめ。森博嗣作品は読後にタイトルの意味を考えるのも楽しみのひとつです。

『はじまりの島』

柳広司(著)
出版社(レーベル):幻冬舎文庫

一八三五年、奇怪な生物が暮らす悪魔の島・ガラパゴス諸島に、英国船ビーグル号の乗員十一名が上陸した。天才学者ダーウィンらは、調査のため滞在を決定。だが島には殺人鬼が潜伏しているという。直後に発見された白骨死体。さらに翌朝には宣教師が絞殺体で見つかる――。

クローズド・サークルの舞台が、ダーウィンが『種の起源』(1859年)を発表する20年以上前という設定に興味をそそられます。さらに探偵役はダーウィン。歴史上の人物が探偵をに担うことは少なくないですが、進化論などにも触れる部分があり、ミステリーファン以外の心も刺激します。

『ジェリーフィッシュは凍らない』

市川憂人(著)
出版社(レーベル):東京創元社

特殊技術で開発され、航空機の歴史を変えた小型飛行船、ジェリーフィッシュ。その発明者のファイファー教授を中心とした技術開発メンバー6人は、新型ジェリーフィッシュの長距離航行性能の最終確認試験に臨んでいた。ところが航行試験中、閉鎖状況の艇内でメンバーの一人が死体となって発見される。さらに自動航行システムが暴走し、彼らは試験機ごと雪山に閉じ込められてしまう。脱出する術もない中、次々と犠牲者が……。

SF要素もたっぷり加わったクローズド・ミステリー。ロジカルな推理展開が好きな方はハマるはず。インターネットが今ほど発達していない時代だからこそのスリルが味わえます。それでもオマージュとされているアガサ・クリスティーたちの時代から見たら非常に現代的なトリックに仕上がっています。壮大な世界で繰り広げられる物語だからこその機械的なトリックですが、結末には納得! の一冊です。

『シャム双子の秘密』

エラリー・クイーン(著) 越前敏弥、北田絵里子(訳)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫

休暇からの帰途、クイーン親子はデービス山地で山火事に遭う。身動きが取れない二人は、不気味な山荘を見つけ避難することに。そんな中、手にスペードの6のカードを握り締めた山荘の主人の死体を見つける。

国名シリーズ屈指の異色作とも言われている本作では、山火事で閉ざされた不気味な山荘という閉鎖空間でエラリーが事件に挑みます。謎解きやロジックよりも、極限状態から抜け出せるかどうかに重きを置いている作品という印象なので、クローズド・サークルならではのハラハラ感を堪能したい方におすすめのエラリー作品と言えます。

『眼球堂の殺人』

周木律(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

神の書“The Book”を探し求める者、放浪の数学者・十和田只人がジャーナリスト・陸奥藍子と訪れたのは、狂気の天才建築学者・驫木煬の巨大にして奇怪な邸宅“眼球堂”だった。二人と共に招かれた各界の天才たちを次々と事件と謎が見舞う――。

天才たちが集い、不自然な死についての推理を繰り広げる様子を想像するだけで、「理解できなそうで面白い!」という気持ちを掻き立てられます。舞台となる密室の建物が異形であることも面白く、どんなトリックが味わえるのかとワクワク感が止まりません。図解もあるので、物語を深く楽しめるのもポイントです。

『アリアドネの声』

井上真偽(著)
出版社(レーベル):幻冬舎文庫

救えるはずの事故で兄を亡くした青年・ハルオは、贖罪の気持ちから救助災害ドローンを製作するベンチャー企業に就職。業務の一環で訪れた障がい者支援都市「WANOKUNI」で、巨大地震に遭遇する。ほとんどの人間が避難する中、一人の女性が地下の危険地帯に取り残されてしまう。崩落と浸水で救助隊の侵入は不可能。およそ6時間後には安全地帯への経路も断たれてしまう。ハルオは一台のドローンを使って、目も耳も利かない中川をシェルターへ誘導するという前代未聞のミッションに挑む!

