『オックスフォードミステリー ルイス警部』。 1話完結の本格ミステリー『主任警部モース』のスピンオフとしても有名な本作。 今回は、このドラマの魅力に迫ってみたいと思います！

人気刑事ドラマのスピンオフ！

実はこのドラマ、スピンオフなのです。
1987年から2000年にかけて放送された『主任警部モース』の続編として制作されました。

オックスフォードのテムズ・ヴァレー署に勤務するモースは、優秀だが型破りな警部。
仕事に対する厳しさを持ち、部下や上司にも鋭い意見をぶつける彼だが、その一方で教養豊かで、オペラ好き。酒と煙草を愛し、女性にはめっぽう弱い…。
そんな変わり者のモースを上司に持った部長刑事ルイス。時にぶつかり、時に助けながら部下として、友として彼を支えました。

モース（右）と若かりし頃のルイス（左）
(c) ITV Pl

CWA（英国推理作家協会）ゴールドダガー賞を受賞したコリン・デクスター原作の『主任警部モース』。
クロスワードパズル作家としても有名なコリン・デクスター。
主人公モースの趣味もクロスワード・パズル。
彼がパズルを解くように、事件に隠れる謎を一つ一つ解決していくストーリーは、見る者を惹きつけます。

モース役：ジョン・ソー（左）、、原作者：コリン・デクスター（右）
原作者がドラマの中に登場する「カメオ出演」をしていたことでも有名な作品です。

(c) ITV Plc

モースの精神はルイスに…受け継がれる刑事の極意

全３３話の『主任警部モース』。
その終わり方はかなり衝撃的なのですが、限りなくネタバレなので、ここでは伏せておきます…。

前作の終了から数年後。
オックスフォードの街に戻ってきたルイスは警部になっていました。
ケンブリッジ大学卒のインテリ刑事、ハサウェイとコンビを組み、学園都市オックスフォードで起こる様々な事件を解決していきます。

叩き上げの昔ながらの刑事であるルイスは、高学歴で教養高いハサウェイとなかなか打ち解けられない…。
それはまるで、かつてのモースとの関係を彷彿とさせるものがあります。

インテリの相手なら慣れている…とはいえ
(c) ITV Plc

しかし、シーズンを重ねていくごとに彼らの信頼は強固なものになっていきます。
二人の会話ややりとりから、関係性の変化が手に取るように伝わってくるのもこのドラマの魅力の一つ。

ルイスとハサウェイを中心とした登場人物たちの抱える秘密が次第に明らかになっていく中で、
お互いを支え合おうとする姿には、心が温まること請け合いです。

オックスフォードならではの謎が満載！テーマ性に富んだ事件の数々…

街全体が大学のようなオックスフォードを舞台にしているだけあり、各エピソードで起こる事件は、歴史や文学など学問に関するものばかり。
一見すると、ハサウェイの得意分野ばかりに思えますが、起きているのは殺人事件。
ベテラン刑事ルイスの長年の経験と磨き抜かれた勘が冴えわたり、アカデミックな事件の裏に隠された人間の本質を浮き彫りにします。

刑事としての経験が浅かったハサウェイも、ルイスと共に仕事をしていくことで、専門知識を豊富に持つ自分を保ちながら、捜査に必要なノウハウを身に着けた捜査官として成長していきます。

捜査を重ね、ハサウェイは自他ともに認めるルイスの右腕に
(c) ITV Studios Limited 2009

重厚なストーリーを彩る魅力的なキャスト達

ロバート・ルイス役：ケヴィン・ウェイトリー

スピンオフ作品ということで、主人公ルイス警部を演じるケヴィン・ウェイトリーは、なんと通算22年も同じ役を演じ続けていたことに！『主任警部モース』の時には、家族サービスに勤しむ愛妻家で、昇進について悩む年若い刑事だったルイスもすっかり中年のおじさんに…！思わず時の流れを感じてしまいますが、年を重ねたことで難事件にも怯まず挑む、頼もしい存在になりました。

