「特集もっと楽しむミステリー」今回は、ドイツミステリーの魅力を深掘りしていきます!6月にミステリーチャンネルで放送される2作品の見どころを紹介するとともに、今年の1月と2月にドイツのミステリー作品を連続して出版された東京創元社編集部さまへのインタビューもお届けします。ドラマでも小説でも、ドイツミステリーの魅力を知るきっかけにしていただけると嬉しいです。
インタビューにお答えくださったのは、今回出版されたドイツミステリー作品の担当編集者、佐々木さま。ドイツミステリーと作品の見どころを語ってくださいました。
Q:ミステリーチャンネル編集部
(佐):東京創元社 編集部 佐々木さま
Q.この度ミステリーチャンネルでは「東西ドイツ統一35周年 ドイツミステリー特集」を放送します。東京創元社からも、今年の1月と2月に2カ月連続でドイツミステリー小説「17の鍵」「19号室」を刊行されました。そこでお聞きしたいのですが、ずばり、ドイツミステリーの魅力とは何でしょうか?
(佐):ドイツミステリーと言ってもさまざまなタイプがありますが、なかでも、第二次世界大戦中や戦後の歴史的事実を取り入れ、社会を描きつつ人間も描いたものが多い印象です。また、近年はベルリンの壁崩壊から長い年月が経ち、東西ドイツそれぞれの抱える歴史の闇や統一後の混乱を題材にしたミステリーも発表されるようになりました。
エンターテインメント作品でありつつ、非常に重厚感のある読み味も魅力だと思います。ドイツではページが多い本が人気なので、翻訳版もかなり分厚い作品が多いのですが、その分、独特の世界観にどっぷり浸って読むことができます。日本とはまったく違う社会を描きつつも、人間の心理や犯罪が起こる背景には共通するところもあり、日本のミステリーと読み比べるのも楽しみのひとつだと思います。
Q.今回刊行されたドイツミステリー小説2作品「17の鍵」「19号室」について教えて下さい。どんなお話でしょうか?
(佐):はみ出し者の刑事トム・バビロンと臨床心理士のジータ・ヨハンスがさまざまな殺人事件の解明に挑む全4作のミステリ・シリーズです。ベルリンのさまざまな名所が事件現場となり、背景にはドイツという国家が抱える歴史の闇があります。
Q.2カ月連続で刊行された理由は何かあるのでしょうか?
(佐):本来は半年間くらいのあいだを空けて2冊を刊行する予定でした。しかし『17の鍵』の翻訳原稿を初めて読んだときに、あまりにも続きが気になる!という終わり方だったので、読者の皆さんにもすぐに続きを読んでほしいと思い、翻訳された酒寄進一先生とご相談のうえ、2カ月連続刊行に切り替えました。
「17の鍵」
著:マルク・ラーベ 訳:酒寄 進一
出版社:東京創元社
「19号室」
著:マルク・ラーベ 訳:酒寄 進一
出版社:東京創元社
Q.本作の押しポイント、注目のポイントを教えて下さい。
(佐):このシリーズの魅力は、なんといっても疾走感あふれる読み味です! 冒頭から、ベルリン大聖堂に死体が吊り下げられるという衝撃的な事件が起こり、最後までまったく緩むことなく、さまざまな謎が生まれ、手がかりが現れ、死体が飛び出し、捜査をする刑事たちに危機が襲い掛かります。
キャラクターにもご注目ください。刑事トム・バビロンと臨床心理士のジータ・ヨハンスは、過去に遭遇した事件に、現在も深くとらわれています。トムは少年のころに男の死体を見つけたことと、幼い妹の失踪事件。ジータのほうは……。ぜひ読んで確かめてみてください。各巻で描かれる殺人事件自体はそれぞれ独立していますが、主人公ふたりのトラウマやさまざまな要素が複雑に絡まっており、シリーズ全体に読み応えを与えています。
ここからは、ミステリーチャンネルで6月に放送されるドイツミステリー2作品を紹介していきます。ひとつめは、東西ドイツ統一直後の混乱の中で起こる凶悪犯罪に、東西の刑事たちが協力して立ち向かう姿を描いた「カロとペーター 統一ドイツ捜査チーム」。もう一つは、ドイツで圧倒的な人気と視聴率を誇るクライムサスペンス「Tatort」シリーズから、2011~2012年に放送された「キール編」である「警部ボロウスキの事件現場」です。ドイツならではの社会事情を丁寧に描きこみながら、クライムサスペンスとしての魅力に満ちた作品の見どころをお届けします!