タイムリミットありの密室もの。取り残されてしまった女性は目が見えず、耳も聞こえない。光も音も届かない絶対的迷宮。生還不能までの6時間で二転三転するストーリーにハラハラドキドキ。ドローン技術に詳しくなくても、解りやすい説明付きで、読者を置いてけぼりにしないのもうれしい。

『仮面山荘殺人事件』

東野圭吾(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

8人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入した。外部との連絡を断たれた8人は脱出を試みるが、ことごとく失敗に終わる。恐怖と緊張が高まる中、ついに1人が殺される。だが状況から考えて、犯人は強盗たちではない。7人の男女は互いに疑心暗鬼にかられ、パニックに陥っていく。

怪しい雰囲気を漂わせる登場人物に「犯人かもしれない」と疑いながらも動機やトリックがなかなか見抜けずに、最後まで読み進めてしまいます。東野圭吾、山荘、クローズド・サークル。並ぶワードに読み慣れている人こそいろいろな展開を予想しそうですが、ちょっと変わったクローズド・サークル作品で、慣れている人ほど騙されてしまうかも!?

『そして扉が閉ざされた 新装版』

岡嶋二人(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

富豪の若きひとり娘が自動車事故で不審死して3ヵ月、彼女の遊び仲間だった男女4人が、遺族の手で地下シェルターに閉じ込められた! あの事故の真相は何だったのか?

閉じ込められた4人が死にもの狂いで脱出を試みながらも、各々の記憶を頼りに推理を展開し真実を突き止めていきます。嘘をついているのは誰なのか。記憶の中の何が真実なのか。疑心暗鬼になりながらの緊張感、臨場感になかなか読めないオチ。ちょっと異色で面白いクローズド・サークルものです。

『白い僧院の殺人』

カーター・ディクスン(著) 高沢治(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

ロンドン近郊の由緒ある屋敷<白い僧院>でハリウッドの人気女優マーシャ・テイトが殺害された。周囲は百フィートにわたって雪に覆われ、発見者の足跡以外に痕跡を認めない。事件前にはマーシャに毒入りチョコレートが届くなど不穏な雰囲気はあった。甥が<白い僧院>の客だったことから呼び寄せられたヘンリ・メリヴェール卿は、たちどころに真相を看破する。

雪の密室でH・M卿の謎解きが堪能できるミステリーの名作で、江戸川乱歩が「カーの発明したトリックの内でも最も優れたものの一つ」と激賞している一冊です。探偵役以外にも推理パートがあるのも面白い! 密室の巨匠カーター・ディクスンが贈るクラシックな本格ミステリー。古典作品ではあるものの読みにくさを感じないのも魅力。一気読み必至です。

『永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした』

南海遊(著)
出版社(レーベル):星海社FICTIONS

「私の目を、最後まで見つめていて」

そう告げた『道連れの魔女』リリィがヒースクリフの瞳を見ながら絶命すると、二人は1日前に戻っていた。母の危篤を知った没落貴族ブラッドベリ家の長男・ヒースクリフは、3年ぶりに生家・永劫館に急ぎ帰るも母の死に目には会えなかった。葬儀の参加者ヒースクリフ、最愛の妹、叔父、従兄弟、執事長、料理人、メイド、牧師、母の親友、名探偵、そして魔女の11名。大嵐により陸の孤島と化した永劫館で起こる、最愛の妹の密室殺人と魔女の連続殺人の謎と真犯人とは――。

陸の孤島、魔女の館、そしてタイムループを加えた三重奏(トリプル)ミステリー。特殊設定ミステリーだからこその密室トリックに唸ります。探偵の独特な喋り方もハマってしまえば面白い。エピローグまで味わい尽くしたい一冊です。