スポーツマンという設定だったルイス。モースに頼まれ、クリケット選手に扮したことも
(c) ITV Plc

前作の終了から数年後の設定の『ルイス警部』。
ルイスは愛する妻を交通事故で失い、子供たちも自分の手を離れ、どこか陰のある男性へと変わっていました。
『主任警部モース』での彼を知れば、誰しもその変貌に驚くでしょう。

そして同時に、長い年月を経て完成された、「ルイス」という一人の男の人生に、夢中になるはずです。

 (c) ITV Plc

『孤高の警部ジョージ・ジェントリー』(2007-)にも2012年にゲスト出演したケヴィン・ウェイトリー。
『ルイス警部』が2015年に終了したのちは、英国で放送中のコメディ『Still Game(原題）』(2002-)に出演しています。

ジェームズ・ハサウェイ役：ローレンス・フォックス

(c) ITV Studios Limited 2009

ルイスの相棒として活躍する若き刑事ジェームズ・ハサウェイを演じたのは、今若手英国俳優として注目を集めているローレンス・フォックス。英国男優好きの方なら、AXNミステリーで放送された「英国男優のすべて」をご覧になったことがあるかもしれませんが、彼はそこで他の名だたる俳優と共に紹介されました。
お父さんはこれまた有名な俳優、ジェームズ・フォックス。
映画『シャーロック・ホームズ』(2009)や、『ミステリー・イン・パラダイス』(2011-)、『ダウントン・アビー』(2010-2015)など著名な作品に多数出演しています。『チャーリーとチョコレート工場』(2005)では、わがままなベルーカを娘にもつ大富豪を演じていましたね。

「名探偵ポワロ」デヴィッド・スーシェ（左）とジェームズ・フォックス（右）
© ITV PLC

実は「ルイス警部」にも出演していました。親子の共演！
(c) ITV Plc

Dr.ローラ・ホブソン役：クレア・ホフマン

『主任警部モース』で1995年から2000年の5年間、検視官Dr.ホブソンを演じたクレア・ホフマン。
彼女は『ルイス警部』でも同役でレギュラー出演をしています。

偏屈で医者に対してあたりの強いモースに、物怖じせずにハッキリ意見を述べる若手検視官だった彼女。
長年の信頼があるルイスとは、お互いの仕事を認め合う、遠慮のない関係。
ぶつかりあうルイスとハサウェイを、いつも温かく、時に厳しく見守る大きな存在です。

(c) ITV Plc

(c) ITV Studios Limited 2012

『ルイス警部』ファンの筆者としては、このローラ・ホブソンという女性を語らずにはいられません！

ルイスがモースの下で働いていた頃からの長い付き合いの二人。
他の人が言いにくいことも、この二人ならば言い合える。殺人事件の捜査という過酷な仕事において、二人はいわば「戦友」でした。
しかし、ストーリーを重ねていく中で、二人の間には「友情」以上の感情が芽生えていきます。

川沿いをただ手をつないで歩いたり、高級レストランに行く服装で、路上のフィッシュ・アンド・チップスを仲良く頬張ったり…。
ルイスとホブソンの、大人の、そしてどこか青春時代を彷彿とさせるような付き合い方にも注目です。

いかがでしたか？
歴史的な建物が立ち並ぶ学園都市を舞台にした『オックスフォードミステリールイス警部』。
ドラマの重厚なストーリーはもちろん、背景の美しいオックスフォードの街並みも魅力的な本作。

なんと、前作である『主任警部モース』の主人公モース警部の若かりし頃を描いたもう一つのスピンオフ作品『新米刑事モース～オックスフォード事件簿』も放送されたほど！

本家『主任警部モース』を観たことがなくても、もちろん楽しめます。
しかし、モースを観たうえで改めてルイス警部の活躍を観た時に、きっとあちこちにちりばめられた本家へのオマージュを見つけることができるでしょう。

ルイスが抱く、恩師モースに対する尽きることのない尊敬の念。
モースの捜査に対する精神を受け継いだルイス警部。そして、さらに彼の後を追うハサウェイ刑事。

この3世代に渡り受け継がれていく刑事魂の素晴らしさを、あなたも是非、作品を通して感じ取ってください。

(c) ITV Plc

(c) ITV Studios Limited 2012

［文：滝脇まる（うりまる）]

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