© 2022 ardmediathek.de
1991年、東西統一直後のドイツ・ベルリンを舞台に、旧東ドイツの犯罪を捜査するために新設された”ZERV“(政府犯罪および統一犯罪中央捜査局)の捜査官たちが、ある高官の殺人事件を捜査する中で、ドイツ国内でひそかに進んでいた巨大な陰謀に迫っていくクライムドラマです。
主人公は、東ドイツ出身の主任警部カロ・シューベルトと、西ドイツ出身のペーター・ジモン警部。性格、服のセンス、仕事への取り組み方…何もかもが正反対の二人は、時代がもたらす緊張感も相まって、当然ながら最初はうまくいきません。共通点といえば、お互いがお互いのことを「無能」と思っていること…という感じだった二人ですが、国の中で暗躍する悪の存在に気が付いたとき、「守るべき市民と正義に、西も東もない」ことを意識するようになります。世界の歴史の中でもとりわけ有名な「東西統一」ですが、ドイツにとっては現在と地続きにある一つの時代であり、今もなお根深い問題も抱える重要なテーマであることがよくわかる注目作です。
© 2022 ardmediathek.de
©︎ NordFilm Kiel commissioned by NDR
ドイツの各都市を舞台にした国民的人気刑事ドラマ「Tatort」シリーズより、2011年から2012年にかけて放送された「キール編」である本作。キール在住の寡黙な警部ボロウスキと、若き相棒のザラが難事件の解決に奔走する全4話のシリーズです。
ボロウスキ警部は、完璧主義で優秀な捜査官ではあるものの、愛想が悪いのが玉にキズ。しかし、奥さんに捨てられたと転がり込んできた友人をしばらく居候させてあげたり、新たに部下になったザラが死体を見て体調を崩せば、優しい言葉をかけて一緒に回復を待ったりと、不器用ながらも優しい性格の持ち主です。
ドイツの警察にもデジタル化の波が押し寄せているようですが、携帯もめったに使わず、机の上のパソコンは見ないふりをするアナログ派なボロウスキ警部。コンピュータ方面に明るい若い相棒を頼りにしながら、昔ながらの捜査で凶悪事件に対抗していきます。一つひとつの事件をじっくりと描いており、王道のクライムサスペンス好きな方は大満足の作品だと思います。
©︎ NordFilm Kiel commissioned by NDR
今回はドイツミステリーの魅力に迫るべく、ドラマと小説それぞれのジャンルから今オススメの作品をご紹介しました。どの作品も、ドイツならではの社会背景や歴史事情を多分に含みながらも、事件の根幹にある人間の感情を丁寧に描いています。個人的には、ドラマも小説も「質も量もたっぷり」というイメージが強いドイツミステリーですので、見ごたえ・読み応えはバッチリだと思います。ぜひチェックしてみてください!
(文:うりまる)
【ミステリーチャンネル放送情報】
●カロとペーター 統一ドイツ捜査チーム(全6話)
字幕版:6/15(日)夕方4:00 一挙放送
東西ドイツ統一後のベルリンを舞台に、当時の社会的混乱や東西の対立を描いたクライムドラマ!
旧東ドイツでの不正行為を捜査する警察組織ZERVで働くことになった西ドイツの警部ペーター・ジモンと東ドイツの警部カロ・シューベルトが、タッグを組んで事件の真相に迫る!
東ドイツの過去の犯罪を捜査するために1991 年から 2000 年まで実在した警察機関、通称ZERVの活動を描いた問題作!
●警部ボロウスキの事件現場(全4話)
字幕版:6/29(日)夕方4:00 一挙放送
ドイツが誇るクライムドラマの金字塔、ドイツ最長の伝説のミステリー「Tatort」シリーズのキール編!
寡黙な一匹狼気質のボロウスキ警部が、若き相棒とともに難事件を解決する!
●警部ベリンガー バンベルクの事件簿(全4話)
字幕版:6/22(日)夕方4:00 一挙放送
絵画のように美しい世界遺産の町バンベルクの秩序を取り戻し、犯罪者を裁くため、のんびりとした外見と穏やかな眼差しとは裏腹にカミソリのように鋭い洞察力を潜ませるベリンガー警部が難事件に挑む、2024~2025年に放送されたドイツミステリー最新作!
※ミステリーチャンネルでの放送情報は、番組公式サイト、または、ミステリーチャンネル カスタマーセンターまでお問い合わせください。
特集「もっと楽しむミステリー!」では、ミステリーファンの皆様にお楽しみいただける読み物コンテンツやプレゼント企画などをお届けしています。次回の記事もお楽しみに!
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ミステリーチャンネルについて
世界各国の上質なドラマをお届けする日本唯一のミステリー専門チャンネル。「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」「シャーロック・ホームズの冒険」「ヴェラ~信念の女警部~」など英国の本格ミステリーをはじめ、「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」などのヨーロッパの話題作や「刑事コロンボ」といった名作、人気小説が原作の日本のミステリーまで、選りすぐりのドラマが集結!ここでしか見られない独占放送の最新作も続々オンエア!
ミステリーチャンネル カスタマーセンター
0570-002-316
(一部IP電話等 03-4334-7627)
受付時間 10:00 - 20:00(年中無休)
カロとペーター 統一ドイツ捜査チーム
東西ドイツ統一後のベルリンを舞台に、当時の社会的混乱や東西の対立を描いたクライムドラマ! 旧東ドイツでの不正行為を捜査する警察組織ZERVで働くことになった西ドイツの警部ペーター・ジモンと東ドイツの警部カロ・シューベルトが、タッグを組んで事件の真相に迫る!
警部ボロウスキの事件現場
ドイツが誇るクライムドラマの金字塔、ドイツ最長の伝説のミステリー「Tatort」シリーズのキール編! 寡黙な一匹狼気質のボロウスキ警部が、若き相棒とともに難事件を解決する!
警部ベリンガー バンベルクの事件簿
絵画のように美しい世界遺産の町バンベルクの秩序を取り戻し、犯罪者を裁くため、のんびりとした外見と穏やかな眼差しとは裏腹にカミソリのように鋭い洞察力を潜ませるベリンガー警部が難事件に挑む、2024~2025年に放送されたドイツミステリー最新作!