『案山子の村の殺人』

楠谷佑(著)
出版社(レーベル):東京創元社

案山子だらけの宵待村で、案山子に毒の矢が射込まれ、別の案山子が消失し、ついに殺人事件が勃発する。現場はいわゆる“雪の密室”の様相を呈していた――。

合作推理作家の大学生コンビが謎に挑むシリーズ第1弾。なかなか難解な読者への挑戦が2回登場しますが、ハズれても楽しいのが本作の魅力。人物、背景、人間関係など描写もとても丁寧なので、没入感もGOOD! 奇想天外などんでん返しはないけれど、伏線の回収も綺麗なのでスッキリとした読後感が味わえます。

『ファラオの密室』

白川尚史(著)
出版社(レーベル):宝島社

紀元前1300年代後半、古代エジプト。死んでミイラにされた神官のセティは、心臓に欠けがあるため冥界の審判を受けることができない。欠けた心臓を取り戻すために地上に舞い戻ったが、期限は3日。そんな中、ミイラのセティは、自分が死んだ事件の捜査を進めながら、もうひとつの大きな謎に直面。タイムリミットが刻々と迫る中、セティはエジプトを救うため、ミイラ消失事件の真相に挑む!

エジプトを舞台にファラオを扱いながら、ファンタジー要素もプラスして展開する密室トリック×死者復活の異色ミステリー。シンプルなトリックで初心者にも読みやすいですが、設定が斬新なので、ミステリー慣れしている方も楽しめるはず。美しい装丁にも惹かれます。

『姿なき招待主(ホスト)』

グウェン・ブリストウ&ブルース・マニング(著) 中井京子(訳)
出版社(レーベル):扶桑社

奇妙な電報によって、摩天楼のペントハウスに集められた、街の名士8人。夜のパーティーと思いきや、それはおそるべき死のゲームの開幕だった――。ラジオを通して語りかける、姿なき招待主【ルビ/ホスト】が、1時間に1人ずつ、客を殺してくというのだ。密室状況のなか進められていく殺人計画。犯人は、そしてその目的とは?

戯曲『九番目の招待客』の原作となったサスペンスフルなミステリーで『そして誰もいなくなった』よりも前に出版されていることから、原型的作品という位置付けにもなっています。ラストの終わり方も潔く、時代ならではのスッキリ感が味わえます。トリックや小道具には時代を感じずにはいられませんが、都会のペントハウスで開かれる招待主不明のパーティーに集まる街の名士という設定だけで、心が躍ります。

『真夜中の密室 リンカーン・ライム』

ジェフリー・ディーヴァー(著) 池田真紀子(訳)
出版社(レーベル):文春文庫

密室を破る怪人<ロックスミス>VS現代の名探偵リンカーン・ライム。警察も敵に回り、犯罪組織に命を狙われながらも、名探偵はあくまで知力で戦いに挑む。そしていくつもの事件と謎と犯罪がより合わさったとき、多重どんでん返しが華麗に発動する――。

「いかなる鍵も錠前も僕の敵ではない」という天才鍵師との対決はライムシリーズならではの二転三転の展開に楽しく振り回されます。どんでん返しが来ると構えていても、「やられた!」となってしまうのはさすが。精神的な恐怖にもハラハラさせられます。

『禁じられた館』

ミシェル・エルベール、ウジェーヌ・ヴィル(著) 小林晋(訳)
出版社(レーベル):扶桑社

飲食産業で成功を収めた富豪のヴェルディナージュが、マルシュノワール館に引っ越してくる。それはこれまでの所有者には常に災いがつきまとってきたいわくつきの館。再三舞い込む「この館から出ていけ」との脅迫状。ある雨の夜、謎の男の来訪を受けた直後、館の主は変わり果てた姿で発見される。どこにも逃げ道のない館から忽然と姿を消した訪問者。捜査が難航するなか、探偵トム・モロウが登場し――。

1930年代に書かれたフランス産のヴィンテージミステリー。謎解きの設定はミステリー小説を読み慣れている人にとってはオーソドックスという印象ですが、展開が面白いのがポイント。登場人物全員に漂う怪しさ、事件発生時の夜の描写にソクゾクします。

『ウナギの罠』

ヤーン・エクストレム(著) 瑞木さやこ(訳)
出版社(レーベル):扶桑社

ウナギ漁のための小部屋のような仕掛け罠のなかで、地元の大地主の死体が発見された。入り口には外から錠がかけられ、鍵は被害者のポケットに――。そう、これは完璧な密室殺人だったのだ。さらに、遺体には一匹のウナギがからみついていた! 被害者をめぐる複雑な人間関係、深まる謎また謎……。

「スウェーデンのディクスン・カー」と称された、ヤーン・エクストレムによる不可能犯罪。密室殺人の鍵となるウナギの罠とはどんなものなのかも図解があるので、わかりやすくてありがたい(図解を先に見つけて読み始めるのがおすすめかも!)。時代の違い、文化の違いも受け入れ、読み進めるのがおすすめ。田舎特有のしがらみ、複雑な人間関係の描写も丁寧でとても興味深い作品です。

『密室黄金時代の殺人』

鴨崎暖炉(著)
出版社(レーベル):宝島社文庫

「密室の不解証明は、現場の不在証明と同等の価値がある」との判例により、現場が密室である限りは無罪であることが担保された日本では、密室殺人事件が激増していた。そんな中、著名なミステリー作家が遺したホテル「雪白館」で、密室殺人が起きた。館に通じる唯一の橋が落とされ、孤立した状況で凶行が繰り返される。現場はいずれも密室、死体の傍らには奇妙なトランプが残されていて――。

密室にフィーチャーしたクローズド・サークル好きにはたまらない一冊。ホテルや部屋の見取り図もあり、謎解きの手助けをしてくれます。ややクセの強めな登場人物たちも魅力的。名前と職業がリンクしやすくスッと入り込めるので、密室トリック解明に集中できるのも高ポイント!

『ヴェルサイユ宮の聖殺人』

出版社:早川書房
著者名:宮園ありあ

舞台は18世紀のフランス、ルイ16世が国を治めていた時代。ルイ16世のいとこで王妃マリー・アントワネットの元総女官長マリー=アメリーが、ヴェルサイユ宮殿の施錠された刺殺体に遭遇。殺されていたのはパリ・オペラ座の演出を務めるブリュネル。その傍には陸軍大尉ボーフラッシュが意識を失って倒れていて…。刺殺体に遭遇した知性あふれる公妃&刺殺体の傍に倒れていたカタブツ陸軍大尉のコンビが現場に残された血の伝言と、遺体の手に握られた聖書の謎に挑みます。どうせ閉じ込められるなら、美しい宮殿がいい!表紙に惹かれて読んでみたら…ドロドロ血生臭い物語が展開していきます。第10回アガサ・クリスティー賞優秀賞受賞作です。

※2024年1月にハヤカワ文庫JAにて文庫化予定

『硝子の塔の殺人』

出版社:実業之日本社
著者名:知念実希人

雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔へミステリーを愛する大富豪の呼びかけで招かれたのは刑事、霊能力者、小説家、料理人など、一癖も二癖もあるゲストたち。そして、この館で次々と惨劇が起こる。散りばめられた伏線、読者への挑戦状、圧倒的リーダビリティ、そして驚愕のラスト。作中で触れられるミステリーも気になり、小説を読みながら読みたい別の本が増えていきます。“招かれる”という設定に閉じ込められそうな予感がして、冒頭からゾクゾクします!

『名探偵に甘美なる死を』

出版社:東京創元社
著者名:方丈貴恵

VRミステリーゲームの試遊会が探偵とその人質役の命をかけた殺戮ゲームへと一転。生き延びるにはVR空間と現実世界の両方で起きる殺人事件を解き明かすしかないという事態に。VR空間と会場のメガロドン荘、二重のクローズドサークルで繰り広げられるデスゲーム。脳をフル回転して挑みたい謎解きです。以前ならVRはゲームや映画の中での話という印象が強かったですが、近年の技術の進歩によりバーチャルでもリアリティを感じるのがポイント。VRならではのトリックも秀逸です!

『ある閉ざされた雪の山荘で』

出版社:講談社
著者名:東野圭吾

早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した俳優志願の男女7名。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇。その舞台稽古が始まると1人また1人と現実に仲間が消えていく。彼らの間に疑惑が生まれ始めて…。果たしてこれは本当に芝居なのか。殺人劇の恐怖の結末とはーー。王道のクローズドサークル小説ですが、登場人物が俳優志望ということで、演技なのか事実なのかと疑う謎が1段階加わる感じにワクワクします。

『死と奇術師』

出版社:早川書房
著者名:トム・ミード
翻訳:中山宥

舞台は1936年、ロンドン。高名な心理学者リーズ博士が、自宅の書斎で何者かに殺されているのが発見された現場は密室状態。凶器も見つからず、死の直前に博士を訪れた謎の男の正体も分からない。この不可能犯罪に、元奇術師の探偵ジョセフ・スペクターが挑みます。15章からエピローグが袋とじとなる、読者への挑戦状付きの本格ミステリー。1936年という時代だからこそ成り立つ物語&トリックですが、ちゃんとその時代にも閉じ込められる読みやすさで世界観へと誘ってくれます。

『インシテミル』

出版社:文藝春秋
著者名:米澤穂信

「ある人文科学的実験の被験者」になるだけで時給十一万二千円がもらえるという破格の仕事に応募した十二人の男女。とある密室空間に閉じ込められた彼らは、実験の内容を知り驚愕。それはより多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う犯人当てゲームで…。閉じ込められて監視されて、さらに怪しげなルールまで加わり、凶器まで与えられ、恐怖は増すばかり。一人、一人と殺されていくというクローズドサークルらしい展開と、実験期間の7日という制限時間がハラハラドキドキを掻き立てます。

『すべてがFになる』

出版社:講談社
著者名:森博嗣

孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑みます。今となっては古さも感じるテクノロジーですが、物語には古さを全く感じません。天才の思考とは…考えながら楽しめる作品。ドラマにもアニメにも漫画にもなった人気原作です。

『紅蓮館の殺人』

出版社:講談社
著者名:阿津川辰海

高校の合宿をぬけ出し、隠棲した文豪の館を訪れた田所と葛城。館で仲良くなった少女が死体で発見され、葛城は真相を推理しようとするが、館には山火事が迫る。タイムリミットは35時間。生存と真実、選ぶべきはどっちだ!!密室ものにタイムリミットが乗ってくるだけでスリル度がアップします。ただ、本作の登場人物はちょっと感情が薄め。何かを意味する冷静さなのかといろいろと疑いながら読み進めてしまいます。若さゆえ、独りよがりの動機、正義も退く時の怖さを掻き立てます。

『双頭の悪魔』

出版社:東京創元社
著者名:有栖川有栖

四国山中に孤立する芸術家の村へ行ったまま戻らないマリア。英都大学推理研の一行は大雨のなか村への潜入を図るが、ほどなく橋が濁流に呑まれて交通が途絶。川の両側に分断された江神・マリアと、望月・織田・アリスの双方が殺人事件に巻き込まれ、各々の真相究明が始まります。読者への挑戦が3つも添えられた、犯人当ての限界に挑めるミステリーです。よく知られたトリックにひと工夫。たったそれだけで!と感激する瞬間に何度も味わえます。

『冷たい校舎に時は止まる(上)』

出版社:講談社
著者名:辻村深月

雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろうーー。ホラーテイストも感じるちょっと不気味な終わり方も、思い出せそうで思い出せないもどかしさと高校時代特有の閉塞感へのゾワゾワ感。この閉塞感こそがクローズドサークルの醍醐味かも。学校が楽しいか楽しくないかで世界の見え方って変わるんだなと、高校生にとっての学校という存在を考えさせられます。

『館島』

出版社:東京創元社
著者名:東川篤哉

天才建築家・十文字和臣の突然の死から半年が過ぎ、未亡人の意向により死の舞台となった異形の別荘に再び事件関係者が集められたとき、新たに連続殺人が勃発。嵐が警察の到着を阻むなか、館に滞在していた女探偵と若手刑事は敢然と謎に立ち向かいます。瀬戸内の孤島に屹立する、銀色の館で起きた殺人劇をコミカルに描くミステリー。もちろん本格ミステリーとしてもしっかり楽しめます。大掛かりなトリックのスケールにも感動。舞台となる別荘の形に注目!

『方舟』

出版社:講談社
著者名:夕木春央

地震によって山奥の地下建築に閉じ込められた柊一たち。水が流入しはじめ、地下建築の水没までおよそ1週間。地下建築から脱出するためには、1人のうち誰か1人を犠牲にしなければならない。そんななか、殺人事件が起こり…。倫理観に訴えるクローズドサークルミステリー。方舟平面図を手にした極限状態での謎解きが楽しいだけに、冷静に状況判断を進めてきた犯人の真相が明かされた時の衝撃はかなりのもの。

『袋小路くんは今日もクローズドサークルにいる』

出版社:宝島社
レーベル:宝島社文庫
著者名:日部星花

扉も窓も開かず、破ることすらできない。携帯電話は圏外で、固定電話もなぜか繋がらない。事件現場に立ち入ると、その空間を強制的に“クローズドサークル”にしてしまう呪いを持った高校生・袋小路鍵人。解除するには、事件の真相を究明しなければならなくて…。校内で呪いが発動するたび、行動をともにする美少女・時任さんの推理力を頼りに、閉鎖状況から脱出すべく事件解決を目指す学園ミステリー。クローズドサークルで起きている事件、ではなく事件が起きたらクローズドサークルになるという逆転の発想にグッと心を掴まれます!

『毒入りコーヒー事件』

出版社:宝島社
レーベル:宝島社文庫
著者名:朝永理人

自室で毒入りコーヒーを飲んで自殺したとされている箕輪家長男の要。「遺書」と書かれた便箋こそ見つかったものの、その中身は白紙。十二年後、十三回忌に家族が集まった嵐の夜、今度は父親の征一が死亡。傍らには毒入りと思しきコーヒーと白紙の遺書という要のときと同じ状況で…。道路が冠水して医者や警察も来られないクローズドサークル下で、過去と現在の事件が重なり合う!サクサク読めるけれど、誰と誰の会話なのか、誰の視点で見ているのかを考えながら読み進めないと、気づいた時にはもうすでに謎の渦に導かれてしまっている…となってしまうかも。

『ムーンズエンド荘の殺人』

出版社:東京創元社
著者名:エリック・キース
翻訳:森沢くみ子

探偵学校の卒業生のもとに、校長の別荘での同窓会の案内状が届いた。吊橋でのみ外界とつながる会場にたどり着いた彼らが発見したのは、意外な人物の死体。さらに吊橋が爆破され孤立した彼らを、殺人予告の手紙が待ち受けていて…。密室などの不可能状況で殺されていく卒業生たち、錯綜する過去と現在の事件の秘密とは。著者はゲーム会社でパズルゲームのデザイナーをしていたこともあり、ゲームシナリオのような感覚で読み進められます。

『オリエント急行の殺人』

出版社:早川書房
著者名:アガサ・クリスティー
翻訳:山本やよい

小柄なベルギー人が神業ともいうべき推理を見せる「名探偵ポアロ」シリーズの代表作。オリエント急行に乗ったポアロはアメリカの富豪が殺される事件に遭遇し、捜査を開始。出身国も職業もさまざまな乗客から聴取した結果、それぞれのアリバイが成立するのですが…。何度も読み、犯人もラストも知っている状態でも先の展開にハラハラドキドキ。ポアロの冴えすぎな推理が心地よい。謎解きが展開する最終章だけでも何度も読みたくなる傑作中の傑作です。

『ロジャー・マーガトロイドのしわざ』

出版社:早川書房
著者名:ギルバート・アデア
翻訳:松本依子

1935年、英国ダートムア。吹雪のため、人々はロジャー・フォークス大佐の邸に閉じ込められた。やがてゴシップ記者がその場にいた全員の秘密を握っていることを示唆し、彼への憎しみが募るなか、悲劇が起きて…。アガサ・クリスティーへのオマージュを込めた作品だけあって、随所にクリスティーを感じます。田舎町で、雪で、クリスマスで、密室。ポイントをおさえすぎた設定で新しさは感じないかもしれませんが、これぞ海外古典ミステリー!と納得しながら楽しめる作品です。

『誰も死なないミステリーを君に』

出版社:早川書房
著者名:井上悠宇

自殺、他殺、事故死など、寿命以外の“死”が見える志緒。そんな彼女を悲しませぬよう、僕は死が予期される秀桜高校文芸部の卒業生4人を、密室状態の孤島に閉じ込めて救う!ファンタジーっぽさも感じるSFテイストありの日常ミステリーなので読みやすくておすすめ。単なるクローズドサークルではなく、特定の人物に見える予兆を回避するために“逆”クローズドサークルをする設定がおもしろい。誰も死なないミステリーであれば、犯人でさえも救われる?という期待を持ちながら読み進められます。

『名探偵のままでいて』

出版社:宝島社
著者名:小西マサテル

七十一歳となった元小学校校長の祖父は現在、幻視や記憶障害といった症状の現れるレビー小体型認知症を患い、介護を受けながら暮らしていた。しかし、小学校教師である孫娘の楓が、身の回りで生じた謎について話して聞かせると、祖父の知性は生き生きと働きを取り戻す。孫娘の持ち込む様々な「謎」に挑む老人。日々の出来事の果てにある真相とは。認知症の祖父が安楽椅子探偵(事件現場に出向くことなく、刑事や関係者に話を聞くだけで事件を解決する探偵)となり、不可能犯罪に対する名推理を披露。初心者向けの読みやすさとミステリー好きの古典作品へのオマージュのバランスもGOOD!

『バスに集う人々』

出版社:実業之日本社
著者名:西村健

路線バスで各地を巡りながら、人と出会い、日常の謎を追う。謎を解き明かすのは、元刑事・炭野の妻・まふる夫人。最後に彼女が挑んだのが、フィッシング詐欺常習犯の行方で…。路線バスを駆使して逃亡する犯人は、いったいどこへ向かうのか。1章ごとに主役の違う8章の短編集でサクサク読めます。バスという密室空間にいながらも、街並みや歴史を楽しみながら旅をするように楽しめるほのぼの系ミステリー。土地勘があるとより物語に没入でき、面白みが増します。

最後に

謎解きの要素が強いクローズドサークルのミステリー小説は、真相解明時の爽快感もたまりません。クローズドサークルのミステリー小説は定番から新感覚まで傑作揃い。一度ハマったら抜け出せない。怖いけれど入りたくなる。そんなクローズドサークルのミステリー小説の沼へと足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

ミステリーチャンネルでは、アガサ・クリスティー原作の大人気シリーズで、デビッド・スーシェ主演の「名探偵ポワロ」を放送しています。上でご紹介している「オリエント急行の殺人」は、シーズン12第4話(通算64話目)で放送!ぜひ映像化作品も併せて、ご覧ください。

【ミステリーチャンネル放送情報】
●名探偵ポワロ(シーズン1~13・全70話)
ニカ国語版:2025/2/10(月)午前11:00スタート

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タナカシノブ
紹介文:2015年9月よりフリーライターとして活動中。映画、ライブ、歌舞伎、落語、美術館にふらりと行くのが好き。